クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル
クリスチャン・ツィメルマンのピアノ・リサイタルに行ってきた。
会場は岐阜市のサラマンカホール。
ツィメルマンを800席ほどの小さな音楽ホールで聴ける幸せ。
しかもチケットは安価。
S席が5,000円、一緒に行った長女は学制券で半額。
普段はなかなか満席にならないこのホールでも
チケットは完売だったらしい。
実はツィメルマン、このホールは2回目、
今では考えられないが、前回は空席が目立っていた。
さて今回のリサイタルはプログラムが魅力的。
ベートーヴェンの作品111がメインと思いきや、この曲は前半に。
最後に持ってきたのは、
シマノフスキの「ポーランド民謡の主題による変奏曲」。
聴いたことのない曲だった。
前半のベートーヴェン、
CDには名盤が数々あれど、
この日のツィメルマンは、
デュナーミクをこれ以上ないくらいに広く取り非常に刺激的。
私のほぼ理想とする演奏であった。
特に2楽章の変奏曲は印象に残る演奏となった。
後半のシマノフスキは、最初に民謡風の主題が弾かれ、
その後は変奏曲となる。
繊細かつ華麗、技巧的にも最高のレヴェル。
自信に満ちたツィメルマンの姿と笑顔を目の前にして、
演奏後、拍手をしながらも放心状態となった。
この日のアンコールはなし。
会場が明るくなってからも観客の拍手は鳴り止まず、
やっとステージに戻ってくれたツィメルマンに、
私を含め多くの観客が、
スタンディングオベーションで賞賛の念を表した。
●クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル
'09.5.9 サラマンカホール 座席:N-3
J.S.バッハ:「6つのパルティータ」より 第2番 ハ短調 BWV826
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 作品111
(休憩)
ブラームス:4つの小品 作品119
シマノフスキ:ポーランド民謡の主題による変奏曲 作品10
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Comments
こんなニュースがありました。
http://www.bbcmusicmagazine.com/news/polish-pianist-speaks-out-against-america
Posted by: ばってん | May 15, 2009 01:34 AM
ばってんさん、ごぶさたです。
お元気でしょうか。
LAでこんなことあったんですねえ。
物静かな紳士というイメージだったのに、
人は見かけによらないものです。
気持ちは分からないではないのですが、
芸術と政治は切り離して考えてほしいと願うのは、
甘い考えでしょうか。
退席した観客がいたというのは、
よほど強い口調だったのでしょうね。
母国の作曲家であるシマノフスキの
圧倒的なパフォーマンス、
今から思い返すと、
ツィメルマンが自分の主張を
明確にしたかったからと考えるのは、
意外に当たっているかもしれません。
Posted by: るうかす | May 15, 2009 09:54 PM
ツィメルマンって意外に今までももの言う芸術家、って思います。
録音についてもSP録音がもっとも芸術を伝えるものであるっていう
ような、一般的には時代遅れ、って思われる事を発言しています。
音楽を通じて何が伝わるか、そして音楽を元にして何が力になるかを、
彼はどこかで追い求めている、って以前から思っていました。
香港でツィメルマンの演奏を聴きましたが、彼の音楽は音楽ではなく、
言葉である、って感じた記憶があります。コンサートを平和裡に
聴くことができることが当然なことではない、それを実感してほしい、
なんていうとんでもないことを彼は考えているんじゃ?って
コンサートを通じてふと考えた瞬間がありました。
その瞬間は本当に怖かったです。
だって映画「戦場のピアニスト」の舞台はツィメルマンの出身の
ポーランド、そこではわずか60年ほど前に音楽を聴くどころか、
今日の生活は死への恐怖の中でしか生きられないという状況下に
いたんですから。
Posted by: ばってん | May 16, 2009 03:24 AM
ばってんさん
SP録音のことは知りませんでした。
記事によると、ツィメルマンの反米発言は
初めてではないようですね。
今秋、シンシナティ交響楽団との来日公演が控えています。
10月29日の名古屋公演は、
ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」を弾く予定。
これって流れてしまうような気がします。
まあ、ツィメルマンのガーシュインを
それほど聴きたいとは思いませんが。
Posted by: るうかす | May 17, 2009 07:26 PM