ミラノ・スカラ座「ドン・カルロ」
ミラノ・スカラ座の来日公演で
ヴェルディの「ドン・カルロ」を見てきた。
会場は東京文化会館。
素晴らしかったのは、フィリッポ二世のルネ・パーペ。
ほぼ完ぺきな出来で、
特に第三幕のアリア「彼女は私を愛していない」の
ドラマチックな歌いっぷりには、目頭が熱くなった。
次にエリザベッタのバルバラ・フリットリも文句無し。
最初、声が出ていないようだったが、次第に良くなっていった。
第四幕のアリアにはぞくぞくした。
ロドリーゴのダリボール・イェニスは、
歌も演技も自然で、理想的なロドリーゴ。
エボリ公女のドローラ・ザージック、
声量は十分だが、エキセントリックな歌い回しは
迫力がありすぎたんじゃないかな。
ただしアリア「呪わしき美貌」は観衆を圧倒した。
サミュエル・ライミーの代役となった、
宗教裁判長のアナトーリ・コチェルガ。
悪くはなかったが、やはりライミーだったらと思ってしまう。
主役級ではドン・カルロのラモン・ヴァルガスだけ
少々期待が外れた。
声は悪くないが高音が伸びなかった。
演出はシンプルながら、洗練されたセンスの良い舞台。
舞台の後ろに、子どもの頃のカルロ、ロドリーゴ、
そしてエリザベッタを登場させることで、
複雑な人間関係や、過去の出来事を分かりやすく表現した
実に見事な演出だった。
特に、第二幕第二場、教会前の大広場で、
カルロが父親に剣を向ける場面があるが、
子役のロドリーゴがカルロから剣を取り、
王に差し出します。
心理描写を具体的に見せるあたりは、
分かりやすいだけでなく実に感動的だった。
今まで見てきたオペラの中でも3本の指に入る、
大変満足度の高い公演だった。
●ミラノ・スカラ座日本公演「ドン・カルロ」全4幕(イタリア語版)
’09.9.8 東京文化会館 座席:4階3列17番
指揮:ダニエレ・ガッティ
演出・舞台装置:シュテファン・ブラウンシュヴァイク
衣裳:ティボー・ファン・クレーネンブロック
照明:マリオン・ヒューレット
合唱指揮:ブルーノ・カゾーニ
フィリッポ二世:ルネ・パーペ
ドン・カルロ:ラモン・ヴァルガス
ロドリーゴ:ダリボール・イェニス
宗教裁判長:アナトーリ・コチェルガ
修道士:ガボール・ブレッツ
エリザベッタ:バルバラ・フリットリ
エボリ公女:ドローラ・ザージック
テバルト:カルラ・ディ・チェンソ
レルマ伯爵:クリスティアーノ・クレモニーニ
国王の布告者:カルロ・ボージ
天の声:イレーナ・ベスパロヴァイテ
フランドルの6人の使者:
フィリッポ・ベットスキ
アレッサンドロ・パリャーガ
エルネスト・パナリエッロ
ステファノ・リナルディ・ミリアーニ
アレッサンドロ・スピーナ
ルチアーノ・バティニッチ
ミラノ・スカラ座管弦楽団 /ミラノ・スカラ座合唱団
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