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March 28, 2010

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。/辻村深月

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辻村深月の「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」を読んだ。
第142回直木賞候補作。

望月チエミが母親を殺害し姿を消した。
地元の山梨から上京して結婚、
ライターをしているみずえは、
チエミと関わりのあった女友達、恩師などを訪ね
取材を通じて彼女 の行方を追う。

冒頭で殺人事件が起き、犯人が失踪する、
それを追う友人のみずほ、
ミステリータッチで物語は進む。
しかし本質は女性友達同士、あるいは母娘の人間関係。
これは、読み手が男性と女性では
受け取り方が大きく違うだろう。
特に、チエミとみずほ、それぞれの、
両極端と思える母娘関係は
恐ろしくもあり痛々しくもあって、
読むのが辛くなってきた。

それでも最後まで読み切ったのは、構成のうまさ。
巻のほとんどを占める第一章はみずほの視点から、
一方、第二章は、逃亡する側の視点から描かれている。
さまざまな女性のコメントから、
チエミとみずほを取り巻く女性友達との関わり、
二組の母娘の異常なまでの関係を、徐々に浮き彫りにしていく。

謎めいたタイトルも秀逸。

★★★★

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March 24, 2010

八朔の雪/髙田郁

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高田郁の「八朔の雪」を読んだ。

江戸の神田にある蕎麦屋・つる屋で
料理の腕を振るう澪。
もともとは大阪の生まれで、
水害で両親を亡くしたときに
料理屋・天満一兆庵の女将・お芳に拾われた。
天性の味覚の鋭さを見込まれ、
料理の修業をしようとしたが店は火災で焼失してしまう。

次々と不運に見舞われ、お芳と一緒に上京、
小さな蕎麦屋「つる家」で奉公し始める。
お芳や「つる家」の主人・種市、医者の源斉、
謎めいた浪人の小松原などの助けを借りて
料理の腕を上げていく・・・

料理と人情を扱ったユニークな時代小説。
短編が4作品収められており、
それぞれに、鰹田麩、心太、茶碗蒸し、酒粕汁と
料理が登場する。
これがまたおいしそうに表現されるんだよなぁ。
この作家、人物の描写が分かりやすい。
ストーリーも王道を行くもので、
泣いたり笑ったりと、だれでも楽しめる。

若旦那の行方や天満一兆庵の再興など
明らかにされていない点も多く、興味は尽きない。
続編「花散らしの雨」も購入済み。

★★★★★

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March 21, 2010

一箱古本市 in 円頓寺商店街

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連休の初日(20日)に
円頓寺商店街の「一箱古本市」へ行ってきた。

午前中に行こうと思っていたが、
葬儀に参列することになり、
会場着は2時過ぎ。

ちなみに亡くなったのは、
母方の祖父の妹に当たる人で103歳。
祖父も3年前に105歳で天寿をまっとう、
祖父は5人兄弟で100歳を超えたのは3人、
長寿の家系とはいえ、すごくない?

と、これは余談。

円頓寺の「一箱古本市」は昨年に続いて2回目。
小規模ながらも個性的な出店が多い。
収穫は文庫本、単行本、雑誌など5冊と
手作りのブックカバー。
合わせても700円弱で、
2時間余り、買い物だけでなく
店主との会話も楽しませてもらった。

古本市では屋号も趣向が凝らされ
ユニークなものが少なくない。

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さて、円頓寺商店街はひなびたアーケードで
お店をじっくり見ていくのも興味深い。
ということで写真で紹介。

何だろう、アーケードの上にあったハリボテ
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老舗の喫茶店
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珍しくおしゃれな洋雑誌の販売店
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カラフルな寿司屋
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March 19, 2010

インビクタス/負けざる者たち(C・イーストウッド監督)

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C・イーストウッド監督の
「インビクタス/負けざる者たち」を見てきた。

南アフリカ共和国での実話。
1994年、政治犯として投獄されていたネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)が、
27年ぶりに解放される。
そして全人種参加の総選挙により、初の黒人大統領に選ばれる。
マンデラは黒人と白人との融和を一番に掲げ
報復的な人事は行わず、
例えば、ボディーガードも白人、黒人の混成で組織した。

