出星前夜/飯嶋和一
飯嶋和一の「出星前夜」を読んだ。
とにかく厚い本、重さは600グラム。
そのボリュームに手に取るまで相当の覚悟が必要だ。
松倉藩の不当な年貢取り立てや圧政で
困窮にあえいでいた島原半島の住人。
さらに追い討ちをかけるように伝染病が蔓延、
子どもたちが次々に倒れていく。
長崎の医師・恵州は庄屋の甚右衛門からの依頼を受け、
島原に入り治療にあたっていた。
しかし代官所は恵州を追い返してしまう。
怒り心頭の若衆・寿安が立ち上がり、
若者たちとともに反乱を起こそうとする。
これをきっかけになり各地で村人が蜂起し、
次第に大きなうねりとなっていった・・・
天草四郎が率いた「島原の乱」を描いた作品。
キリシタンの反乱だと日本史で学んだはずだが、
実際には島原半島を治めていた松倉藩の圧政、
隠れキリシタンの弾圧を大義名分にした無謀な年貢の取り立てによって
追いつめられた村人たちが起こした農民一揆であったことが分かる。
物語の後半になって、
村人たちは原城にろう城し、最後は全滅する。
一方で、寿安は長崎で数奇な運命をたどることになる。
自分が奪った命の数だけ、人を助けたいという思いから、
恵舟の下で医者の見習となり
疫病から子どもたちを守ろうとする。
2万7千人全滅という絶望的な史実の後で、
成長した寿安が描かれるエピローグは、
未来への光明となって読み手を救っている。
文句無しの傑作、今年一番の収穫となった。
評価:★★★★★
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