
びわ湖ホールで
歌劇「ラ・ボエーム」を見てきた。
まずはホモキの演出から。
今までに見た彼の演出、
新国立劇場での「フィガロの結婚」、
シンプルでモノクロームな舞台装置と衣装が印象的だった。
古くは、ハンブルク州立歌劇場の来日公演で
大野和士が指揮した「リゴレット」、
これは3原色を強調した鮮やかなステージだった。
今回、やはり舞台はシンプル、
というか、大きなクリスマスツリーと机、イス類のみという、
いわば、カネの掛かってない舞台装置。
演出では原作から読み替えられていた部分があった。
ボヘミアンの芸術家たちは、貧困から屋根裏部屋にも住めず、
路上生活をしていたが、
最後にはブルジョアに成り上がる。
一方、女性たちは社会からも男たちからも見捨てられ、
最後は雪が降る中、ミミの亡き骸とムゼッタだけが
取り残されるという絶望的なラスト。
明確で分かりやすいのだけれど、
1幕、4幕で屋根裏部屋が登場しなかったのは
少々違和感があった。
しかも群集が周りを取り囲んでいたのも目障りで、
4幕はともかく、1幕では効果があったとは思えない。
ではホモキ演出は嫌いかと問われると、そうでもなく、
時にはこういう刺激的な演出もあっていいんじゃないの、と思う。
特に2幕ラストのストップモーション、
そのまま3幕に続く演出は見事だった。
ちなみに今まで見たボエームで、一番のお気に入りは、
小澤のロバート・カーセン演出のプロダクション。
さて、歌手陣。
ムゼッタの中嶋彰子は貫禄があり歌、演技とも満点。
ミミの浜田理恵もそつなくこなしていた。
マルチェッロの迎肇聡は、
堀内康雄が怪我で急きょ舞台に立ったカバーキャスト。
予想以上に出来は良かった。
問題はロドルフォの志田雄啓、
1幕の「冷たい手を~私の名はミミ~二重唱」は散々な出来。
私の席は1階の正面だったが、全く聴こえない。
3幕からだんだん声量も出てきたが
とても及第点とは言えない。
よほど体調が悪かったのだろうか。
京都市交響楽団は予想をはるかに超えた熱演。
こんなにうまかったっけ、というのが本音。
なお、オペラ公演に先立って開催されたワークショップ、
ホモキと評論家が約1時間15分、
演出プランについて語るというものだったが、
ちょっとネタばれが多すぎたような・・・
まだ見ていない観客にも配慮が必要ではないか。
ネタばれが嫌なら来なくていい、と言われればそれまでだが。
●びわ湖ホールプロデュースオペラ 歌劇「ラ・ボエーム」
’10.3.15 びわ湖ホール 座席:1階S27
芸術監督・指揮 :沼尻竜典
演出:アンドレアス・ホモキ
出演:
ミミ/浜田理恵
ロドルフォ/志田雄啓
ムゼッタ/中嶋彰子
マルチェッロ/迎 肇聡
ショナール/井原秀人
コッリーネ/片桐直樹
アルチンドロ/晴 雅彦
パルピニョール/大野光彦
ブノア /鹿野由之
合唱/びわ湖ホール声楽アンサンブル、二期会合唱団
児童合唱/大津児童合唱団
管弦楽/京都市交響楽団
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