アパルトヘイトが撤廃されたとはいっても、
まだまだ人種差別が根強く残る南ア。
ラグビーの代表チーム「スプリングボグス」はほとんどが白人で、
白人優位主義の象徴であった。
よって白人からは支持を得ていたが、
多くの黒人は目の敵にしていた。
しかしマンデラはこのチームを強く支持、
まずは、主将のフランソワ・ピナール(マット・デイモン)を官邸に招き、
その思いを伝えた。

1995年、南アで開催されたラグビー・ワールドカップ、
フランソワ・ピナール率いる南アチームは
前評判とは裏腹に快進撃を続け、決勝戦まで進出した。
相手は、強豪ニュージーランド代表オールブラックス・・・

まずは主役のモーガン・フリーマンとマット・デイモンにブラボー。
ドラマチックなストーリーの中で淡々と演技する二人は、
監督の意図したとおりなのだろう。

ラスト30分、W杯での試合の場面、
激しいプレイとスタジアムを埋める大観衆の興奮、
さらには音楽が一体となった高揚感は素晴らしい。

映画のタイトル「インビクタス」は、
獄中のマンデラが心の支えとした
ウィリアム・アーネスト・ヘンリーの詩から取ったもの、
映画の途中で引用される。

私は あらゆる神に感謝する
我が魂が征服されぬことを

私が我が運命の支配者
私が我が魂の指揮官

征服されない魂を持ったマンデラの、
27年間にも及ぶ獄中生活に思いを馳せ
胸が熱くなった。

★★★★★

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March 18, 2010

阿修羅/玄侑宗久

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玄侑宗久の「阿修羅」を読んだ。

実佐子は結婚して3年、
流産をきっかけに体調を崩し、
解離性健忘症の症状が顕著に現れるようになった。
そんな中、夫の知彦を誘い海外旅行に出掛けた。

旅先で「友美」と名乗る人格が頻繁に現れる。
知彦は恐怖を感じ、主治医の杉本に連絡すると、
気になることがあると言って現地に駆けつけてくれた。

帰国後、実佐子は入院して治療を受ける。
ところが、さらにもう一人「絵里」という人格を持ち、
知彦が恋していたのは、
この「絵里」であったことが分かってくる・・・

解離性同一性障害、すなわち多重人格を扱った作品。
オカルトミステリーとでも言うべき内容で、
本にしろ映画にしろ、私の一番苦手なジャンル。
それでも、恐る恐る読み始めた。

知らない世界を垣間見る好奇心と、
本当にこんなことってあるんだろうか、という猜疑心で
一気に読み終えた。

驚くべきラスト。

うーん、最後まで疑問だらけ。
しかし、この作品、小説の域を超えてる、
そう感じた。

★★★★

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March 17, 2010

びわ湖ホール 歌劇「ラ・ボエーム」

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びわ湖ホールで
歌劇「ラ・ボエーム」を見てきた。

まずはホモキの演出から。
今までに見た彼の演出、
新国立劇場での「フィガロの結婚」、
シンプルでモノクロームな舞台装置と衣装が印象的だった。
古くは、ハンブルク州立歌劇場の来日公演で
大野和士が指揮した「リゴレット」、
これは3原色を強調した鮮やかなステージだった。

今回、やはり舞台はシンプル、
というか、大きなクリスマスツリーと机、イス類のみという、
いわば、カネの掛かってない舞台装置。

演出では原作から読み替えられていた部分があった。
ボヘミアンの芸術家たちは、貧困から屋根裏部屋にも住めず、
路上生活をしていたが、
最後にはブルジョアに成り上がる。
一方、女性たちは社会からも男たちからも見捨てられ、
最後は雪が降る中、ミミの亡き骸とムゼッタだけが
取り残されるという絶望的なラスト。

明確で分かりやすいのだけれど、
1幕、4幕で屋根裏部屋が登場しなかったのは
少々違和感があった。
しかも群集が周りを取り囲んでいたのも目障りで、
4幕はともかく、1幕では効果があったとは思えない。

ではホモキ演出は嫌いかと問われると、そうでもなく、
時にはこういう刺激的な演出もあっていいんじゃないの、と思う。
特に2幕ラストのストップモーション、
そのまま3幕に続く演出は見事だった。

