ボックス! /百田尚樹
百田尚樹の「ボックス!」を読んだ。
高校の運動部を描いた小説といえば
昨年は佐藤多佳子の「一瞬の風になれ」が印象に残った。
今年はこの作品。
ボクシングに天賦の才能を持っているが
勉強はまるでできない鏑矢と、
優等生だが運動は苦手で喧嘩に弱い同級生の木樽。
全く違う性格の2人の高校生が主人公。
舞台は高校のボクシング部で、
同部顧問の耀子の視点から
二人の高校生がボクシングの練習、試合だけでなく
さまざまな体験を通して成長していく過程が描かれている。
昔はボクシングのタイトルマッチがある日は、
テレビの前に釘付けだった。
いつの頃からか見なくなって、今はほとんど関心もない。
ボクシングの魅力はルールの分かりやすさだと思う。
いくつかの反則はあるが、
基本的にパンチを相手に当て、倒したほうが勝ち。
ところがこの小説を読んで、
競技としての奥の深さを感じた。
アマチュアのボクシングは
格闘技ではなく、あくまでスポーツ。
ダウンよりはポイントを重視すること、
高校の部活においては、所属したからといって、
すぐには試合には出られないことなど、
安全がまず第一のスポーツなのである。
さてこの作品では、
熱い物語だった。
ラスト近く、一度をリングを去った鏑矢が
亡くなった丸野との約束、優紀の思いを胸に
再度最強のボクサー稲村との試合に臨むという
いかにもベタな展開と分かってはいても目頭が熱くなってしまった。
そして後日談、
さわやかなエンディングはお見事!
著者は人気番組「探偵ナイトスクープ」で知られる放送作家、
前作の「永遠の0」も傑作だった。
今後も期待大。
評価:★★★★★
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