July 25, 2008

乃南アサの「いのちの王国」を読んだ。
北海道から沖縄まで18の動物園、水族館が紹介されている。
ガイドブックであるが、そこはさすが直木賞作家、
単なるエッセイに終わらない。
動物たちや飼育係の人たちのエピソードは、
新しい発見がいっぱいで、大変読み応えがあった。
何よりも著者の動物に対する愛情があふれていて、
心を揺さぶられた。
著者の思いは「あとがき」に集約されている。
ここだけでも立ち読みをおすすめする。
今、旭山動物園(旭川市)ばかりが注目されている。
しかし、この本を読むと、
どの動物園・水族館もそれぞれに魅力的。
足を運んで動物たちに会ってみたい、
そんな気にさせる1冊。
カメラマン・荒牧万佐行の写真も迫力満点。
写真集としても十分に楽しめる。
評価:★★★★★
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July 04, 2008

ずいぶん前に読んだ本のレビューを。
あの大橋巨泉が美術鑑賞本を書いたと聞いても、
ピンと来なかった。
昔から彼のことは好きになれない。
あの丸い顔が生理的に受け付けないのだ。
というわけで、読む気はなかったのだが、
図書館の新刊コーナーに並んでいて、
つい手に取ってしまった。
そして2日で一気に読み終えた。
「これはおもしろい!」
読後の正直な感想。
本人が素人と言ってるくらいだから、
まずは説明が分かりやすい。
まったく絵に関心がなかった人でも、
これなら十分に理解できる。
さらに私が苦手としていた、
ルネッサンスやバロックの画家を中心に取り上げている。
後の印象派に比べると鑑賞の機会が少ないと思われる、
この時代の絵の楽しみを教えてくれたのは、一番の収穫。
昨年のロンパリ芸術鑑賞ツアー、
ロンドンのナショナルミュージアムやパリのルーブル美術館で
気になった画家が何人も取り上げられていたため、
とても親近感を持った。
巨泉流の鑑賞方法はとても簡単。
「だまって歩くと絵が呼ぶんです。
呼ばれたら絵の前で2、3分立って、
何も起こらなかったら次の絵へ。
そうしていると、動けなくなっちゃうような作品に出合う。
長いと30分、動かずじっと見る。
どこがすごいんだろうとメモを取る。
わからないことは石坂さんに質問する・・・」
石坂さんとは、俳優の石坂浩二のこと。
芸能界きっての美術通で有名。
巨泉の鑑賞の仕方は、彼の指南によるものだという。
ワタシの場合、絵画鑑賞は
どうしてもガイド本や美術館の音声ガイドに頼ってしまいがちだが、
次回はぜひこの方法を実践してみようと思う。
評価:★★★★★
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June 16, 2008

NHK交響楽団の首席オーボエ奏者で、
希代のエッセイストでもある茂木大輔の新刊「拍手のルール」を読んだ。
基本的にはクラシック初心者向けに書かれているが、
そこそこ聴き込んでいる人にも
十分楽しく、ためになる内容となっている。
地方では拍手のフライングがまだまだ多く見受けられる。
最近の名古屋フィル定期では、
コンサートを聴くための注意事項を書いたチラシが
入り口で配られている。
そのためか随分、客層が良くなってきたなと思っていたところ、
6月の定期初日では、
どの曲でも、指揮者が手を下ろす前のフライング拍手。
これにはがっかり。
しかも、よりによってブルックナー9番で・・・
さてこのエッセイ、拍手だけでなく、
指揮者、曲名、曲調などに関してのさまざまな知識を得ることができる。
結構、専門的な内容も含まれるのに
堅苦しさを感じないのは、
おやじギャグを、飛ばしまくっているから。
半分くらいはすべっているが、まあご愛嬌といったところか。
というわけで、だれにも勧められるクラシックの入門書。
素朴なイラスト入りの装丁も、いい感じ。
評価:★★★★☆
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June 03, 2008