ちなみに今まで見たボエームで、一番のお気に入りは、
小澤のロバート・カーセン演出のプロダクション。

さて、歌手陣。
ムゼッタの中嶋彰子は貫禄があり歌、演技とも満点。
ミミの浜田理恵もそつなくこなしていた。
マルチェッロの迎肇聡は、
堀内康雄が怪我で急きょ舞台に立ったカバーキャスト。
予想以上に出来は良かった。

問題はロドルフォの志田雄啓、
1幕の「冷たい手を~私の名はミミ~二重唱」は散々な出来。
私の席は1階の正面だったが、全く聴こえない。
3幕からだんだん声量も出てきたが
とても及第点とは言えない。
よほど体調が悪かったのだろうか。

京都市交響楽団は予想をはるかに超えた熱演。
こんなにうまかったっけ、というのが本音。

なお、オペラ公演に先立って開催されたワークショップ、
ホモキと評論家が約1時間15分、
演出プランについて語るというものだったが、
ちょっとネタばれが多すぎたような・・・
まだ見ていない観客にも配慮が必要ではないか。
ネタばれが嫌なら来なくていい、と言われればそれまでだが。

●びわ湖ホールプロデュースオペラ 歌劇「ラ・ボエーム」
 ’10.3.15 びわ湖ホール 座席:1階S27

芸術監督・指揮 :沼尻竜典
演出:アンドレアス・ホモキ  
出演:
ミミ/浜田理恵
ロドルフォ/志田雄啓
ムゼッタ/中嶋彰子
マルチェッロ/迎 肇聡
ショナール/井原秀人  
コッリーネ/片桐直樹
アルチンドロ/晴 雅彦
パルピニョール/大野光彦
ブノア /鹿野由之
合唱/びわ湖ホール声楽アンサンブル、二期会合唱団
児童合唱/大津児童合唱団
管弦楽/京都市交響楽団

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March 14, 2010

一箱古本市 in 武家屋敷

愛知県犬山市で開催されている
「一箱古本市 in 武家屋敷」を見てきた。

一箱古本市とは、フリマ風の古本市。
みかん箱1箱(今回は3箱)の書籍を
売ることができる。
少ない書籍のなかでどれだけ個性を発揮するかがポイント。

会場は、堀部邸という古民家。
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狭くて見づらかったのが第一印象。
それと出品者が30人って聞いてたけど、もっと少なかったような。
やはり100人くらいいないと
これは、という出品者に出会えない。
この古本市が楽しいのは、出品者と語り合うことだから。

少々失望したので古本市の写真は撮らずじまいだった。

帰る途中、ヘンな看板を見つけた。
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「ダゴバギャラリー キワマリソウ」
看板につられて足を向けると、さらに看板。
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やっと到着したらしい、標柱を発見。
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古い住宅に入ってみると「五っ葉文庫」という古本屋が。
これってたしか、今回の一箱古本市を企画した古本店?
並んでいる書籍を見ると、怪しげなものが多く
楽しませてもらった。
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さて併設のギャラリ−、
若手作家が、部屋ごとに展示していたが、
クオリティが低くて評価するまでもない。
特に、お札を使った作品、
だめだよ、お札をあんなふうに扱っちゃ。

キワマリ荘の外観、これは味がある。
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March 13, 2010

星守る犬/村上たかし

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村上たかしの「星守る犬」を読んだ。
まずは誤解のないように、
この本はマンガ。

一人の男性と、彼が飼っている一匹の犬の物語。
女の子に拾われてきた犬は、
ハッピーと名付けられ、一家で飼われることになった。
お父さん、お母さん、女の子、そしてハッピー、
とても仲の良い家族だったが、
時がたつにつれ変化が起きてきた。

お父さんは職を失い、病にも悩まされる中、
お母さんから離婚を切り出される。
家族と家を同時に失ったお父さんは
ハッピーを連れて車で旅に出た・・・

お父さんとハッピーの物語、
その悲惨な結末は、冒頭に描かれており、
読者は読みながらその経緯を知らされていく。
ネコか、イヌかと問われるとイヌと答える私でも
泣けるとまではいかなかった、
切ない話ではあるけれど。
しかし、後日談ともいうべき「日輪草」も収められ、
これにより救われたかなあと。

★★★

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March 12, 2010

復帰

超多忙と体調不良で、ずっと手つかずだったけど、
今日から復帰します。

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