食堂かたつむり/小川糸
小川糸の「食堂かたつむり」を読んだ。
大失恋により失語症となった主人公の倫子。
絶望の中で故郷に帰りレストランを開く。
その名も「食堂かたつむり」。
倫子が一人で切り回しているためお客は一日一組。
事前にメールなどで客とやり取りをして、
その客にふさわしいメニューを準備する。
食材は近くの森や畑でとれたものばかり。
こだわりではどこのレストランにも負けない。
いつしか食堂かたつむりは、幸福をもたらすお店、
小さな奇跡が起こる店としてうわさが広がる・・・
お客たちのエピソードが淡々と語られ
物語は静かに進んでいく。
倫子の失われた声はなかなか取り戻せないし、
母親との確執も解けることがない。
後半になって大きく展開する。
ペットのブタ・エルメスの結末は衝撃的で、
目をそらしてしまうほど。
しかし料理というのは、食材の命を投じて作られているという
考えてみれば当たり前のことを再認識させられた。
「いただきます」と「ごちそうさまでした」の気持ちは
いつも忘れずにいたいと思った。
すべてを包み込む優しいラストが味わい深い。
評価:★★★★☆
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