最近の読書スタイルー
ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」ともう1冊小説、
さらには新書、特に最近関心のある教育、の計3冊を
同時に読んでいる。
カラマーゾフは2巻の途中で中断、
というのも文庫本をどこかに置き忘れてしまったから。
現在捜索中。
同じ本をもう1冊買うのはしゃくだけど、
そろそろ続きを読まないとストーリーを忘れてしまいそう。
一両日中に片を付ける予定。
というわけで、東野圭吾の新刊「流星の絆」を読んだ。
前作「夜明けの街で」がいまひとつだっただけに今回は期待した。
主人公は、功一、泰輔、静奈の三人兄弟。
ペルセウス座流星群を見ようと、
夜中にこっそり家を抜け出した。
3人が深夜に帰宅すると、両親が殺害されていた。
事件は未解決のまま14年の月日が流れ、
施設を出た3人は、詐欺をしながら生きながらえていた。
ある日ターゲットにしようとした相手から、
偶然にも両親の殺害に関わる人物が浮かび上がってきた。
時効は間近、警察を動かすべく、3人は大仕掛けをする・・・
細かい点で疑問を抱かなくはないが、
それでもすらすらと読めてしまうのはさすが著者の筆力。
謎解きよりも登場人物の心理描写に重きを置いて読んだので
十分に楽しめた。
登場人物の中では、洋食チェーンの御曹司で
3人に仕掛けられる側の戸神行成が魅力的。
さてラスト、
ミステリーとしては失格なんだろうな、きっと。
でもエンタメとしては、特に女性向けには、
最高の幕切れとなっている。
ドラマ化、間違いなし。
評価:★★★★☆
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May 27, 2008

熊谷達也の「群青に沈め」を読んだ。
第二次世界大戦も末期、
予科練に入隊した主人公の浅沼だったが、
「伏龍(ふくりゅう)」という特殊部隊の隊員として抜擢された。
この作戦は、隊員が潜水服を着て海にもぐり、
敵の船艇が通過する瞬間に棒機雷で突き撃沈させるというもの。
本人も生きて帰ることはない特攻隊だ。
死を覚悟して訓練に明け暮れる毎日だったが、
なかなか出撃する気配はない。
そのうち浅沼たちは、この作戦自体に疑問を抱く・・・
盗作事件で世間をにぎわせた著者だが、
そもそも直木賞作家で、受賞作の「邂逅の森」は
マタギを主人公とした自然讃歌の大傑作だった。
今回は特攻隊を取り上げているのに、
全体に感じる軽さ、今の若者の感覚で書かれているのだろうか、
これには違和感を持った。
「新しい戦争小説」という帯のコピー、
新しいかもしれないけど、
このテーマをこんなに軽くは扱ってほしくなかった。
しかしこの「伏龍」には呆れた。
実話だというが、本気で海軍はこんな作戦を考えたのだろうか。
もし実戦に用いられ、十代の若者の命が奪われていたとしたら、
あまりにも哀しすぎる、犬死にとしか言いようがない。
評価:★★★
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May 07, 2008

道尾秀介の「ラットマン」を読んだ。
主人公の姫川亮は、
高校の同級生で結成したアマチュアバンドでギターを弾いている。
当初からのバンドのドラムは、姫川の恋人小野木ひかり。
ところが2年前からその妹の桂に代わり、
姫川とひかりの関係はギクシャクし始める。
そんなとき、練習中のスタジオ内で殺人事件は起きる。
過去に起きた事件がシンクロするなか、
殺人事件は意外な展開をする・・・
完成度の高いミステリー。
何度も続くどんでん返しに、
心地よい快感が得られる。
よくも悪くも、ミステリーファンのための作品。
タイトルの「ラットマン」は、
精神的、視覚的錯覚をあらわす絵、
心理学では有名らしい。
評価:★★★★
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May 01, 2008

宮部みゆきの「楽園」を読んだ。
主人公はフリーライターの前畑滋子。
9年前、『模倣犯 』の、あの凄惨な事件に深くかかわり、
今もショックが尾を引いている。
そんなとき、12歳の息子を事故で亡くした女性、萩谷敏子から
その子の残した絵についての調査依頼がある。
絵に描かれていたのは、ある犯罪の痕跡。
16年前に殺された少女の遺体が発見される前に、
関係者以外は知るはずもない事実を、少年は描いていた。
少年は超能力者だったのか、
それとも単なる偶然だったのか・・・
『模倣犯 』の続編、あるいは後日談ともいうべき作品だが、
残念ながら完成度は前作に及ばない。
新聞に連載されていたためか、必要以上に長い印象を受けた。
コンパクトにまとめ1冊で完結できなかったか。
それに個人的には、超能力とかオカルトっぽい設定は苦手。
それでも、さすが宮部みゆき、面白い作品に仕上げている。
ミステリーとしてぐいぐい引き込まれ、一気読みさせられたし、
親子や事件に関わる人々の、
情愛、苦悩、葛藤などの心理描写は見事。
そして最後の1ページ、
この人が登場するとは・・・泣いた。
評価:★★★★
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April 27, 2008

