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June 09, 2009

汐のなごり/北重人

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北重人の「汐のなごり」を読んだ。
第140回直木賞候補作。

江戸時代、庄内藩あたりの水潟という湊町を舞台に、
慎ましく暮らす人々を描いた
短編小説6作品が収められている。

いずれの主人公も中年から老年で、
人生の晩年を迎えようとしている人たち。
おのれの人生を振り返ったときに浮かんでくる想いを
独特な雰囲気をもって描いている。

どれも印象深い作品ばかりだが、特に「海羽山」。
幼いころに飢饉で津軽から逃れる途中、
生き別れになった兄弟が50年後に再会を果たす。
弟は兄から、父と母の驚くべき最期を聞く。

また「海上神火」は、
ずっと男を待ち続けている元遊女の物語。
その恋が、波瀾万丈の末、ようやく叶おうとしている。
エンディングの美しさ・・・
うまい、と、思わず唸ってしまった。 

米相場を扱った「合百の藤次」だけは、
どうしても興味を持てなかったので、
少々減点。

★★★★

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