« March 2010 | Main | May 2010 »

April 29, 2010

骸骨ビルの庭(上・下)/宮本輝

51gppm9skzl_ss400_

宮本輝の「骸骨ビルの庭」(上下巻)を読んだ。

八木沢省三郎は家電メーカーを早 期退職し、
不動産管理会社に再就職する。
大阪の十三に建つ通称「骸骨ビル」から
住民を立ち退かせることが、彼に与えられた職務。

骸骨ビルの住民は戦争孤児たち11人。
ビル所有者の阿部轍正と茂木泰造が親代わりとなり
戦後の混乱期を生き延びてきた。
ところが阿部が、孤児の一人桐田夏美から
子ども時代の性的暴行で訴えられ非業の死を遂げる。
茂木たちは、阿部の名誉が回復すれば
ビルを立ち退くと言うのだが・・・

アパートの住人は、それぞれに個性的だが
どこにでもいそうな普通の人たちばかり。
しかし精緻に描かれた彼らの人生は、
それぞれが1本の短編小説になるくらい魅力的だ。
さらには、ミステリータッチで話が進むこともあって、
上下巻の長編を、長いと感じることはなかった。

中心人物である阿部はすでに死亡しており、
住人の話の中にしか出てこないが、その存在感は絶大。
阿倍の思想や行動から、
人間の強さや弱さ、愛の苦しみや悩み、
生きることの意味などを考えさせてくれる、
ちょっとベタな表現だけど、そんな作品。

ただ一点、ダッチワイフは余分だったと思う。
これは文庫化したときに削除してほしい。

★★★★

| | Comments (0)

April 24, 2010

鉄の骨/池井戸潤

06215832

池井戸潤の「鉄の骨」を読んだ。
第31回吉川英治文学新人賞受賞。
第142回直木賞候補作。

主人公の平太は中堅ゼネコン一松組に入社して3年。
突然、建設現場から業務課へ移動となった。
全く畑違いのこの課は「談合課」とも呼ばれ、
尾形常務が実権を握っていた。

近々行われる都営地下鉄工事の入札、
一松組としては何としてでも落札したい。
平太は課長の兼松、課員の西田らとともに
入札の準備をするとともに談合の調整をする。

入札を仕切るのは大物フィクサーの三橋、
平太は尾形常務を通じて知り合い、
偶然、母親と同郷であったことから、三橋に気に入られる。
以降、一松組の三橋との交渉役は、平太が担当することになる。

入札が近づいても他社との調整がうまくいかない。
各社が焦るなか、道路族の大物国会議員城山を狙い
検察が動き始めた・・・

建設業界の談合を扱った作品。
堅いテーマにもかかわらず、
専門知識がなくても、
まるで「談合読本」のように一気に読めてしまう。
作家の筆力はなかなか大したもの。

談合の話の裏で、
平太と恋人の萌、エリート銀行員園田の
三角関係が描かれている。
じれったいくらいに鈍直な平太、
どっちつかず、優柔不断な萌、
何をやらせても一番、一流というのが鼻につく園田、
行ったり来たりを繰り返す3人の行動に
手に汗握りながらも、
心から平太を応援している自分がいた。

さまざまな顔を持つ、
フィクサー三橋の描きかたもうまい。
人間として非常に魅力的、
もしかしたら主人公は三橋なのかもしれない。

NHKがドラマ化、7月から放送される、
平太役は小池徹平という。
三橋役は明らかにされていないが、
出演者の名簿から想像すると中村敦夫だろうか。

★★★★★

| | Comments (0)

April 23, 2010

第九地区(N・ブロムカンプ監督)

View001

ニール・ブロムカンプ監督の「第九地区」を見てきた。
南アフリカ共和国のヨハネスブルク上空に
突如、巨大な宇宙船が出現。
故障したのだろうか、飛び立てなくなった宇宙船から
異星人が地上に降りてきたため、第九地区に隔離された。
彼らはその風ぼうからエビと呼ばれ
難民として、長く地球人と共存していた。
しかし両者の間で争いが絶えないため、
別の地区への移転計画が持ち上がった。

この計画を遂行する組織MNUのヴィカス(シャルト・コプ リー)は、
責任者として計画を平和的に進めようと、
エビたちから立ち退きの同意を得る努力をする。
しかしその作業の途中で、
彼らが開発した謎の液体を浴びてしまう・・・

