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February 18, 2011

ふがいない僕は空を見た/窪美澄

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窪美澄の「ふがいない僕は空を見た」を読んだ。

高校一年生の斎藤卓巳は、
コミケで出会った主婦あんずと関係を続けている。
ある日、好きだった同級生の松永から告白されるのだが、
あんずとの関係をやめられない卓巳。

あんずはというと、特に好きでもない男性と勢いで結婚、
子供が出来ないことを義母から責められ、
強引に不妊治療を受けさせられる。

卓巳に告白をした松永、
夏の間には卓巳とセックスをしているはずだったのに、
うまくいかない。
そして卓巳と人妻の噂を耳にしてしまう。
それでも彼のことは嫌いになれない。

卓巳の友人福田は、貧乏でぎりぎりの生活を送る。
ふとしたことから、バイト先の先輩に勉強を教わることになる。
先輩は超有名大学を卒業しているのに
コンビニでアルバイトをしており、
何故か福田たちに親切にしてくれる・・・

卓也を取り巻く人たちを視点を変えながら描き、
一本の流れを生み出す連作短編集。

卓巳とあんずを描いた第1編「ミクマリ」だけを読んでいたら、
単なるエロ小説で終わってたかもしれない。
あんずが語る2編目から、
卓巳を取り巻く人々の濃厚で生々しい人間関係が
浮かび上がってくる。
あんずの章「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」と
卓巳の母の章「花粉・受粉」が絶品。

すごい、と思える新人に久しぶりに出会えた。
まずは読んでもらいたい。

★★★★★

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February 17, 2011

蛻/犬飼六岐

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犬飼六岐の「蛻(もぬけ)」を読んだ。
第144回直木賞候補作品。

尾張藩の徳川宗春が、
町人の生活の様子を見てみたいというので
屋敷の庭園の中に架空の宿場町「御町屋」をつくらせた。
この町で普通の生活を送るために
集められた70人余りの町人は
皆、一癖二癖あるものばかり。
それでも、商売に精を出す必要はなく、
気楽に毎日を過ごせばそれでよかった。

ところがある日、殺人事件が起きる。
外界とは閉め切られた状態のはずなのにどうやって?
果たしてだれが真犯人なのか、
町人たちの間で、不信感が渦巻く・・・

ミステリータッチの時代小説。
群衆劇とでも言うのか、
登場人物が多かったので、
メモを取りながら読んだ。

いわば町屋のテーマパークで起きた殺人事件。
設定は面白いのだが、謎解きはどうも中途半端。
ラストも今ひとつ盛り上がらずに終わってしまった。

★★★

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February 15, 2011

鉄道員(ピエトロ・ジェルミ監督)

ピエトロ・ジェルミ監督の「鉄道員」を見た。

鉄道機関士のアンドレア(ピエトロ・ジェルミ)は
その厳格で一徹な性格から
長女ジュリア(シルヴァ・コシナ)、
長男マルチェロ(リナート・スペツィアーリ)からは敬遠されていた、
一方、次男のまだ幼いサンドロ(エドアルド・ネボラ)は
酒場まで一緒に行くほどなついていた。

ある日、アンドレアの運転する列車が
投身自殺の若者を轢いてしまった。
それをきっかけに、酒に溺れていき、
ストライキ破りをしたことで友人たちからも孤立する。

さらに、ジュリアの不倫や
マルチェロのギャンブル狂いで、家庭は崩壊状態に。
傷心のアンドレアは、
家にも帰らないようになる・・・

モノクロ映画で、
サンドロ少年の目を通して
家族の出来事がつづられていく。
親子や夫婦の愛、人々の温かい人間愛を描き、
切なくも希望が持てるラスト。
全編に流れる、哀愁のあるテーマ曲も涙を誘う。

ジュリアを演じたシルヴァ・コシナが美しい。
ただ、その後のプロフィールを見ると
作品には恵まれず1994年に亡くなっている。

「午前十時の映画祭」は1950〜70年代の外国映画の傑作を
毎週1本ずつ上映するという企画。
この「鉄道員」が1週目で、
以降「天井桟敷の人々」「クレイマー、クレイマー」と続く。
見応えのある作品ばかりで、できることならすべて見てみたい。
特に見逃せないのは
「フォロー・ミー」「大脱走」「眺めのいい部屋」かな。

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February 13, 2011

ツリーハウス/角田光代

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角田光代の「ツリーハウス」を読んだ。

新宿で中華料理店を営む藤代家の物語。
良嗣が一緒に暮らしているのは、
祖父と祖母、父と母、
そして何もしていない叔父。
さらには姉が妊娠して出戻ってきた。
兄は数年前から旅に出て居場所が分からない。

ある日、祖父が亡くなった。
喪が明けてから良嗣は
「帰りたい」とつぶやいた祖母を連れて、
旧満州を巡ることにした。
ここは祖母と祖父が出会った土地。
藤代家のルーツを探る旅でもあった・・・

現在と、祖父母が出会ったころの過去が交互に描かれ、
読むに従い、家族のことが明らかになってくる。
東京タワーの完成、新幹線の開通、
オリンピックの開催などのエピソードが巧みに盛り込まれ、
歴史を追体験しながら、興味深く読むことができた。

ただ、この家族の逃げてばかりの生き方は、
それ自体が悪いとは思わないけど違和感を覚えた。
わたしとはちょっと違うなと。

★★★★

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February 11, 2011

毎日かあさん(小林聖太郎監督)

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小林聖太郎監督の「毎日かあさん」を見てきた。

仕事に追われる漫画家の西原(小泉今日子)は、
二人の子を育てながらたくましく生きている。
夫である元・戦場カメラマンのカモシダ(永瀬正敏)、
アルコール依存症で酒を断つことができず、
深酒をして暴れて血を吐くという繰り返し。
それでも子どもたちはお父さんのことが大好き。

しかし西原は次第に我慢できなくなり、
離婚することになる。
それでも入退院を繰り返すカモシダを
突き放すことができない西原。
やっと落ち着いたと思ったら
今度はカモシダにガンが見つかった・・・

漫画家・西原理恵子が体験を基にして描いている
マンガの映画化。
小泉今日子と永瀬正敏という元夫婦が
共演するというので話題になった。

全体に喜劇タッチで、
さまざまなエピソードにより構成されているのだが、
どれも中途半端で笑えなかった。
演出に問題があるのか、あるいは脚本なのか。
小泉今日子の演技はうまいが、
西原役としてはちょっと配役ミス。
可愛い過ぎるのである。

まあ、こんなもんかと見終わってエンドロールに。
これが素晴らしかった。
流れる曲は「ケサラ」、
このダミ声は元憂歌団の木村充揮に違いない。

後ろに映し出されるのは、
劇中でカモシダが撮ったモノクロ写真。
鴨志田氏の戦場で撮った写真も混じっていた。
そして最後の1枚は、
本物の西原、鴨志田のツーショット写真。
二人とも実にいい表情だった。

★★★★

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