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September 16, 2010

小さいおうち/中島京子

16329230

中島京子の「小さいおうち」を読んだ。
第143回直木賞受賞作。

昭和初期、山形の尋常小学校を卒業し
東京の平井家へ女中奉公に来たタキ。
赤い屋根の洋館は郊外の高台にあった。
ここで、美しく上品な時子夫人、玩具メーカー重役のご主人、
かわいい恭一坊ちゃんの
身の周りのお手伝いをしながら一緒に暮らすことは
タキの喜びであり、誇りでもあった。

時は昭和10年代、忍び寄る戦争の影、
徐々に平井家の生活も変化していく。
家に出入りする、ご主人の会社の若いデザイナー板倉と
時子夫人とのただならぬ関係は、
板倉の出征で終止符を打った。
しかし、出征を目前に、板倉の元へ向かおうとする夫人に、
タキがとった態度は・・・

戦争が本格化しタキは実家に戻る。
やがて終戦、
時がたち、タキは当時の暮らしをノートに綴るようになる・・・

暗い時代であったにもかかわらず、
銀座での洋食、音楽会、
平井家の年末年始のにぎわいなど
当時の東京でのモダンな生活ぶりが
きめ細やかに描かれて興味深かった。

最終章は現代の話。
ほとんどの登場人物はもういない。
タキの甥、健史が狂言回しのように
過去の謎をひもといていく。
これが予想外の展開。
愛情?、嫉妬?、憎悪? いろいろな想いが交錯する。
そもそもタキの話は本当だったのか・・・
複雑な余韻が残ったところで、表紙を見た。
うーん、何と感慨深い作品だろう。
傑作。

★★★★★

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Comments

ご無沙汰してます。
この本、読み始めましたが(まだ、5分の1程度)
いまいち、興味がわかない。。。というか、
これが直木賞?と、思ってしまった私です。
でも、るうかすさんの感想に、
「傑作」とあるからには、途中で放り出してはいけない!。。。と。
涼しくなってきて過ごしやすい秋の夜長、
楽しみに、続きを読むことにしますね。

Posted by: 百子 | September 26, 2010 12:08 AM

百子さん

どうですか、読まれましたか。
最終章が読み応えあると思うのですが。

もちろん好みは人それぞれですから
おもしろくなかったら、ごめんなさい・・・

Posted by: るうかす | September 28, 2010 08:51 AM

はじめまして~

「小さいおうち」で検索して飛んできました。

私にとっても この本はとても印象に残る作品でした。
戦争を経験していない作者が 丁寧に過去の記録をたどって こんなにリアルにあの時代を描いているのに驚きました。
甥の息子とのやり取りという現代との絡みの部分もあって楽しめました。
感想をチェックしていたら イマイチ?という意見が続いたので え~そうなのかと気になり 同じ様に読み応えあり~という感想を探してました。 よかったです。
私もHPで 良かった~と宣伝してしまったので(笑)

Posted by: non | April 24, 2011 09:53 PM

nonさん
ご訪問ありがとうございます。

「小さいおうち」は、
昨年読んだ42冊のなかで
一番印象に残った作品でした。
でも周りの評判はそれほど良くないんですよね、
どうしてなのか不思議です。

同じ感想を持ったかたからコメントいただき
とてもうれしいです。

Posted by: るうかす | April 24, 2011 11:02 PM

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