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November 29, 2009

沈まぬ太陽(若松節朗監督)

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若松節朗監督の「沈まぬ太陽」を見てきた。
山崎豊子の同名小説の映画化で
途中10分間の休憩が入るという長編。

国民航空の恩地(渡辺謙)は、
労働組合で職場環境の改善に奔走した結果、
海外のへき地へ左遷されてしまう。
延べ10年にも及ぶ海外での生活に耐え、本社へ復帰したが
すぐにジャンボ機墜落事故が起き、
現地で悲劇を目のあたりにする。

国民航空の社内の立て直しを図るべく
首相からの要請で会長に就任したのは国見(石坂浩二)。
会長室に抜擢された恩地は、
組織の腐敗と戦うことになる・・・

国民航空は日本航空のことで、
恩地にも国見会長にもモデルが実在する。
今の日本航空の状況も考えると、
どうしてもっと早く、
改革に着手しなかったのだろうと思う。

ちなみに国見会長のモデルである伊藤氏の
辞任のいきさつは以下のサイトに詳しい。
氏の辞任の挨拶には心を打たれる。

http://www.rondan.co.jp/html/ara/jal2/index.html

さて映画に戻ろう。
若松監督の演出は正攻法で悪くはないが、
テレビの大河ドラマ風とでも言うのか、
面白みに欠ける。
特に延々と続くラストシーンは、
どうにかして欲しかった。

しかし、渡辺謙と石坂浩二の名演に敬意を表し
評価は満点ということで。

★★★★★

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November 20, 2009

写真集「ソラリーマン 働くって何なんだ?!」

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写真家・青山裕企さんの写真集
「ソラリーマン 働くって何なんだ?!」が
今月中旬に発行されました。
実はこの本に、4ページにわたって
私が登場しています。

ソラリーマンというのは、
空に向かって跳ぶサラリーマンの写真こと。
そんなかっこいい写真に、
サラリーマンとは何か、という質問に対する回答を添えて、
1冊の本にまとまりました。

今のところ全国の紀伊国屋書店のみでの
扱いとなってます。
近くにあれば、写真集のコーナーで
探してみてください。

●サイズ
 A5判変型(182×144mm)、192ページ
●価格
 1,344円(税込み)
●発行
 ピエ・ブックス

合わせて、写真展も開催中です。

●展覧会名
 SOLARYMAN -ソラリーマン写真集出版記念展-
●会期
 12月6日(日)まで
●会場
 和田画廊
 東京都中央区八重洲2-9-8 近和ビル302
●開催時間
 13:00~19:00
●休廊日
 会期中無休
●入場料
 無料
●URL
 http://www.wadagarou.com

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November 18, 2009

風が強く吹いている(大森寿美男監督)

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大森寿美男監督の「風が強く吹いている」を見てきた。
直木賞作家・三浦しをんの同名小説の映画化。

寛政大学4年生のハイジ(小出恵介)は、
新1年生のカケルに声を掛けた。
カケル(林遣都)は高校時代、天才ランナーと呼ばれたが、
事情があって、今は陸上からは離れている。
ハイジはカケルを、家賃が格安の竹青荘へ
強引に入寮させる。
ここは陸上部の寮であり、
カケルは入寮と同時に陸上部の部員となった。

ある日ハイジは、竹青荘メンバーに
箱根駅伝に出場するとの野望を発表する。
最初は馬鹿げた話と思っていた彼らだが、
ハイジの配慮や指導で徐々にその気になっていく・・・

素人10人を集めて箱根駅伝出場をねらうというのだから
そんなばかなという話。
しかし、こんなにも面白く見せるのは、
10人のキャラクターによるものが大きい。
まずは主役のカケルを演じる小出恵介。
優しい口ぶりのなかにも強い意志を感じさせ、
時には熱く、厳しくみんなを指導するという難しい役柄を
見事に演じ切った。

次にカケルを演じる林遣都。
何と言ってもあの走りと引き締まった肉体。
この役にぴったりで、
彼なくしてはこの映画はありえなかったのではと
思うくらい適役だった。

ほかの8人も個性豊かで、
それぞれのエピソードは
笑いあり、考えさせられるものありと
バラエティに富んでいて楽しい。

そしてこの作品の映像としての魅力は、
予選会と箱根駅伝本番の場面。
これがロケかと思うくらいリアリティがあり、
毎年、テレビで鑑賞している私も、
まったく違和感を感じなかった。
この編集も見事。

監督の存在感があまりなかったことや、
ラストシーンが、あれから何年後のことかが
分かりづらかったことを除けば、
青春スポーツ映画としては満点の出来。

★★★★★

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November 14, 2009

マイケル・ジャクソン THIS IS IT(K・オルテガ監督監督)

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マイケル・ジャクソンのドキュメンタリー映画
“THIS IS IT”を見てきた。

今年7月にロンドンで行われるはずだったコンサートの
リハーサル映像を編集し映画にしたもの。
声が抑え気味であるのが残念だが、
ステージの構成や演出などは本番そのままで、
臨場感は十分に伝わってきた。