黒川博行の「悪果」を読んだ。
堀内は大阪今里署の暴犯担当。
暴力団・淇道会の一斉捜査・逮捕などの日常業務に励むほか、
ごろつき経済新聞の記者・坂辺と共謀して
シノギ、つまり裏商売で小遣い銭かせぎをしている。
その記者がひき逃げで死亡してから話は急展開。
ヤクザに奪われた警察手帳を取り返すため捜査をしていくうちに
専門学校経営者らの闇の部分が明らかになっていく。
勤務中にヤクザと掛け麻雀をしたり、
クラブでタダ酒を飲んだりする悪徳刑事の堀内、
その堀内から、カネやモノを吸い取るホステス・杏子、
マルチ商法まがいに洗脳されている妻、
スキャンダルを元に企業を強請るブラック新聞記者、
土地ころがしでぬれ手で粟の不動産会社経営者、
登場人物は、どいつもこいつも悪いやつらばかりだ。
しかし皆、人間くささがあって、どこか憎めない。
自分がその立場だったら、同じことをしそうな気にさせる、
これは著者の筆力なのであろう。
しかし大阪府警は、こんなにも腐り切っているのだろうか。
フイクションだと分かっていても、
警察組織をここまでリアルに描かれると、
不祥事が続く大阪府警が舞台なだけに、
すべてが作り話だとは思えないのだが・・・
とにかく痛快な1作だ。
評価:★★★★★
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April 11, 2008

梨木香歩の「村田エフェンディ滞土録」を読んだ。
物語は明治32年、
主人公である考古学者の村田は、トルコに国費留学する。
下宿先は英国人のディクソン夫人宅、
ここには他にもドイツ人のオットー、
ギリシア人のディミィトリスが、
そしてトルコ人のムハンマドが料理人として住み込んでいた。
国籍も宗教も考え方も全く違うもの同士が、
寝食を共にすることで、次第に理解を深めてゆく。
時代は第一次世界大戦の直前、
トルコの国内外でも次第に暗さを増しつつあった。
否が応でも時代の波に飲み込まれていく登場人物たち。
淡々と進む物語は最後に急展開をみせる。
胸に迫るラスト。
もし10代のころにこの本を手にしていたら
きっと違う人生を歩んでいたと思う。
図書館で借りた本だが、
ぜひ手元に置いておきたい1冊。
エフェンディとは名前の敬称、土はトルコのことで、
タイトルは「村田先生のトルコ滞在記」というような意味であろう。
評価:★★★★★
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April 07, 2008

久保寺健彦の「みなさん、さようなら」を読んだ。
主人公の悟は、小学生のときに遭遇したある事件をきっかけに、
住んでいる団地から出ることをやめた。
団地内だけで遊び、卒業後の就職も団地1階の洋菓子店、
団地の中だけが彼の生活エリアだった。
しかし小学校の同級生107人は、
月日が経つにつれ、団地から出て行ってしまう・・・
高度成長期に、大都市郊外に建てられた団地は、
過疎化と高齢化で、大きな問題を抱えている。
そこを舞台にしているのは面白いし、
団塊ジュニアの世代は、大いに郷愁を感じるかもしれない。
しかし、団地内だけでの生活を選択した主人公は理解しがたいし、
毎日欠かさないパトロール活動に関しては、
共感できないどころか、薄気味悪ささえ感じる。
評価:★★★
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March 16, 2008

山崎ナオコーラの「カツラ美容室別室」を読んだ。
第138回芥川賞候補作。
27歳の会社員淳之介が主人公で、
淳之介の年上の友人梅田さんと、
梅田さんの行きつけである、カツラ美容室別室の店長カツラさん、
そこに勤務するのエリと桃井の5人が主な登場人物。
みんなで夜桜見学へ行ってから
淳之介はエリのことを意識するようになる。
2人で美術館に行ったり、
居酒屋で急性アルコール中毒で倒れたときに介抱してもらったりするが、
2人の関係はなかなか進展しない。
そのうちにカツラさんが店を去り
後継者に桃井を指名したことからエリは荒れ始め
2人は絶交してしまう。
ところが次の年の花見にはまた揃って出掛けていくという、
つかみどころのない淡々とした物語。
恋愛や友情の描き方がふわっとしていて、
好みの問題なんだろうけど、
ワタシは特に感じるものはなかった。
評価:★★★
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February 19, 2008

