いのちなりけり/葉室麟
葉室麟の「いのちなりけり」を読んだ。
第140回直木賞候補作。
小城藩の重臣・天源寺刑部の婿となった雨宮蔵人は、
初夜に新妻の咲弥から言い渡された。
「これぞとお思いの和歌を思い出されるまで
寝所はともにいたしますまい」
そんな咲弥であったが、蔵人は静かに思い続ける。
蔵人は江戸屋敷に勤務するようになり、
次期藩主の元武から、
お国に帰るときに舅の刑部を討てとの命令を受ける。
命令を遂行し脱藩して、流れ着いた京で警護役に就く。
警護の合間には書を読み、好きな和歌を探した。
咲弥との約束を果たすために。
咲弥も思わぬ展開を経て、
水戸・徳川光圀の小石川の屋敷に奥女中として仕える。
月日は流れ、光圀と将軍綱吉の対立の中で、
数奇な運命により引き裂かれた二人が再びめぐり合う・・・
一途な二人の忍ぶ恋に心を揺さぶられた。
読み応えのある大人の恋愛小説。
歴史小説が好きであれば読むべし。
この美しいタイトルは、古今和歌集の
「春ごとに 花のさかりは ありなめど
あひ見むことは いのちなりけり」
から採られ、
文中でも引用されている。
★★★★★
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