異星人が登場する映画は数々あれど、
人類から差別を受けながらも共存するという設定には驚いた。
それでも、違和感を感じなかったのは、
舞台となったヨハネスブルクでの
アパルトヘイトの存在があったから。
異星人を黒人に置き換えれば、
そのまま南アの現実そのものとなる。

しかし、異星人の大好物はキャットフード、のように、
思わず笑ってしまう遊び心あふれた設定や、
人間臭い言動にはつい笑ってしまった。
一方で後半の戦闘の場面。
虫けら同然に人間やエイリアンが殺されていくのは
いかにもグロテスクで、趣味が悪い。
ずっと目をそらし続けた。

全体的にはB級映画でありながらも、
エンターテイメントにこだわった異色作といえる。
ただし私は好きになれなかったが。

★★★★

| | Comments (0)

April 19, 2010

第7節 FC岐阜vs東京ヴェルディ

ひどい試合だったけど、記録として残しておこう。

FC岐阜の第7節、東京ヴェルディ戦を見てきた。
今シーズン初の観戦。

結果は、0—1で負け。
連勝は2でストップした。
このところ調子が良かったはずなのに
今日の試合からはその片鱗が見られない。

中盤を省略し、前線への長いパスが目立った。
シュートは3、4本だったかな。
まったく試合になってなかった。
東京ヴェルディの調子が特別良かったとは思えない。
どうしちゃったの? という疑問だけが残った。

さて、会場となったのは長良川球技メドウ。
収容人員3,600人という球技専用スタジアム。
臨場感は抜群で、選手の声もよく聞こえ
観戦には最高。

ところが芝の状態が悪かった。
パスが通らずロングボールに頼るという悪循環に陥った。
選手にはかわいそうだったが、
これは両チームとも同じ条件だから
負けた言い訳にはならない。

《今シーズンの観戦歴》
● 4月17日 vs東京ヴェルディ 0-1

| | Comments (1)

April 18, 2010

名古屋フィル 第368回定期演奏会

名古屋フィルハーモニー交響楽団の
第368回定期演奏会を聴いてきた。
この日が今シーズンのオープニングとなる。

スメタナの「我が祖国」全曲は、
地方にいると聴く機会に恵まれない。
私も生はこの日が3回目で、
オケは名古屋フィルが2回と日本フィルだが、
指揮は3回とも小林研一郎。
別に選んで聴いているわけではないのだが・・・

さて、この日の演奏。
編成は倍管で、打楽器の音量も大き目、
ケレン味たっぷりで、観客としては十分に楽しめる
演奏だったように思う。
特筆すべきはソロにミスがまったく無かったこと。
特にホルンとクラリネットはお見事というほかない。

マエストロの弁によると、チケットは両日とも完売。
幸先のいい今シーズンの幕開けとなった。
これから名曲シリーズが続く。
今年の名フィルは早めにチケットを買っておかないと、
当日券は無いかもしれない。

ただ、マエストロが言った「名フィル始まって以来の満席」というのは
明らかに間違いだろう。
何と言い間違えたのだろうねえ。

●名古屋フィルハーモニー交響楽団 第368回定期演奏会
 '10.4.16 愛知県芸術劇場コンサートホール 座席:2階L1-30

 指揮:小林研一郎

スメタナ:連作交響詩「わが祖国」
第1曲「ヴィシェフラド」(高い城)
第2曲「ヴルタ ヴァ」(モルダウ)
第3曲「シャールカ」
(休憩)
第4曲「ボヘミアの森と草 原から」
第5曲「ターボル」
第6曲「ブラニーク」

| | Comments (0)

April 17, 2010

のだめカンタービレ 最終楽章 後編(川村泰祐監督)

334577view001

「のだめカンタービレ 最終楽章」の後半を
公開初日に見てきた。

のだめ(上野樹里)と千秋(玉木宏)は
離れて暮らすことになった。
千秋にはルイ(山田優)との共演の話が進む。
曲はよりによって、のだめが千秋との共演を夢見る
ラヴェルのピアノコンチェルト。
そのことを言い出せずにいる千秋だったが、
のだめが知ることとなり、二人の間に亀裂が入りはじめる。

ルイとのコンサートは大成功、
のだめは失意のどん底に。
そんなとき巨匠シュトレーゼマン(竹中直人)から
共演の話を持ち掛けられる。
曲はショパンのピアノコンチェルト1番。
初舞台で観衆を熱狂させたのだめは
一躍、世界から注目を浴びるが・・・

