猫を抱いて象と泳ぐ/小川洋子
小川洋子の「猫を抱いて象と泳ぐ」を読んだ。
チェスを愛した寡黙な少年の物語。
彼は口が閉じたまま産まれた。
切開手術を受けた際に脛から皮膚移植をしたため、
唇から毛が生えている。
祖父母や弟と質素な生活をしていたが、
ある日、廃バスに住む大男の“マスター”から
チェスの手ほどきを受けることになった。
めきめきと力と付けていく少年のプレイスタイルはユニーク。
チェステーブルの下にもぐり、
駒の音を聞きながら熟考するというもの。
ひょんなことから、秘密クラブの自動チェス人形
“リトル・アリョーヒン”の中に入ることになり、
誰にも姿を見せることなく、次々と美しい棋譜を残していく・・・
大きくなりすぎて、デパートの屋上で
一生を過ごすことになった象のインディラ、
壁の隙間にはまって出られなくなった少女ミイラ、
太りすぎたため住んでいた廃バスから
出られないまま亡くなったチェスの師匠“マスター”、
不思議な人物が登場し、不思議な出来事が起きる。
そしてそれぞれが優しさに満ちている。
対戦の場面は比喩をうまく用いており、
チェスに関する知識がそれほどない私でも、
状況は十分に理解できた。
静けさに包まれたラストも感動的で、
心を揺さぶられた。
ただし、唇から脛毛が生えるという表現は、
生理的に嫌悪感があり、
最後まで受け入れることができなかった。
これがなければ満点なんだけど・・・
女性の読者はどう感じるんだろう。
評価:★★★★☆
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Comments
話題の1冊、もう読まれたのですね。
このタイトル、とっても興味を惹かれます。
小川さんの本は、凄く面白かったり、ちょっと???だったりして、
私にとっては、当たり外れがあるのですが、
この本は、面白そう。。。
唇から脛毛。。。ですか?
うーん、想像すると、やっぱり、見たくない、って感じですねー。
Posted by: 百子 | April 29, 2009 12:01 AM
百子さん
本当にすてきなタイトルです。
読み終えると意味が浮かび上がってきます。
唇のことはちょっと?ですが
小川さんの作品のなかでも
読みやすいほうだと思いますよ。
おすすめします。
Posted by: るうかす | April 29, 2009 01:44 PM