万城目学の「ホルモー六景」を読んだ。
「ローマ風の休日」など6作品からなる短編集。
タイトルだけでは内容がまったく分からないが、
「鴨川ホルモー」の続編というか、登場人物の番外編となっている。
前を読んでないと、ちょっと辛いかも。
前作では、京大がメインだったが、
今回は、京都産業大、立命館大、
そしてとうとう同志社大も登場、
著者のバランス感覚が働いたのだろうか。
6編の中では、歴史上の人物が登場する
予想外の展開を見せる「もっちゃん」と、
ついほろりとさせられた「長持の恋」がいい。
歴史上の人物、だれが出て来るのかは
読んでみてのお楽しみ。
前作同様、京都の地名がたくさん出てくる。
次回からはぜひ地図かポンチ絵を掲載してほしい。
評価:★★★
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February 10, 2008

森見登美彦の「有頂天家族」を読んだ。
狸の下鴨矢三郎が主人公。
父の総一郎が人間たちに狸鍋にされたため、
三男ではあるが、残された兄弟や母を守りながら、
敵対する夷川家の嫌がらせに立ち向かう。
狸と人間、そして天狗が共存する京都が舞台。
狸と狸、狸と人間、狸と天狗がそれぞれに対立する奇想天外な物語は、
最初戸惑ったが、頁が進むにつれ、次第に引き込まれていった。
何よりも登場人(?)物のキャラクターが絶品。
それぞれに性格が違う狸の4兄弟、
その宿敵である夷川家の阿呆兄弟狸・金閣と銀閣、
天狗の力を持った美人の弁天、
年老いても弁天に執心の天狗・赤玉先生こと薬師坊・・・
ほかにも、夷川家の一人娘・海星や、
食べることは愛がモットーの淀川教授など、
濃いキャラがぞくぞくと登場。
今も連載されているようだが、
早くも続編が気になる。
2008年本屋大賞ノミネート作、
大賞の有力候補だろう。
評価:★★★★★
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January 30, 2008

井上荒野の「ベーコン」を読んだ。
第138回直木賞の候補作。
この作家の作品は読んだことなかったので
これを機に、手に取ってみた。
妻に子どもが生まれたばかりの不倫相手に対し、
母の得意料理をふるまう「ほうとう」。
飼い猫を探しているうちに、
つい出来心で若い男性と性行為をする「アイリッシュ・シチュー」。
家を出た亡き母が、
一緒に山奥で暮らしていた男の元を何度も訪ねる「ベーコン」。
男女の仲と、それにまつわる食べ物の短編が
9編収められている。
たしかに食べ物の印象、例えば味やニオイ、食感、
あるいは誰と一緒だったとか、その場の雰囲気とかは、
記憶に残っているものだ。
それが異性にかかわるものであれば、なおさらのこと。
どの作品も、食べ物の表現と男女の微妙な心の揺らぎが
生々しく描かれている。
短編はあまり好きではないが、
これは久しぶりに気に入った。
評価:★★★★☆
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January 26, 2008

書店で雑誌を立ち読みしていたら、
紐で縛ってある男性誌を見つけた。
間に挟まっていたのは映画のDVD、
表紙には「特別付録カサブランカDVD」とある。
今月号の特集「青春の映画ベスト100」で1位に輝いたカサブランカの
DVDを付録にしてしまおうという、なかなか大胆な企画。
普段の税込み価格は680円に対し
今月は特別価格で880円、格安だと思う。
で、1冊購入。
40ページにわたるカラーグラビア特集、
「ルーヴル美術館を愉しむ。」も読み応えあり。
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January 24, 2008

馳星周の「約束の地で」を読んだ。
第138回直木賞の候補作。
会社を共同経営していた友人にだまされ、
一文無しになった誠は、
自殺しようと生まれ故郷に戻ってきた。
ところが飲み屋で古い知人から、
一人暮らしの父親に多額の貯金があることを聞き、
その金を当てにしようと考える。
母と妹が事故死してからは、父親と没交渉の状態。
今さら金を無心することができなかったため、
留守を狙って山小屋に足を踏み入れる・・・
(第一話「ちりちりと」)
北海道の寒い時期を舞台にした5つの短編集。
どれも救いようのない男と女の物語で、
幸せなエンディングを迎えることはない。
しかしそれほど不快感が残らないのは、
著者の筆力なのだろうか。
この著者は初めてだったが、
ぜひ他の作品を読んでみたいと思った。
それぞれ独立した物語なのだが、
脇役のひとりが次の作品の主人公として登場し、
最後の作品に最初の主人公が脇役として登場する。
5つの作品が環のようにつながり、
短編集全体で一つの世界を作り上げている。
この構成も気に入った。
評価が4なのは、
第三話「世界の終わり」で、
少年がナイフで警官二人を刺し殺すシーンが
どうしても理解できないから。
殺してなかったら5つ星。
評価:★★★★
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January 22, 2008

