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January 28, 2010

神様のカルテ/夏川草介

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夏川草介の「神様のカルテ」を読んだ。
第10回小学館文庫小説賞受賞。

栗原一止は松本市の民間総合病院に勤務する青年医師。
愛読書は夏目漱石の「草枕」、
そのためか話し方が古風で、
人からは変わり者扱いされている。

彼の周辺には個性的な人物が揃っている。
職場では、古狐、大狸と呼ばれている先輩医師や、
美人で手厳しい看護師ら。
プライベートでは山岳写真家の細君ハルや、
大学院生の学士殿、絵描きの男爵など、
二人が新婚生活を送る古びたアパート「御嶽荘」の住人たち。

栗原は安曇さんという患者を担当することになる。
ていねいな物腰とやさしい性格で、
医師や看護師から愛されているこのおばあちゃん、
実はガンで、余命幾ばくもない。
栗原は安曇さんのために医師としてなにが出来るのかと考える・・・

心の琴線に触れるエピソードがいくつも登場して、
そのたびに涙腺がゆるみっぱなし。
処女作ということで、プロットや人物描写に甘い点は多々ある。
しかし、コメディタッチで、
時にベタなお涙頂戴のエピソードを挿入しながら、
地域医療、延命医療などの問題を
きちんと分かりやすく盛り込んでいる点は、
とても共感した。

装丁のイラストといい、
若い世代に向けて書かれたものだとは思うが
どの世代にもすすめられる1冊。

★★★★★

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January 24, 2010

宮島〜ひろしま駅伝 「がんばれ!岐阜」

1月22、23日の両日、
広島県へ観光に行ってきた。

今回は車での移動。
初日、朝6時30分に出て目的地、宮島に着いたのは14時。
休憩しながらとはいえ、片道7時間30分。
少々きつかった。

まずは遊覧船で海側から大鳥居を見た。
間近で見ると大迫力。
宿で宴会のあと、
大鳥居がライトアップされているというので
もう一度見に行った。
ちょうど干潮で、近くまで歩いて行くことができた。

2日目は午前中、厳島神社など島内の観光。
午後からは全国都道府県対抗男子駅伝競走大会、
通称「ひろしま男子駅伝」。

地元岐阜県を応援するため
廿日市市役所北の国道2号沿いに陣取った。
ここは3区で、岐阜県は大西智也(旭化成)選手。
昨年、東洋大で箱根駅伝優勝に貢献したトップランナーだ。
ポスターに「がんばれ 岐阜」と書き、
沿道に立って頭上に掲げながら声援を送った。
私たちの応援が功を奏してか、大西選手は堂々区間1位に。
応援した甲斐があったというものだ。

3区では、箱根駅伝を賑わせた、
東洋大の柏原竜二くん(福島県)、
将来必ずや大成するであろう東海大の村澤明伸くん(長野県)らも
快走を見せてくれた。

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この遊覧船で会場から見学

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遊覧船から見た大鳥居


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干潮時にライトアップされた大鳥居

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手作りの応援道具

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3区を激走する選手たち


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January 21, 2010

METライブビューイング「トゥーランドット」

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METライブ・ビューイングの「トゥーランドット」を見てきた。
今シーズン1本目。

平日というのに入場券は完売だった。
ライブ・ビューイングの認知度が高まっているのか、
「誰も寝てはならぬ」人気がまだまだ続いているのか。

タイトルロールのグレギーナが絶好調で
ほれぼれするような声を披露した。
憎ったらしい演技も圧巻。
対するカラフ役のジョルダーニも負けず劣らずの美声。
この声は好きだなあ。
ティムール役のサミュエル・レイミーは
老人役だったためか抑え気味。
少々不満が残った。

演出はゼフィレッリ 。
豪華絢爛の舞台には圧倒されるばかり。
衣裳や小物にも手抜きはまったくなし。
これぞMET。

ただ今回の上映の難点は音響のひどさ。
声が大きすぎて不自然。
オペラファンなら誰でも違和感を感じるだろう。
もっとオケとのバランスを考えてミキシングしてほしい。

次々回はいよいよ「ばらの騎士」、
こんなデリカシーのない音響では興ざめだ。

●METライブ・ビューイング 「トゥーランドット」

 指揮:アンドリス・ネルソンス
 演出:フランコ・ゼフィレッリ

 トゥーランドット:マリア・グレギーナ
 カラフ:マルチェッロ・ジョルダーニ
 ティムール:サミュエル・レイミー
 リュー:マリーナ・ポプラフスカヤ

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January 18, 2010

キネ旬ベスト10

第83回キネマ旬報ベスト・テンが発表された。
日本映画の1位は「ディア・ドクター」(西川美和監督)で、
外国映画の1位は「グラン・トリノ」(クリント・イーストウッド監督)。
私のベストとまったく同じ。
こんなふうに合致するのは珍しい。

