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July 09, 2010

モンスター/百田尚樹

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百田尚樹の「モンスター」を読んだ。

田舎町で都会的なレストランを経営する
絶世の美女が主人公。
彼女には忘れ難い過去があった。

周囲からバケモノ呼ばわりされていた日々。
思い悩んだ末に起こした事件。
追われるようにして移り住んだ東京。
風俗でためた金で整形手術を繰り返し、
完ぺきな美人へ変身を遂げた。
そしてある決意のもと、
故郷に戻りレストランを始めた・・・

この作家は「永遠の0」「ボックス」と
テーマ設定が毎回ユニークで
外れることがない。
今回はなんと美容整形。
男性にはあまり関心がないというか、
知るすべもない情報がちりばめられていて
大変興味深く読んだ。

しかし後半は、性描写も多く、
やはり男性作家の作品かなと納得。
でもねえ、女性の大事な部分までも整形するとは、
そこまで男性は気にしてないと思うけど。
まあ、男もあそこをうんぬんってあるから、同じことか。
と、ヘンなところで納得。

表紙のイラストも意図的なのだろうけど、
あまりいい趣味とはいえない。

★★★

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July 08, 2010

悦楽王/団鬼六

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団鬼六の「悦楽王」を読んだ。

SM小説の巨匠として脚光を浴びていた団鬼六は、
自らSM雑誌「SMキング」を創刊した。
紆余曲折を経て、3年後に廃刊するまでの出来事を
まとめたものがこの作品。

エピソードはどれも仰天もの、
登場する人物は篠山紀信、渥美清、谷ナオミなど
バラエティにとんでいる。
特殊な趣味に関しても
なかなか勉強させてもらえる。

まずは読んでほしいが、
書店でこの表紙を手に取るのは勇気がいる。
まさか図書館にあるとは思えないし、
読みたい人は連絡ください(笑)

★★★★

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July 01, 2010

天地明察/冲方丁

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冲方丁(うぶかた・とう)の「天地明察」を読んだ。
2010年本屋大賞、平成22年吉川英治文学新人賞を受賞。

江戸時代前期に活躍した、
囲碁棋士でかつ算術家、渋川春海(はるみ)の生涯を描いた物語。
春海は碁を指南することで幕府に仕える身であったが、
ある日、老中酒井忠清から天文観測を命じられ、
全国を行脚しながら測量技術を取得する。

長い旅から帰ると、今度は
改暦プロジェクトの中心に抜擢されることとなった。
それまで数百年間使われてきた宣明暦は
日食の日を外すなど、大きな誤差が生じてきていたのだ。

しかしこのときの春海の改暦は失敗に終わる。
失意の中、現れたのが算術家の関孝和。
若かりしころの春海は、碁よりも算術に夢中、
絵馬で問題を出し合う「数学勝負」で
知り合ったのが関であった。
彼の影響と支えにより、
再び改暦に臨むこととなった・・・

こうしてストーリーを追っていくと、
何だか堅苦しくて、読む気が起きてこないが、
実際には知的なエンターテインメントとして
楽しく読むことができた。

主人公の春海のひたむきな言動には
心を動かされる。
さらには「えん」との関係も微笑ましくて、
難しい内容を、全体的に軽いタッチで描き出している。

天才棋士の本因坊道策、黄門様こと水戸光圀、
異端の神道家・山崎闇斎など、
多彩な歴史上の人物が登場する
スケールの大きさも魅力。

★★★★★

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