青山七恵の「ひとり日和」を読んだ。
第136回芥川賞を受賞した作品。
20歳の知寿はフリーター、
母親が仕事の都合で単身中国へ渡ることになり、
遠縁で71歳の吟子さんの家に転がり込む。
50歳の年齢差がある2人の女性、
その共同生活やそれぞれの恋愛を淡々と描いている。
自立した生活が始まろうとしたとき、
知寿は会社の既婚者の男に誘われ、
心弾ませながらデートに向かう。
行き先は競馬場。
新たな恋は、幸せな結末を迎えるとは到底思えない、
暗示的なラストシーンが不思議な余韻を残す。
評価:★★★★☆
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January 20, 2008

大石英司の「女神のための円舞曲」を読んだ。
身神音々(みかみ・おとね)は、
尾道市の中学校教員で、ブラスバンド部の顧問。
25年前に亡くなった母が死ぬ直前に、
将来コンサートを開催するため
文化ホールを予約していたことを知る。
しかも音々の名義で。
疑問を持ちながらも、
コンサートを実現させるため奔走する・・・
主人公の音々を軸にして、
筋ジストロフィーで闘病生活を送る青年の家族捜しや、
殺人事件の捜査などが複雑に絡む、
ミステリー仕立ての作品となっている。
ラストのコンサートに向け、次第に事情が明らかになるのは、
濃い霧が次第に晴れていくような爽快さがある。
しかしご都合主義の部分も多く、ワタシは楽しめなかった。
2度訪れたことのある、旧瀬戸田町の風景描写の場面では
しばらく感傷に耽ることができたのだけれども・・・
評価:★★
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January 17, 2008

角田光代の「八日目の蝉」を読んだ。
'07年度「中央公論文芸賞」受賞作。
OLの野々宮希和子は、
ある朝、不倫相手の家に忍び込み、
6カ月の赤ちゃんを連れて逃亡する。
友人宅などを渡り歩いた後、
新興宗教まがいの「エンジェルホーム」にたどり着く。
ここで他の女性たちと共同生活を続けたが
マスコミに騒がれ始めると逃げ出し、
瀬戸内の小豆島で新しい生活を始める・・・
1章では、希和子が薫と名付けた赤ちゃんを連れて逃げ、
小豆島で暮らすまでを、希和子の視点で描く。
2章では、その17年後、
大人になった薫(恵理菜)の視点で、
事件の経過を順にたどっていく。
誘拐という許されない罪を犯した希和子なのだが、
薫への無償の愛は何とも切なく、
共感さえも覚えてくる。
しかし2章で、犯罪の詳細が明らかになり、
一番の被害者である恵理菜の苦悩する姿を見るにつけ、
やはり重罪であったことを再認識させられる。
クライマックスは終盤に訪れる。
希和子が港で叫んだ言葉、
「その子は朝ごはんを食べていないの」
このあたりから涙腺がゆるんできて、
鮮やかなラストでは、文字がかすんで見えなくなった。
心を揺さぶられる傑作。
評価:★★★★★
本の評価で5つ星を付けるのは
年に片手程度、つまり5作品と、基準を決めている。
しかし今年に入ってから5つ星が続き、
この作品で4冊目となってしまった。
ちょっと甘いなとは思うけど、
いい本との出会いに感謝しよう。
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January 12, 2008

