ぐるりのこと。(橋口亮輔監督)
橋口亮輔監督の「ぐるりのこと。」を見てきた。
時は1993年。
出版会社のOL妻・翔子(木村多江)と、
靴修理のアルバイトをする夫・カナオ(リリー・フランキー)の
夫婦の再生物語。
美大を出て画家になる夢を捨てきれないカナオは、
夏目先輩(木村祐一)から法廷画家の仕事を頼まれる。
時を同じくして翔子は妊娠、
幸せいっぱいの二人だったが悲劇が訪れる。
生まれたばかりの子が亡くなってしまったのだ。
夫とセックスをする日を事前に決めているほど
几帳面で生真面目な翔子は、
悲しい出来事から立ち直れず、やがて精神を病んでいく・・・。
この映画の特徴は、主役の夫婦の物語と、
90年代の大ニュースと並行して見せている点にある。
幼女誘拐殺人、地下鉄毒ガス事件、小学児童殺傷事件など、
元になる事件はすぐに思い浮かぶ。
夫婦が次第に癒されていっても
世の中の事件は相変わらずで救いようがない。
木村多恵とリリーフランキーの自然な演技がいい。
特に冒頭の夫婦の長回しのシーン。
ちょっとHな夫婦の会話や絶妙な間には
見てはいけないものを見てしまったような、
妙なリアリティがあった。
これってアドリブも含まれているのかもしれない。
二人以外にも、母(倍賞美津子)、兄(寺島進)、
その妻(安藤玉恵)などの親族、
司法記者・安田(柄本明)の法廷画家仲間・吉住(寺田農)など、
一癖二癖あるバイプレーヤーが味のある演技を見せてくれた。
さらに、公判シーンでは、
被告人、弁護士、裁判官などに
加瀬亮、田辺誠一、横山みどりら渋い役者を配し、
緊張感の中にもニヤリとさせられる場面も少なくなかった。
評価:★★★★★
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