道絶えずば、また/松井今朝子
松井今朝子の「道絶えずば、また」を読んだ。
江戸歌舞伎の中心である中村座の舞台で、
稀代の女形・荻野沢之丞が不審な死を遂げた。
まず疑われたのは大道具方の甚兵衛。
しかし、すぐに首を吊ってしまう。
次に疑いの目が向けられたのは
沢之丞の跡目とされていた次男の宇源次。
その彼も舞台で怪我をし、
しばらく寺院に身を寄せることになる・・・
いわゆる時代ミステリー、
しかしこの本の魅力は謎解きではない。
江戸時代の庶民の生活を見事に描き出すとともに、
芝居小屋の役者や裏方の人間模様、
さらには大奥や寺院がからんできて、
読み応えのある長編となっている。
二人の兄弟が向き合うラストがいい。
まるで映画でも見ているような
印象に残る結末だった。
後で知ったのだが、この作品は
「非道、行ずべからず」「家、家にあらず」に続く
三部作の完結編らしい。
いきなり最後の作品を読んでしまったが、
単独でも十分楽しめる。
もちろんこれから前二作も読むつもり。
★★★★★
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