ほかならぬ人へ/白石一文
白石一文の「ほかならぬ人へ 」を読んだ。
表題作と「かけがえのない人へ」の中編2作を収録。
第142回直木賞受賞作。
宇津木明生は財閥の家系の三男。
家族や周囲の反対を押し切ってスポーツメーカーに就職し、
キャバクラで知り合った美人のなずなと結婚する。
しかし、なずなは結婚前からずっと好きな人が
忘れられないと言い出す。
明生もさっぱりとした職場の上司、東海倫子に惹かれていく。
(表題作)
著者の文章は端正で、時に刺激的で、
とても読みやすい。
しかし、ありがちな男と女の関係を描いており、
何か物足りなさを感じる。
そんな中、倫子の存在感は別格。
見た目がいくら悪くても、
その行動からは凛とした美しさがうかがえる。
「かけがえのない人へ」はどうなんだろう。
どの登場人物にも感情移入できなく何度も興ざめしたが、
激しい性愛表現にはどきっとした。
この作品で直木賞受賞なのか、うーん、どうなんだろう。
私ならこの作品ではなく、
前作「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け(上下巻)」の圧倒的なパワーに
軍配を上げる。
★★★
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