ただし2位以下は評価が分かれた。
日本映画2位「ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ」、
3位「劔岳 点の記」、8位「サマーウォーズ」の3本について、
私は全く評価していない。

では私のベスト3、
外国映画は圧倒的に「グラン・トリノ」、2位は「レスラー」、
3位はチェ・ゲバラを描いた「28歳の革命」「39歳別れの手紙」の2本。

日本映画は「ディア・ドクター」、
「風が強く吹いている」、「南極料理人」がベスト3。

ベストに入れたい「THIS IS IT」は
映画とは言えないのでランク外。

一方、ワーストは「がまの油」

●第83回キネマ旬報ベスト・テン
<日本映画>(1)ディア・ドクター(2)ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ
(3)劔岳(つるぎだけ) 点の記(4)愛のむきだし(5)沈まぬ太陽
(6)空気人形(7)ウルトラミラクルラブストーリー(8)サマーウォーズ
(9)誰も守ってくれない(10)風が強く吹いている
<外国映画>(1)グラン・トリノ(2)母なる証明(3)チェンジリング
(4)チェイサー(5)レスラー(6)愛を読むひと(7)アンナと過ごした4日間
(8)戦場でワルツを(8)スラムドッグ$ミリオネア
(10)イングロリアス・バスターズ

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January 16, 2010

W/F ダブルファンタジー/村山由佳

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村山由佳の「W/F ダブル・ファンタジー」を読んだ。

主人公は脚本家の奈津。
長年の仕事のパートナーであり、夫でもある省吾と田舎で暮らしている。
夫の支配的な態度に萎縮していた奈津は、
敬愛する演出家とのメールのやり取りとその後の情事を機に、
夫から離れ東京で独り暮らしを始める。

彼女を通過していく男たち。
我慢できずに呼んでしまった出張ホスト、
学生時代のサークルの先輩で雑誌の編集者岩井、
岩井から急かされて一夜を共にした精神科医の僧侶、
将来は脚本家を目指す若い役者。
彼らとの付き合いを通して
奈津は次第に自らの女としての人生に目覚めていく・・・

性描写が生々しい。
一歩間違えば安っぽい官能小説になりかねないテーマだが、
男女の微妙な心理描写は、
はらはらしながらも共感を覚える場面が少なくなかった。
そしてラストの何とも言えない寂りょう感、孤独感、
胸に迫るものがあった。

不思議なタイトルの意味は、
最後まで分からなかった。
その後ネットで読んだ文芸評論家、池上冬樹との対談で
著者が種明かしをしている。
引用すると・・・

『ダブル・ファンタジー』だけだとファンタジー小説みたいな
感じになるなと思ったのです。なにか印象的な、ひと目で頭に
パンと入るような感じがほしいな、と思って考えつきました。
「W」をウーマン(WOMAN)、「F」をフィーメール
(FEMALE)という、ダブルミーニングに見る人もいるかもし
れないし、あるいは単に記号に見る人もいるかもしれない、と
いうこともありました。

さらには、ジョン・レノンとオノ・ヨーコの同名のアルバムからも
インスパイアされたと書いている。
アルバムを聴いて、男と女は愛し合いながらも、
見ているところが全然違うものなのだと、著者は考えたという。

アルバム「ダブル・ファンタジー」は
ジョンが射殺される直前、私が大学4年のときに発売された。
“Starting Over”などジョンの傑作と
ヨーコの怪しげな「あ~ん」という声ばかりが聴こえる曲が交互に入っていて、
当時はヨーコの曲を除いてカセットテープにダビングした、
そんな思い出がある。

さて、この本を読み終えて感じたのは、
男性なら登場人物の誰かに
自分を映すだろうなということ。
私は間違いなく、キリンと言われた岩井。

★★★★★

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January 14, 2010

第142回直木賞は佐々木譲、白石一文

第142回直木賞が発表された。
決選投票で同点であった佐々木譲、白石一文の二人が
同時受賞となった。

個人的には、岐阜県八百津町出身の池井戸潤か、
読んだ本に外れのない葉室麟に期待した。
しかし受賞の二人も期待を裏切らない作家。
受賞作品はまだ読んでないので、
早速買ってくることにしよう。

候補作は以下のとおり。

佐々木譲 「廃墟に乞う」〈受賞〉
白石一文「ほかならぬ人へ」〈受賞〉
池井戸潤 「鉄の骨」
辻村深月「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」
葉室 麟「花や散るらん」
道尾秀介「球体の蛇」

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January 11, 2010

書き初め

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1月11日だというのに
まだ書き初めをしていなかった。
ということで、今年初めて筆を持った。

実は昨年10月から書の教室に通っている。
とはいえ仕事や家族のお迎えなどの都合で
月2、3回程度しか行けない。
教室は週3回で何回行っても月謝は同じ。
今年は週1回通うと目標設定した。

