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October 30, 2008

百瀬、こっちを向いて。/中田永一

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中田永一の「百瀬、こっちを向いて。を読んだ。
聞きなれない名前だと思っていたら
某有名作家の別のペンネームらしい。

タイトル作と「なみうちぎわ」「キャベツ畑に彼の声」「小梅が通る」の
短編4作品が収録されている。
関連性はないが、どれも主人公が地味で、
一風変わった恋愛を描いている。
一番気に入ったのは最後の「小梅が通る」。

容姿に恵まれた女子高生が、
転校先の学校ではブスのメイクをして地味に生活している。
前の学校では、その美形のせいで
男子からは絶大な人気を誇り
一方、女子からは誰よりも嫌われていた。
自分の顔のせいで周りの人たちの態度が大きく変わってしまうことで、
人間不信に陥っていた。
ある日、偶然会った同級生の男子に
つい、妹の小梅と名乗ってしまう。
小梅を気に入った男子は、会わせて欲しいとせがむのだが・・・

4作品とも余韻のある終わりかたが印象に残る。
まさに、恋愛小説の王道。
ベタなラブコメ、おこちゃま向け青春小説と言えばそれまでだが、
ときにはこんな小説も気晴らしにいい。

評価:★★★★

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October 28, 2008

ゲットスマート(ピーター・シーガル監督)

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見るんじゃなかった・・・
ちまたでの評価は高いようだが、
笑いのつぼが違うのか、全然面白くなかった。
ストーリーもよく理解できず、ずっと睡魔と闘う羽目に。
アン・ハサウェイだけはキュートでよかったけど、
それ以外はまったく評価の対象にもならない。

コメディが嫌いなわけではない。
今まで見たなかでは
「ファール・プレイ」(コリン・ヒギンス監督)と、
「ブルースブラザース」(ジョン・ランディス監督)が双へき。
どちらも何度見直しても笑えるし、
脚本から撮影、美術、音楽まで実によく出来た作品。

コメディって音楽が隠し味になってる気がする。
「ファール・プレイ」のバリー・マニロウ、
「ブルースブラザース」のR&B、
そして「ゲット・スマート」のベートーヴェン「第九」。
しかしこの第九はひどい。
なぜかピアノが演奏に加わっているし、ソリストの歌手もいない。

それからコメディのもう一つの隠し味、
それは“kiss”かな。

評価:★

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October 26, 2008

仙台クラシックフェスティバル2008

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10月11、12の両日、念願のせんくらへ行ってきた。

仙台クラシックフェスティバル2008、略して「せんくら」。
平成18年に始まり今年が3回目。
3日間にわたって、市内の4会場9ホールで
101もの公演が繰り広げられた。

すべての公演が45分、
入場料を1,000円均一と低く抑えているのが特長。
公演の質は高く、テーマもはっきりしている。

今回は2日間だけの滞在。
シエナ・ウインド・オーケストラを中心に
時間を目一杯つかって、気になる9公演をはしごした。

まずはシエナがらみ。
●「シエナ☆フルーツと踊ろう」「シエナ☆フルーツと歌おう」
シエナのフルートアンサンブル+パーカッションという
3人のユニットによる2つの公演。
「0歳児からの体感コンサート」というサブタイトルがついているとおり、
基本的には乳幼児とおとうさん、おかあさん向けのプログラムとなっている。
ブラームスの子守歌や熊蜂の飛行などのクラシックから、
アンパンマンマーチ、トトロの「さんぽ」などのアニメソングまでを
楽しいスピーチを交えて聴かせてくれた。

●「シエナ・ブラス5」
シエナの金管5人によるアンサンブル。
クラシック初心者向けのプログラムとなっており、
ビゼー「カルメン前奏曲」、聖者の行進など、
胃腸薬の主題による4つの変奏曲は楽しかった。

●「シエナ・サクソフォン・カルテット」
これもシエナのサックス4人によるアンサンブル。
「フランス音楽のエスプリ」と題して
大人向けのしっとりとしたプログラムだった。
ドビュッシー「ベルガマスク組曲」が絶品。
シエナのメンバーの技術の高さを再認識した。

●「松沼俊彦指揮シエナ24」
今回のシエナがらみの公演では一番大きな編成。
24人とはいえ会場が狭いので、迫力は十分。
吹奏楽の名曲を迫力ある演奏で観客を圧倒した。
「ぶらぼぉ!」も飛び交い、会場は大いに盛り上がった。
松沼俊彦のトークも最高に楽しかった。

