閉鎖病棟/帚木蓬生
帚木蓬生の「閉鎖病棟」を読んだ。
95年の山本周五郎賞受賞作品。
舞台は精神科の病棟。
重い過去を引きずっていたり、
世間や家族からも遠ざけられていたり、
それでも、一日一日を明るく生きようと
努力している患者たち。
秀丸さんは、かっとなって4人の家族を殺害、
死刑判決を受け、刑が執行されたが生き返った。
チュウさんは精神分裂症で、
危うく父親の首を絞めて殺しそうになった。
カメラ好きの昭八さんは、精神薄弱で言葉がしゃべれない。
島崎さんは女子中学生でみんなのマドンナ的存在。
登校拒否でカウンセリングのため通院している。
そんな病院である日、殺人事件が起こる・・・
中学生の中絶から話が始まり、
舞台は精神病棟に移る。
何という暗い話なんだろうと先行き不安になった。
ところが病棟での患者たちの暮らしぶりは
笑いあり、涙あり、怒りありと、
私たちの生活と何ら変わることはない。
その心の純粋さや誠実さは
われわれ以上ではないかと思う。
著者、ちなみに「ははきぎほうせい」と読む、は精神科医、
そのため表現にはリアリティがある。
しかし死や殺人があまりに軽く扱われている点については、
非常に不満を持った。
★★★★
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