新国立劇場「ヴォツェック」
新国立劇場でアルバン・ベルクの「ヴォツェック」を見てきた。
まずは、アンドレアス・クリーゲンブルクの演出から。
舞台一面に浅く水が張られている。
空中には四角い箱が浮いており、
これが床屋にもなり、ヴォツェックの家にもなる。
そして浮いたまま、場によって、前に出てきたり、
後ろに下がったりする。
登場人物たちの容姿や衣装は異様で病的。
醜く太っていたり、怪物のような
恐ろしいメイクをしていたりする。
たぶんヴォツェックの目には、
このように映っていたのだろう。
演出のもう一つの特色は、
ヴォツェックとマリーの子どもが
舞台上でずっと芝居をしていること。
抑え気味の照明も効果的で、
暗い、とにかく暗い、
しかし素晴らしい演出だった。
そもそもこのオペラ、
貧乏な兵士ヴォツェックが、
小遣い稼ぎで生体実験台となり、
狂気の末に不倫を犯した妻マリーを殺害、
入水自殺するという壮絶な物語。
今回の演出では、
貧困や抑圧、社会不安などをテーマに
強く問題提起していると感じた。
主役級の歌手はほぼ満点の出来。
ヴォツェックのトーマス・ヨハネス・マイヤー、
マリーのウルズラ・ヘッセ・フォン・デン・シュタイネン、
鼓手長のエンドリック・ヴォトリッヒの3人とともに、
医者の妻屋秀和、アンドレスの高野二郎ら日本人も熱演。
東京フィルは、ヴォツェックが死んだ後の間奏曲など、
迫力に欠ける場面がいくつかあったが、
概ね高水準の演奏だった。
●アルバン・ベルク「ヴォツェック」
’09.11.26 新国立劇場大ホール 座席:3階4列19
指揮:ハルトムート・ヘンヒェン
演出:アンドレアス・クリーゲンブルク
ヴォツェック:トーマス・ヨハネス・マイヤー
鼓手長:エンドリック・ヴォトリッヒ
アンドレス:高野二郎
大尉:フォルカー・フォーゲル
医者:妻屋秀和
第一の徒弟職人:大澤 建
第二の徒弟職人:星野 淳
マリー:ウルズラ・ヘッセ・フォン・デン・シュタイネン
マルグレート:山下牧子
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
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