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October 16, 2008

サイトウキネンフェス「利口な女狐の物語」

もう1カ月前にもなる、松本に出掛けてきた。
恒例のサイトウキネン・フェスティバル。
ヤナーチェクのオペラ「利口な女狐の物語」。
昨年はチャイコフスキーの「スペードの女王」を上演。
サイトウキネンには珍しくどっしりとしたオーソドックスな演出だったが、
今年の演出家はロラン・ペリー。
きっと華やかな舞台が見られるだろうなと楽しみにしていた。

素直な感想。
楽しくておかしくて、夢見心地の2時間だった。
様式美を感じる舞台装置には感心した。
立体的なアナグマの巣や、
雪をかぶった飲み屋、
次は何が登場するのかと
わくわくしながら見ていた。

キツネやカエル、ハエ、ニワトリといった動物たちは
リアルだけれど、どことなく可愛げがあり楽しい。
動物の歌手は皆、着ぐるみを着たまま歌い演技をした。
大変なんだろうな、きっと。

細かい動きまで手抜きのない演出、
幕間の虫たちのダンスは狂言回しのように使われ効果的。
見ていても全然、飽きない。
よく練られたプロダクションは、
舞台転換までもが美しいと感じた。

ラストに近い場面で、
カエルが森番に「それはボクのおじいちゃんだよ」というくだり、
すべての生きとし生けるものは輪廻転生するという思想が
実に鮮やかに描かれていて、
予習で聴いたCDからは得られなかった深い感動を覚えた。

ところで肝心のオーケストラはどうしたことだろう。
弦に色艶がない、ぎこちがない、金管も大きなキズが散見された。
緊張感がなかったのか、単に練習不足なのか。
サイトウキネン・フェスは
当初の高邁な精神、気概が次第に薄まって、
祝祭的なイベントに変わりつつあるのかもしれない。
でも、小澤が監督をしているうちはずっと見続けたいと思っている。

●サイトウ・キネン・フェスティバル
 ヤナーチェク:オペラ「利口な女狐の物語」
 (フィレンツェ歌劇場との共同制作・新演出)
 ’08.9.2 まつもと市民芸術館 座席:2階29-30

指揮 : 小澤征爾
演奏 : サイトウ・キネン・オーケストラ
演出 : ロラン・ペリー
合唱:東京オペラシンガーズ
児童合唱:SKF松本児童合唱団
装置:バーバラ・デリンバーグ
衣裳:ロラン・ペリー
照明:ペーター・ヴァン・プラント
振付:リオネル・オッシュ
女狐ビストロウシカ:イザベル・ベイラクダリアン
森番:クィン・ケルシー
森番の妻・ふくろう:ジュディス・クリスティン
校長・蚊:デニス・ピーターソン
神父・あなぐま:ケヴィン・ランガン
行商人ハラシタ:デール・トラヴィス
雄狐:ローレン・カーナウ
宿屋の主人:松原友
宿屋の女房:増田弥生
犬ラパーク:マリー・レノーマン
雄鶏・かけす:黒木真弓
きつつき: 牧野真由美

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