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July 01, 2009

オリンピックの身代金/奥田英朗

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奥田英朗の「オリンピックの身代金」を読んだ。

昭和39年の東京が舞台。
アジア初のオリンピックを2カ月後に控えた8月、
その警備の最高責任者である須賀修二郎宅と警察学校の寮が
立て続けに爆破される。
やがて爆弾魔・草加次郎の名を語る犯人から脅迫状が届く。
オリンピックの中止を要求する内容であった。
警察はかん口令を敷き、爆発の事実も脅迫状も国民に伏せた。
国家の威信を掛けた東京オリンピック、
万が一のことで国際的な評価を落とすわけにはいかない。

主人公である東大の院生、島崎国男は、
兄が働いていたオリンピック会場の建設現場で
肉体労働をすることにした。
華やかなオリンピックの陰で、
多くの人が苦労を強いられていることに
次第に義憤を感じる。
オリンピック開催を阻止することに決めた国男は、
計画を練り、国や警察と対峙することになる・・・。

昭和の時代を舞台にした犯罪小説。
ノンフィクションであるにもかかわらず、
この事件、もしかしたら現実に起きていたのでは、
というリアリティを感じさせる筆力は見事。

犯人である東大院生、肉体労働の人夫、
警察庁の幹部、公安部や刑事部の警察官、
ヤクザ、そしてその他大勢の一般市民など、
さまざまな人物が登場し、
昭和という時代、戦後19年しかたっていないという時代の雰囲気、
変貌を遂げる都市・東京を見事に描いている。

2段組、500ページを超える厚みを
まったく感じさせない傑作。
これからも奥田英朗からは目が離せない。

★★★★★

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