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April 27, 2009

猫を抱いて象と泳ぐ/小川洋子

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小川洋子の「猫を抱いて象と泳ぐ」を読んだ。

チェスを愛した寡黙な少年の物語。
彼は口が閉じたまま産まれた。
切開手術を受けた際に脛から皮膚移植をしたため、
唇から毛が生えている。
祖父母や弟と質素な生活をしていたが、
ある日、廃バスに住む大男の“マスター”から
チェスの手ほどきを受けることになった。
めきめきと力と付けていく少年のプレイスタイルはユニーク。
チェステーブルの下にもぐり、
駒の音を聞きながら熟考するというもの。
ひょんなことから、秘密クラブの自動チェス人形
“リトル・アリョーヒン”の中に入ることになり、
誰にも姿を見せることなく、次々と美しい棋譜を残していく・・・

大きくなりすぎて、デパートの屋上で
一生を過ごすことになった象のインディラ、
壁の隙間にはまって出られなくなった少女ミイラ、
太りすぎたため住んでいた廃バスから
出られないまま亡くなったチェスの師匠“マスター”、
不思議な人物が登場し、不思議な出来事が起きる。
そしてそれぞれが優しさに満ちている。

対戦の場面は比喩をうまく用いており、
チェスに関する知識がそれほどない私でも、
状況は十分に理解できた。
静けさに包まれたラストも感動的で、
心を揺さぶられた。

ただし、唇から脛毛が生えるという表現は、
生理的に嫌悪感があり、
最後まで受け入れることができなかった。
これがなければ満点なんだけど・・・
女性の読者はどう感じるんだろう。

評価:★★★★☆

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Comments

話題の1冊、もう読まれたのですね。
このタイトル、とっても興味を惹かれます。

小川さんの本は、凄く面白かったり、ちょっと???だったりして、
私にとっては、当たり外れがあるのですが、
この本は、面白そう。。。

唇から脛毛。。。ですか?
うーん、想像すると、やっぱり、見たくない、って感じですねー。

Posted by: 百子 | April 29, 2009 12:01 AM

百子さん

本当にすてきなタイトルです。
読み終えると意味が浮かび上がってきます。

唇のことはちょっと?ですが
小川さんの作品のなかでも
読みやすいほうだと思いますよ。
おすすめします。

Posted by: るうかす | April 29, 2009 01:44 PM

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» 「猫を抱いて象と泳ぐ」静かで熱い唯一の物語を読む幸せ [soramove]
「猫を抱いて象と泳ぐ」★★★★★満点! 小川洋子著 「タイトルを考える、 猫を抱くことは出来るが 象と泳ぐことはできそうにない、 猫を抱いて泳ぐのも難しそうだ、 しかしこの本を読むと その不思議な光景が目に浮かんでくる」 主人公は幼い頃、 動かないバスで暮らす友達から チェスを教えてもらう、 その後、彼は「盤上の詩人」と謳われた アレクサンドロ・アリョーヒンという ロシアの伝説のチェスプレイヤーにちなんで リトル・アリョーヒンと呼ばれるようになる。... [Read More]

Tracked on May 11, 2009 07:39 AM

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