サイトウキネンフェス「利口な女狐の物語」
もう1カ月前にもなる、松本に出掛けてきた。
恒例のサイトウキネン・フェスティバル。
ヤナーチェクのオペラ「利口な女狐の物語」。
昨年はチャイコフスキーの「スペードの女王」を上演。
サイトウキネンには珍しくどっしりとしたオーソドックスな演出だったが、
今年の演出家はロラン・ペリー。
きっと華やかな舞台が見られるだろうなと楽しみにしていた。
素直な感想。
楽しくておかしくて、夢見心地の2時間だった。
様式美を感じる舞台装置には感心した。
立体的なアナグマの巣や、
雪をかぶった飲み屋、
次は何が登場するのかと
わくわくしながら見ていた。
キツネやカエル、ハエ、ニワトリといった動物たちは
リアルだけれど、どことなく可愛げがあり楽しい。
動物の歌手は皆、着ぐるみを着たまま歌い演技をした。
大変なんだろうな、きっと。
細かい動きまで手抜きのない演出、
幕間の虫たちのダンスは狂言回しのように使われ効果的。
見ていても全然、飽きない。
よく練られたプロダクションは、
舞台転換までもが美しいと感じた。
ラストに近い場面で、
カエルが森番に「それはボクのおじいちゃんだよ」というくだり、
すべての生きとし生けるものは輪廻転生するという思想が
実に鮮やかに描かれていて、
予習で聴いたCDからは得られなかった深い感動を覚えた。
ところで肝心のオーケストラはどうしたことだろう。
弦に色艶がない、ぎこちがない、金管も大きなキズが散見された。
緊張感がなかったのか、単に練習不足なのか。
サイトウキネン・フェスは
当初の高邁な精神、気概が次第に薄まって、
祝祭的なイベントに変わりつつあるのかもしれない。
でも、小澤が監督をしているうちはずっと見続けたいと思っている。
●サイトウ・キネン・フェスティバル
ヤナーチェク:オペラ「利口な女狐の物語」
(フィレンツェ歌劇場との共同制作・新演出)
’08.9.2 まつもと市民芸術館 座席:2階29-30
指揮 : 小澤征爾
演奏 : サイトウ・キネン・オーケストラ
演出 : ロラン・ペリー
合唱:東京オペラシンガーズ
児童合唱:SKF松本児童合唱団
装置:バーバラ・デリンバーグ
衣裳:ロラン・ペリー
照明:ペーター・ヴァン・プラント
振付:リオネル・オッシュ
女狐ビストロウシカ:イザベル・ベイラクダリアン
森番:クィン・ケルシー
森番の妻・ふくろう:ジュディス・クリスティン
校長・蚊:デニス・ピーターソン
神父・あなぐま:ケヴィン・ランガン
行商人ハラシタ:デール・トラヴィス
雄狐:ローレン・カーナウ
宿屋の主人:松原友
宿屋の女房:増田弥生
犬ラパーク:マリー・レノーマン
雄鶏・かけす:黒木真弓
きつつき: 牧野真由美
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