特にMJのステージに対する姿勢はまさにプロ。
さらには、50歳になろうというのに
あのダンスパフォーマンスは目を疑った。
世界から選りすぐりのバックダンサーたちも
彼の前では色あせて見えた。

もしMJが生きていたら、
この程度のパフォーマンスでは
公開されるはずないという意見が多いが、
残念ながら彼はもうこの世にはいない。
このような映像を見せてもらえたというだけで
感謝しなければならない。
もはやわれわれは、このフィルムを見て、
MJのベストパフォーマンスを
頭に浮かべるしかないのだから。

音楽好きなら、
絶対に見ておくべき作品。

評価:★★★★★

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November 13, 2009

ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜(根岸吉太郎監督)

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根岸吉太郎監督の
「ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜」を見てきた。

終戦直後の東京、
放蕩者の小説家・大谷(浅野忠信)はある日、
飲み屋から五千円を盗んで自宅に逃げ帰って来た。
追い掛けて来たのは、
飲み屋夫婦の吉蔵(伊武雅刀)と巳代(室井滋)。
大谷はどこかに逃げ出してしまうが、
妻の佐知(松たか子)は、
警察沙汰になるのを許してもらおうと
人質として翌日から夫婦の店で働くことになる。

飲み屋で働く佐知の前に、
佐知に好意を持つ工員・岡田(妻夫木聡)や、
かつて佐知が思いを寄せていた弁護士・辻(堤真一)が現れる。
一方、大谷の借金、浮気癖はなおることなく、
とうとうバーの女・秋子(広末涼子)と姿を消してしまう・・・。

太宰治の「ヴィヨンの妻」をベースに、
さまざまな短編のエピソードを取り込んた
オリジナルストーリーとなっている。
主人公の大谷はイコール太宰だろう。
太宰その人を描いた映画といって過言でない。

松たか子と広末涼子が演ずる、
二人の女性が印象的だ。
何度も大谷に裏切られ、
明るい未来は望めないのに、
離れていこうとはせず、
時に満足そうな表情さえ見せる佐知。
浮気だと分かっていても待ち続け、
あげくのはてには、無理心中で命を落とす秋子。
このようなヒモ体質の男のどこがいいのか
どうしても理解できないんだけど・・・。

評価:★★★☆


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November 12, 2009

筧忠治展〜自画像を描き続けて80年〜

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愛知県一宮市の三岸節子記念美術館で開かれている
「筧忠治展」を見てきた。

9年前、同市内の博物館で出会って以来、
ずっと気になっている画家。
地元以外ではほとんど知られていないが、
力強い描写は個性的で、
一度見たら忘れられない。

今回は、サブタイトルにあるとおり、
自分自身を不動明王になぞらえた自画像を中心に、
何年も掛けて絵の具を塗り重ねた大作「虫眼鏡を持てる老母」、
繊細なエッチングの猫や風景画などが展示されている。
量的には少々物足りないが、
1枚1枚からは執念のようなものが
ずっしりと伝わってくる。
11月15日まで。

常設展も見てきた。
「三岸節子 室内画の誘惑 −美の小宇宙を描いて−」
室内の花器、壺、小物などを描いた作品が紹介されていた。
入り口で目を引いたのは、
20歳のときの節子の自画像。
デビュー作だと言う。

おかっぱの髪型といい、
鮮やかな赤い着物といい、
あどけなさが残る中にも、
その眼差しからは強い意志を感じ、
絵の前でしばしたたずんでしまった。

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November 10, 2009

出口のない海/横山秀夫

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横山秀夫の「出口のない海」を読んだ。

並木浩二は甲子園の優勝投手。
しかし大学進学後、肩を痛め、
本来の速球が投げられなくなる。
何とかマウンドに立ちたいと、
新しい変化球に開発に全力を注ぐ。
しかし太平洋戦争が勃発、
日ごとに戦闘が激化するなか、
並木は愛する家族や友、恋人など
大切な人たちを守るために、
戦うことを決意した。

敗戦が濃厚となり、海軍は
起死回生の兵器“回天”を開発する。
敵艦に体当たりする人間魚雷で、
その搭乗は、すなわち死を意味する。
並木は自ら望んで志願、
そして遂に出撃の時が訪れる・・・

題材が題材だけに、目頭が熱くなる場面も少なくなかったが、
全体的にはリアリティに乏しい印象。
警察を描くと臨場感あふれる表現を見せる著者が、
戦争を扱ったこの作品では、
あまり掘り下げることができなかった。
何度も登場するラヴェルの「ボレロ」にも違和感。
どうもこの作品の内容とは結びつかない。

評価:★★★

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November 09, 2009

この胸に深々と突き刺さる矢を抜け (上・下)/白石一文

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白石一文の「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け」
上下巻を読んだ。
第22回山本周五郎賞受賞作品。