金城一紀の「映画篇」を読んだ。
「太陽がいっぱい」など5本の映画をテーマに、
友情や愛を描いた短編集。
映画を通じた親友・龍一との友情を描く「太陽がいっぱい」。
連れ合いが自殺し、引きこもってしまった主婦が
レンタルビデオショップの店員の若者から
力を得る「ドラゴン怒りの鉄拳」。
学校生活に飽きた高校生カップルが強盗を企てる
「恋のためらい/フランキーとジョニーもしくはトゥルー・ロマンス」。
両親が離婚協議中の少年が、いじめッ子に囲まれたとき
突如として現れ彼を助けた
謎のおばさんライダーを描く「ペイルライダー」。
夫を亡くしてへこんでいたおばあちゃんを、
元気づけるために映画上映を計画する孫たちを描いた「愛の泉」。
5作品はゆるやかにつながっている。
レンタルビデオ店や、
金持ちの主婦がアラブ人の若者と恋に落ちる謎のフランス映画、
製薬会社の薬害事件、
そして全篇に登場するのが「ローマの休日」上映会。
ここでは、登場人物が一堂に会し、
さながらロバートアルトマン監督の群衆劇といった雰囲気。
映画好きにはたまらない。
本の前扉にある「ローマの休日」の
手作りポスターもイカしてる。
ところで前述した“謎のフランス映画”、
これは実在するんだろうか。
全く見当がつかないだけに気になってしまう。
評価;★★★★★
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January 07, 2008

伊坂幸太郎の「ゴールデンスランバー」を読んだ。
街中に監視システムが設置され、
市民の行動が管理されている近未来の仙台が舞台。
地元出身の金田首相が、パレードの最中に爆殺された。
容疑者としてでっちあげられたのが主人公の青柳雅春。
昔の恋人や友人、あるいは新たに知り合った
一風変わった人たちに助けられながら、
訳も分からないうちに逃亡するのだが・・・
いつものことながら展開がうまい。
第一部、第二部では、マスコミを通した事実が
読者に知らされる。
第三部で「事件から二十年後」が語られ、
第四部からは、青柳雅春と樋口晴子の交互の語りで
物語の真実が次第に明らかになっていく。
数多くの人物が登場して、さながら群像劇、
そんな中でも気に入ったのは青柳雅春のお父さん、
子どもらしくない樋口晴子の長女、七美、
全然怖くない通り魔の三浦、
とぼけた花火屋の轟社長など、
個性豊かな登場人物が散りばめられ、
読者を楽しませてくれる。
ラスト近く、父に届いた手紙「痴漢は死ね」、
参った、本当にうまいなあと思う。
音楽の扱いも巧みな著者、
今回のタイトル「ゴールデンスランバー」はザ・ビートルズの名曲で、
アルバム「アビイロード」B面を飾るメドレーの1曲目。
歌詞が作品のテーマにもなり幾度となく挿入される。
この作品、第138回直木賞の候補は確実だろうと思っていたが、
昨日の発表で、残念ながら選ばれていなかった。
またもや賞に嫌われたらしい。
評価:★★★★★
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January 02, 2008

東野圭吾の最新作「ダイイング・アイ」を読んだ。
後で知ったのだが、10年前に「小説宝石」で連載されていた作品が
やっと書籍化されたものらしい。
何者かに襲われて記憶の一部を失った主人公の雨村慎介は、
過去に自分が車で死亡事故を起こしていたことを知らされる。
その暴漢はすぐに自殺するが、
交通事故で死なせてしまった女性の夫であった。
どうして自分は事故を起こすことになったのか、
腑に落ちない彼は事故のことを調べ始める。
なぜか、その事故に触れたがらない周りの人たち。
そして、彼の前に現れるようになった謎の女、瑠璃子・・・
サイコホラーというか、コラーミステリーというか、
著者には珍しいジャンルの作品。
事故死の生々しい描写にはぞくっと来た。
しかし、テンポの良さはいつもどおり、
トリックもちょっと強引ではあるけれど
謎解きの楽しみを十分に味わえた。
生々しい性描写は
「宝石小説」ならではの読者へのサービスだろうか。
評価:★★★★
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January 01, 2008

あけましておめでとうございます。
今年も拙いブログにおつきあいをよろしくお願いします。
年末に、近藤史恵の「サクリファイス」を読んだ。
「キノベス2007」の第1位、
「このミス」などでも高い評価を得ている。
主人公の白石誓は、自転車ロードレースのプロチームに在籍。
チーム内での役割は、エース石尾豪のアシスト、
自分のためではなくエースを勝たせるために働くことを
要求されるポジションである。
才能はあるが、性格から自分がエースになろうとはせず、
アシストであることに不満を持たずにいる白石。
しかしその走りが次第に認められ、
エース候補にも名前が挙がるようになった。
そして、スペインのプロチームが、
日本人のアシストをスカウトするという話が聞こえてきた。
そんな中、レース中に大事故が発生する・・・
読み始めは青春小説、最近流行のスポーツ物のような印象だが、
事故が起きてからは、がぜんミステリー色が強くなってくる。
二転三転する仕掛けが見事で、
悲惨な事故を扱っているのに、
さわやかな結末となっている。
作品の切れ味はもちろん高い評価が付けられるが、
自転車ロードレースという未知のスポーツに
興味を持たせてくれたことにも感謝したい。
評価:★★★★★
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December 31, 2007

