サイゴン・タンゴ・カフェ/中山可穂
中山可穂の「サイゴン・タンゴ・カフェ」を読んだ。
ブエノスアイレス、サイゴン、ハノイ、東京を舞台に、
さまざまに心揺れる女性を描いた短編集。
どれもアルゼンチン・タンゴをモチーフにしている。
表題作の「サイゴン・タンゴ・カフェ」は、
他よりも長めの中編。
週刊誌記者の孝子が、滞在中のハノイで、
ふらりと立ち寄った路地裏の「サイゴン・タンゴ・カフェ」。
カウンターの奥にたたずむオーナーの老女は日本人だった。
誘われるままに一緒に踊った情熱的なタンゴ。
この女性こそ上司が20年探し続けていた
伝説の作家だった・・・
中山可穂の作品を読んだのは、
衝撃の傑作「ケッヘル」以来。
漂ってくる濃厚な空気はこの作品も同じ。
危険で足を踏み入れてはいけないと分かっていながらも
そこへ堕ちていく女性たちを、
情熱的、官能的に描いている。
読んだ後も、妖しく激しいタンゴの調べが
頭の中で渦巻いているよう。
久しぶりにピアソラを聴いてみたくなった。
「ドブレAの悲しみ」だけは他の作品とイメージが異なる。
猫を語り部とした物語で心地よく読めた。
著者は相当の猫好きなんだろうな、きっと。
評価:★★★☆
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