柔らかな頬/桐野夏生
桐野夏生の直木賞受賞作「柔らかな頬」を読んだ。
森脇カスミは夫道弘の仕事相手石山と不倫関係にあった。
ある日、石山が購入した北海道の別荘に
互いの家族を連れて行くことになった。
納戸でこっそりと逢引をする二人。
ところがその直後、カスミの長女有香が行方不明となる。
4年の歳月が流れた。
カスミは一人きりになってもまだ、有香を捜し続けている。
そこに、ガンで余命いくばくもない元刑事の内海が現れる。
内海は死ぬまでにこの事件の真相究明をしたいとカスミに訴え、
深い絶望を抱えた二人は有香を捜す旅に出る。
上下巻の文庫本を一気読みをしたが、
これだけ落ち込む小説は珍しい。
深い穴にはまってしまったような読後感は、
今までに経験したことがない。
北海道を点々とし精神的にも追い込まれていく二人の様子は
あまりにも悲しく、痛々しい。
内海の壮絶な生き様を見せつけられた後の結末、
有香はどうなったのか、どこかで生きているのか、
あるいは誰かに殺されてしまったのか、
真相が曖昧なまま終わってしまう。
戸惑いながらも、
そうか、こういう終わり方もあるのかと、
感心したりもした。
評価:★★★★
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