話の展開が早くて、映画としてはどうかなと思うが
クラシックの名曲が次々に登場するので見ていて楽しい。
まあそういう映画だと割り切ればいいのだと思う。

前編で楽しませてもらった、
変態の森のようなはちゃめちゃな場面が
もっと欲しかったな。

前編ではエルガーのエニグマ変奏曲「ニムロッド」が
効果的に使われていたが、
後編では、マスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲が
印象的だった。

★★★☆

| | Comments (47)

April 10, 2010

ビシュコフ指揮N響定期演奏会

これも備忘録として。

NHK交響楽団の名古屋での定期演奏会を聴いてきた。
生のN響は久しぶり。
昨年はキタエンコ指揮、ピアノが上原彩子で
プロコフィエフ3番という垂涎の公演を
長女の受験のために泣く泣く断念。
今年の指揮者ビシュコフは好みではないが、
名古屋で聴く機会の少ないN響なので
発売当日に前売り券を入手した。

ところが直前になって長女が行きたいと言い出した。
私も頭痛がひどかったので譲ったのだが
当日は頭痛も引き、当日券で入場することにした。

しかし、チケット完売で当日券は無し。
「求むチケット 1枚」と朱書きした紙を持って
入り口近くに立っていたら、
開演10分前にS席を譲っていただけた。

さて前半のラフマニノフ。
実はピアノコンチェルト2番は苦手の部類。
3番なら良かったんだけど。
ソリストのヴォロディンは
特別いいとは思わなかった。
優等生の演奏とでも言うのか、
まだ30代前半と若いんだから
はつらつとした演奏が聴きたかったな。
まあ好みの問題か。

後半のチャイコフスキー4番。
そつなくまとめたという感じ。
熱くなるような、後に残るものがなくて
期待外れだった。
演奏会の途中で頭が痛くなってきたので
しっかりとした評価はできないんだけど。

ちなみにトロンボーン吹きの娘は
初めて生で聴いたチャイコフスキー4番に
とても喜んでいた。

●ビシュコフ指揮NHK交響楽団(愛知県芸術劇場シリーズ)
  '10.2.20 愛知県芸術劇場コンサートホール 座席:2階17-4

 指揮:セミョーン・ビシュコフ
 ピアノ:アレクセイ・ヴォロディン

ラフマニノフ /ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18
(アンコール)
ラフマニノフ/幻想的小品集第2曲「前奏曲嬰ハ短調(鐘)」
(休憩)
チャイコフスキー /交響曲 第4番 ヘ短調 作品36

| | Comments (0)

April 09, 2010

岩村力指揮シエナ・ウインド・オーケストラ

Siena


3月の公演だが、備忘録として…

岩村力指揮シエナ・ウインド・オーケストラのコンサートを聴いた。
各務原市民会館でのシエナの公演は3年目。
毎回圧倒的な演奏を聴かせてくれる。

今回も前半で吹奏楽ファン垂涎の名曲を立て続けに4曲。
後半はマエストロ岩村の軽妙なトークに合わせ、
イタリアにかかわる名曲を5曲、
さらにはチャイコフスキーの大序曲「1812年」、
休憩を含めて2時間25分という構成で、
会場を沸かせてくれた。

やはりメインは1812年。
金管群はもとより、クラリネットの熱演が目立った。
曲の後半、市民吹奏楽団の8人がバンダで登場。
これも立派な演奏だった。

シエナの公演は来年も開催されるという。
指揮者は金聖響らしい。

●ブラスの祭典2010 in かかみがはら 
 岩村力指揮シエナ・ウインド・オーケストラ
 ’10.3.6 各務原市民会館

指揮:岩村力
演奏:岩村力指揮シエナ・ウインド・オーケストラ

A.リード/音楽祭のプレリュード
J.ヴァンデルロースト/カンタベリー・コラール
三善晃/吹奏楽のための「深層の祭り」
クロード・T.スミス/フェスティヴァル・ヴァリエーションズ
(休憩)
G.ヴェルディ/歌劇アイーダより「凱旋行進曲」
ロングフィールド/イタリアの休日
E&A.モリコーネ/ニューシネマ・パライダイス
N.ロッソ/夜空のトランペット
G.プッチーニ/誰も寝てはならぬ
チャイコフスキー/大序曲「1812年」
(アンコール)
チャイコフスキー歌劇「雪娘」より「道化師の踊り」
スーザ/星条旗よ永遠なれ

| | Comments (0)

« March 2010 | Main | May 2010 »