カワバタは有名週刊誌の編集長。
東大准教授の妻、11歳の長女と3人暮らしで、
長男は生後3カ月で亡くしている。
時折、死んだ長男の幻聴を聞くことがある。

お互いの仕事が忙しく夫婦生活はないが、
それぞれに恋人を持つ。
特にカワバタはジュンナというセックスフレンド以外に
グラビアタレント2人とも関係を持っている。
数年前に彼自身、胃がんにかかり、いまも治療中。
その再発の恐怖におびえることもある。

彼が今、追っているのが、大物政治家Nの収賄疑惑。
しかし発表直前に圧力がかかり、
社内外での駆け引きが始まる・・・

この作品、小説と呼んでいいものかどうか。
というのも、物語の途中で長大な引用文が何度も登場する。
しかも、時にストーリー展開を逸脱する。
マザーテレサの「貧しさ」と題する文、
ノーベル経済学賞受賞のフリードマンの
プレイボーイ誌でのロングインタビュー、
キング牧師のメンフィス演説、
「もし世界が100人の村だったら」の主要部分など、
著名なものも少なくない。

貧困とは、経済とは、死とは・・・
筆者の意見が主人公の独白を通じて語られる。
かなり哲学的で理屈っぽいかもしれない。

それでも、政治家Nと対峙する場面、
ラストの北海道での意外な人物など、
娯楽作品としても十分楽しめた。
著者と同じ世代、アラファーには受け入れられるだろうが、
主人公の言動やセックス描写などで、
女性からはそっぽを向かれそうな作品。

評価:★★★★☆

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November 08, 2009

体調すぐれず・・・

帰国後ずっと体調がすぐれない。
風邪を引きずっている感じ。
病院で何度も薬を代えてもらっているのだが
なかなか良くならない。
どうしたものか。

そんな中、長女が新型インフルエンザを発症。
9日の大学オケ定期演奏会に参加できなくなった。
半年間練習を続けてきたのに残念。
ただ、入場券もあることだし、
会場には行こうと思っている。

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November 07, 2009

笑う警官/佐々木譲

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佐々木譲の「笑う警官」を読んだ。
'06年版「このミス」の10位に選ばれた作品。
8日間の海外出張に持っていった本の1冊で、
行きの成田ーLAで一気読みした。

舞台は札幌。
アパートで女性の変死体が発見された。
女性は北海道警察本部の美人警官と判明。
交際相手の、同じ本部に所属する津久井巡査部長が犯人と断定され、
射殺命令が出る。
所轄署の佐伯警部補は、かつて、
津久井と組んで仕事をしたことがあり、
彼の潔白を証明するために有志を集め、
極秘裏に捜査を始めた・・・。

著者の警察小説はどれも実に面白い。
この作品も例外ではないが、
ただ、無理な点もいくつかあった。

まずは、組織とは別に捜査チームを作ることは、
いかにも難しいのではないかと。
次に、その組織で翌朝までに犯人を見つけるという設定も
それは無理だろうと思わざるを得ない。
さらには、射殺命令、
そこまではしないでしょう(笑)

それからタイトルについて。
文庫本化と映画化に際し、
「うたう警官」から「笑う警官」に改題された。
うたうとは、組織の不正を外部にリークすることを示す隠語で、
分かりづらいということらしい。
しかし「うたう〜」のほうが、
小説の内容を的確に表していると思う。

ということで評価は少々厳しく。

評価:★★★

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November 05, 2009

Bryce Canyon

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今回の旅行で、唯一の観光が
ユタ州南西部の峡谷“Bryce Canyon(ブライス・キャニオン)”。
雨や雪解け水の力で断崖が作られ、
それがさらに侵食されて、
現在のような柱状の奇岩が形成された。

いくつかあるビューポイントから見下ろすと、
その雄大さ、偉大さがよく分かる。
そして、渓谷を上り下りするトレイルコースも各種ある。
私は2時間ほどのコースを選んだ。

つづら折りの細い通路を下っていくと、
数十メートルある岩の柱を下から見上げることができる。
これがまた壮大、自然の神秘を感じずにはいられない。

ラスベガスからひたすら車を走らせて約5時間掛かる。
グランド・キャニオンに比べると
交通の便が悪いのと、知名度が低いため、
日本人の観光客は少ないらしい。


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November 02, 2009

熱が38.3度

帰国の翌日、仕事で出勤したら、
上司から、顔色悪いから帰れ、と帰宅命令。
自宅に着くころには熱が出て、
体温計で測ると38.3度。
急いで市の休日急病診療所へ。
熱が出たばかりで、
新型インフルエンザとは診断されなかったが、
可能性は高いとのこと。

大学祭の真っ最中で、たい焼きを焼いていた長女は
濃厚接触者ということになり、
最終日の今日は大学に行くことを禁じられた。
妻も仕事を休んだ。

で、今朝、再度検査した結果は陰性。
単なる風邪だとのこと。
2日間ゆっくり寝て、体調もほぼ元通りに。
お騒がせしました・・・

おかげで、購入してからずっと机に置いたままになってた
白石一文の「この胸に深々と突き刺さる矢を抜け (上・下)」が
一気に読めた。
感想は後日。

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