松浦寿輝の「川の光」を読んだ。
川辺の土手に穴を掘って生活するクマネズミ親子の
勇気あふれる物語。
町のなかを貫いて流れる川が暗渠化される工事が始まり、
親子は、上流を目指して移動することになった。
ところが地上ではイタチやネコ、そして大きなドブネズミ、
空からはカラスやノスリなどが親子を狙う。
窮地に立ったときに助けてくれたのは、
ゴールデンリトリバーの心優しい飼犬や古い洋館に老婆と住む猫、
スズメの親子など。
波瀾万丈のうちに物語は進む。
まるで児童書のような内容で最初は戸惑ったが、
次第に物語の中に引き込まれていった。
単なる冒険活劇ではなく、
家族、友情、環境などについて再認識させてくれる。
「別の誰かの命を救うことで、借りを返す。
そうやって貸しと借りが順ぐりに回って、この世は動いてゆく。」
「生きるという事は、たとえば走る事だ。
真夜中だった。
ところどころに、灯る水銀灯に照らされた闇の中を、三匹は走っていた。
走るというのは、ただ脚を動かすというだけのことではない。
体に、顔に、風を浴びることだ。
足の裏で地面を踏みしめ、地面を蹴って、前へ前へと進んでいくことだ。
木のにおい、草のにおいを嗅ぎ、それがどんどん別の匂いに移ろっていくのを
全身で感じとることだ。」
人生訓もうまく取り込まれていて、
いろいろと考えさせられる作品だった。
著者は詩人でありフランス文学者(東大教授)、
さらには「花腐し」で芥川賞受賞という作家の顔も持つ。
今度は児童文学、なんと多芸な人だろう。
評価:★★★★☆
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December 23, 2007

堀江敏幸の「めぐらし屋」を読んだ。
主人公は40歳前後の独身OL蕗子さん。
ある日、離婚していた父が亡くなった。
遺品の大学ノートを広げると、
そこには幼いころの懐かしい絵と、
見慣れない「めぐらし屋」の文字が。
忘れかけていた父の記憶が次第に蘇るとともに
徐々に生前の「めぐらし屋」としての父の姿が
浮かび上がってくる。
ほんわかとした蕗子さんの性格と、淡々とした時間の流れ、
そして、著者のデティールの巧みさにより
読者を「堀江ワールド」に導いてくれる。
物語は何も解決しないうちに終わる。
そう、父は教えてくれた、
〝わからないことは、
わからないままにしていておくのがいちばんいい〟
評価:★★★★☆
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December 20, 2007

東野圭吾の「夜明けの街で」を読んだ。
家族がある渡部だったが、
ふとしたきっかけで派遣社員の仲西秋葉と一線を越えてしまった。
付き合い始めて分かったのは、秋葉が複雑な家庭の事情を抱えていたこと。
15年前に両親は離婚し、母親は自殺、
さらに父親の愛人が自宅で殺害される事件が起きていた。
その現場に倒れていた秋葉は、
真犯人の容疑をかけられていたが、事件は解決しておらず、
まもなく時効を迎えようとしている。
愛する女性がもしかすると犯罪者かもしれない、
渡部の心は揺れ動く・・・
つまらなかった。
ミステリーとしても魅力なし。
不倫恋愛小説としてなら、多少は評価する人がいるかも。
帯の「最高傑作」は笑わせる、
というか東野ファンにしてみれば冒とくに近いな、これ。
評価:★★
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December 13, 2007

森絵都の「永遠の出口」を読んだ。
紀子という女の子の
小学4年生から高校卒業までを綴った連作短編集。
小学生のころの誕生会や給食、
高校に入ってからのアルバイト、恋愛、そして卒業。
第三者からはどれも平凡なエピソードに見えるが、
本人にとっては初体験のことばかり。
いろんな事件に遭遇しながら、
少しずつ成長していく姿が何ともいじらしい。
どの短編も時代を生き生きと描き出しているが
家族4人での旅行を題材にした「時の雨」は特にいい。
評価:★★★★☆
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November 29, 2007

