天地明察/冲方丁
冲方丁(うぶかた・とう)の「天地明察」を読んだ。
2010年本屋大賞、平成22年吉川英治文学新人賞を受賞。
江戸時代前期に活躍した、
囲碁棋士でかつ算術家、渋川春海(はるみ)の生涯を描いた物語。
春海は碁を指南することで幕府に仕える身であったが、
ある日、老中酒井忠清から天文観測を命じられ、
全国を行脚しながら測量技術を取得する。
長い旅から帰ると、今度は
改暦プロジェクトの中心に抜擢されることとなった。
それまで数百年間使われてきた宣明暦は
日食の日を外すなど、大きな誤差が生じてきていたのだ。
しかしこのときの春海の改暦は失敗に終わる。
失意の中、現れたのが算術家の関孝和。
若かりしころの春海は、碁よりも算術に夢中、
絵馬で問題を出し合う「数学勝負」で
知り合ったのが関であった。
彼の影響と支えにより、
再び改暦に臨むこととなった・・・
こうしてストーリーを追っていくと、
何だか堅苦しくて、読む気が起きてこないが、
実際には知的なエンターテインメントとして
楽しく読むことができた。
主人公の春海のひたむきな言動には
心を動かされる。
さらには「えん」との関係も微笑ましくて、
難しい内容を、全体的に軽いタッチで描き出している。
天才棋士の本因坊道策、黄門様こと水戸光圀、
異端の神道家・山崎闇斎など、
多彩な歴史上の人物が登場する
スケールの大きさも魅力。
★★★★★
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