何かにチャレンジするとき
私は形から入るタイプ。
ゴルフではウッドやアイアン、バッグ、
さらには服装にもこだわった。
テニスでも同様。
というわけで、書でもまずはカバン。
書道セットについているようなのは論外。
何かいいものないかと探して見つけ吉田カバン。
ちょうど半紙が入る大きさで、
マチもほとんどない薄型。
クールな感じで一目惚れした。
筆や硯などは一式、父のものをそのまま使っている。
あとは小さめの携帯用硯箱が欲しい。

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January 10, 2010

スワンソング/大崎善生

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大崎善生の「スワンソング」を読んだ。

時は1980年代、携帯もメールもなかった時代。
出版社で雑誌の編集をする篠原良。
社内恋愛の由香とは3年付き合っていたが、
アルバイトの由布子を好きになり交際を始める。
別れを受け入れられな由香は自暴自虐となる。
一方、由布子も真面目で潔癖な性格が災いしてか
鬱状態で良の支えがないと生活できない・・・

前半の展開は救いようもなく
読むのをやめようと思った。
良がフランクフルトに異動してからは
次第に光が射してくる。
著者の透明感のある表現は、
上質の恋愛映画を見ているようだ。

ところが、ラストの子どもにつけた名前のエピソードが
余韻をぶち壊した。
どうしてこんな陳腐なエピソードをラストに持って来るのか・・・
理解できない。

クラプトンの“Tears in Heaven”や
ギルバート・オサリバンの“Alone Again”が効果的に登場する。
このあたりのうまさには脱帽。
評価もつい甘くなってしまう。

★★★☆

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January 09, 2010

カールじいさんの空飛ぶ家(ピート・ドクター監督)

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「カールじいさんの空飛ぶ家」を見てきた。

主人公は78歳のカールじいさん。
最愛の妻エリーを亡くし、
思い出が詰まった家に一人で暮らしている。

自宅の周りで進む都市開発により
カールじいさんにも、愛着のある自宅を手放せと
毎日のように嫌がらせのような交渉が繰り返される。
疲れ果てたカールじいさんは決心をする。
無数の風船を付けた家ごと空中に浮かび、
エリーといつか行こうと約束した
”伝説の滝”パラダイス・フォールに向けて
冒険の旅に出掛けようと・・・

冒頭にカールじいさんの追憶のシーンがある。
子どものときにエリーと出会い、恋をして結婚、
子どもは授からなかったものの、幸せに暮らし、
やがてエリーが病に倒れ先立つ。
そんな生涯がセリフなしで淡々とつづられていく。
このシーンがすばらしい。

カールじいさんの旅が始まると、
爽快な冒険大活劇へと転換する。
ここからが本編だ。

そんな馬鹿なと、つっこみたい場面は多々ある。
そもそも風船をいくら取り付けても
家が飛ぶとは思えないし、操縦できるわけがない。
しかし少年のころに思い描いた夢をかなえる映画なのだと割り切ってしまえば、
大人でも十分に、いや大人だからこそ楽しめるアニメなのではないか。

今回は上映時間の都合で日本語吹き替え版だった。
ぜひ、字幕の3Dデジタル版も見てみたい。

ちなみにこの邦題は何とかならかったのか。
何も考えてないのでは?
原題は“Up”。
落ち込んでいるときに見ると、きっと元気になれる映画。

★★★★★

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January 05, 2010

龍神の雨/道尾秀介

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道尾秀介の龍神の雨を読んだ。

2組の兄弟が主人公。
十九歳の蓮と中学生の楓は、
継父の睦夫との3人暮らし。
実の父親とは離別し、実の母親は事故で亡くなっている。
蓮は楓の様子がおかしいことに気づき
睦夫が関わっていることを知り、
次第に殺意が芽生える。

そして、中学生の辰也と小学生の圭介は、
継母の里江との3人暮らし。
実母は海の事故で亡くなり、その後、実父親は病死。
辰也は、母親が里江に殺されたと信じ、
圭介は内心、自分が母親を殺したと思っている。

ある日、蓮が勤める酒屋で、
辰也と圭介の兄弟が万引きするところから
2組の兄弟がかかわりを持ってくる・・・

冒頭からラストまで緊張感が切れることがない。
息苦しくなるが読み出したら止まらない。
著者が得意のミスリードも見事で、
読者はラストで見事に足元をすくわれることになる。

トリックはもちろん、物語としてもよく出来た1冊。
星半分マイナスなのは
私がミステリーを苦手としているという一方的な理由。

★★★★☆

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January 03, 2010

30年ぶりのクラス会

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今日は高校のクラス会。
前回は20歳のときだから何と30年ぶり。
幹事として一番大変だったのは住所調べ。
結局、10人以上が分からずじまいで、
出席者も46人中15人。

なぜ30年間開かれなかったかというと、
共学なのに男子クラスだったから。
同窓会、クラス会の楽しみといえば
異性がどう変わっているのか。
男ばかりじゃ、やはり華がないかな。

ともあれ、もう少ししたら会場準備に出掛るとしよう。

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