著者の横石さん、某業界では有名な人。
徳島県の山村、上勝町で、
落ちている葉っぱを商品化し、
市場に流通されるマーケットを開拓したのが
農協職員である横石さん。
商品は単なる葉っぱではない。
料理に彩りを添える「つまもの」である。
落ちていると葉っぱだが、
料亭に持ち込まれると1枚数十円の価値を持つようになる。
横石さんが地元のおばあちゃんたちをだましながら、
時には逆に励まされながら続けてきたことが花を咲かせた。
ここに書かれている経験の蓄積やノウハウを読んでいると実に楽しい。
そして他の多くの地域がこれを真似ようとしたが
誰一人として成功しなかった。
それは結局、その地域には横石さんがいなかったからだろう。
評価:★★★★
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November 18, 2007

表紙の楽しいイラストにつられ、
青木淳悟の「いい子は家で」を読んだ。
父、母、兄、弟の四人家族で、
大学生の弟が家族やマイホームについて観察した記録、
という説明でいいのだろうか。
この本、結構評判が高い。
楽しみにしていたのだが、
何ともヘンテコリンな話、まったく理解不能。
ブログはどうしようか迷った。
まあ、記録を残すという意味で書き記しておこう。
評価:★
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November 01, 2007

豊島ミホの「神田川デイズ」を読んだ。
東京の大学、たぶん早稲田を舞台に、
さえない学生たちの青春を綴った短編集。
主人公はそれぞれ違うものの、
登場人物が別のお話に顔を出すなど、
作品全体がゆるやかにつながっている。
学生らしく遊び回っているのではなく、
だからといってガリ勉でもなく、
目標を持たず、どこか冴えない連中ばかり。
思い返すと30年前、ワタシも同じような環境にいたわけだが、
こんなにもクラくなかった(と思ってる)。
結局、全編共感できずに読み終えてしまった。
装丁は抜群にいい。
イラストレーションは太田マリコ、
ブックデザインは鈴木成一デザイン室、
面白いイラストが目を引く。
評価:★★★
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October 27, 2007

島本理生の「あなたの呼吸が止まるまで」を読んだ。
この作家は4冊目となる。
前に読んだ「ナラタージュ」は大絶賛したのだが
さてこの作品は・・・
主人公は12歳の女子中学生、野宮朔。
父親は舞踏家、そのせいで母親は家を出て行ってしまい、
二人でアパート住まいをしている。
怪しげな舞踏の世界を垣間見ることが多く、
親しくしている父の友人も少なくない。
父を撮影している30代のカメラマン、佐倉もそんな一人で、
年の差を感じることなく、好意を抱いていた。
ところが二人の間に、ある事件が起きる。
傷ついた朔、
彼女が佐倉に対してとった行動とは・・・
すっきりしない話だった。
というか、嫌悪感さえ感じる。
中学生と30代男性の恋愛感情は
理解できないわけではないが、
事件があった後の女子中学生の心情って
あんな程度なんだろうか。
同級生の鹿島や田島は、
魅力あるキャラクターだった。
この子たちを登場させて続編ができると面白いと思った。
評価:★★★
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October 25, 2007

高村薫の「照柿」を読んだ。
文庫本化に伴い大幅改稿されている。
主人公の合田雄一郎は刑事、
今はホステス殺しを追っている。
彼の幼馴染みの野田達夫はベアリング生産工場に勤める会社員で、
佐野美保子とは結婚前からの付き合い。
ある日、美保子の夫が駅で愛人ともつれ合い、
愛人は電車事故で死亡する。
その場にいた美保子を雄一郎が見掛けたところから、
達夫を含めた3人がつながる。
雄一郎は刑事でありながら暴力団の賭博に手を染め、
美保子は事件の被疑者でありながら、
夫が取り調べを受けている間も野田と逢い引きを重ねる。
達夫は結婚をし、教師の妻を持ち、男の子もいるという家庭で、
地味ながらも真面目な人生を送っていたはずなのに
次第に歯車が狂っていく。
全編が熱い。
猛暑、ベアリング生産工場の熱処理棟の灼熱、二人の男の熱、
題名の照柿(てりがき)とは、
熟した柿の濃い臙脂色(えんじいろ)のこと。
その色から想像されるとおり、
濃密などろどろとした物語であった。
わけのわからないことが多くて、戸惑っ