●「音楽工房104」
0歳からの赤ちゃんも入場可能というにぎやかなコンサート。
コンセプトはシエナ☆フルーツと同じだが
こちらは9人による管弦楽。
「キッチンビート」では大小のフライパンを音階を奏でて
子どもたちもびっくり。
モンティの「チャルダッシュ」ではヴァイオリンが、
アンダーソンの「サンドペーパーバレー」では
何とサンドペーパを持った演奏家が、
それぞれ会場内を練り歩き、大受けだった。

●「御喜美江ソロリサイタル」
今回の9公演でもっとも感銘を受けた公演。
御喜美江は著名なアコーディオン奏者。
ルグランの「シェルブールの雨傘」
ピアソラの「チャオ・パリ」「リベル・タンゴ」など4曲のメドレーもすばらしかったが、
アンコールの同じくピアソラ「白い自転車」、
これには魂が震えた。

●「福田進一ソロリサイタル」
ギター・ソロ、しかも地味なオール武満徹プログラムなのに
会場が満席近かったのには驚いた。
武満といえば難解なイメージがあるが、
「ギターのための12のうた」では、
だれでも知っているポップスの名曲が6曲演奏された。
アコーディオンにしろギターにしろ、
ソロで演奏するならこの45分がちょうどいい時間だと感じる。

●「イリーナ・メジューエワ・ソロ・リサイタル」
楽しみにしていた、安永徹&市野あゆみのデュオだが、
安永さんの急病により来日できなくなってキャンセル。
代わりの公演はピアニスト、イリーナ・メジューエワ。
チケットの払い戻しも可能だったが
折角なので聴いてきた。
プログラムはムソルグスキーの大作「展覧会の絵」。
管弦楽で有名なこの曲は、もともと作曲家がピアノのために作ったもの。
それをM.ラヴェルが編曲し世に知れるようになった。
演奏家の名前は初めて聞いた。
演奏前のトークが、あまりにも流暢な日本語だったので
調べてみたら、ロシア人で現在は日本に在住しているらしい。
華奢な雰囲気からは想像もできないような力強い演奏だった。

以上、2日間で9公演を堪能した。
公演後は必ず出演者による握手&サイン会が開かれ、
より親しみを感じることが出来た。

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ところで今回はメディアテークでの公演が多かったため、
定禅寺通り周辺を散策した。

面白かった店を2軒紹介。

「kleiber(クライバー)」
クラシック音楽が流れる珈琲専門店。
定禅寺通り沿いのビルの地下1階にあり、
オーディオとCD棚だけのシンプルな店内は
音楽を聴くのにぴったりの環境。
店名はもちろん、カルロス・クライバーからとったものだと思う。

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●「書本&cafe マゼラン
狭いながらもなかなかこだわりのある古本屋。
時間がなかったので一通り、店内を見ただけで出てきたが
コーヒーも飲めるようになっている。

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備忘録として、今回泊まったホテル。

仙台国際ホテル
仙台駅からも徒歩5分程度と便利な立地。
幸運なことに最上階のデラックスシングルに
アップグレードしてもらえた。
全体的に設備は古さを感じたが、
清掃が行き届いており気持ちよく利用できた。

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October 24, 2008

のぼうの城/和田竜

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和田竜の「のぼうの城」を読んだ。
ベストセラーになり、漫画化、映画化も進んでいるという。

戦国時代の末期、現在の埼玉県行田市の
武州忍城(おしじょう)が舞台。
秀吉の小田原攻めの最中に、
石田三成は総大将として忍城攻めを命じられた。
迎え撃つ忍城は「のぼう様」と呼ばれていた成田長親が城代を務め、
三成の大軍を迎え撃つこととなった。
忍城には坂東武士の血を受け継ぐものたちが揃っていた。
しかし兵力は百姓を合わせても2,600人であるのに対し、
敵は2万3千人余で力の差は歴然。
勝ち目は無いように見えた。ところが・・・

久しぶりに読んだ歴史小説は、痛快きわまる傑作。
史実に基づいているとのことだが、
実際にはこんなうまくはいかないだろう、
きれいごとではすまないだろうと思う。
それでもこの小説にひかれるのは、
登場人物が皆、個性的で魅力的だから。

石田三成、大谷吉継、長束正家ら、戦国の有名な武将たちはもちろん、
成田家の家老、正木利英、柴崎和泉守、酒巻靭負ら、
無名の武士たちの描き方も巧み。
映画化するならどの役柄にどの俳優を充てようかなと
思い描くのも楽しい。
もともと脚本だったものを
小説化したのだから、それも当然か。

一人忘れた。
ヒロインともいえる甲斐姫はいいなあ。
どの女優に演じてもらおうか。

評価:★★★★☆

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October 22, 2008

モーターフェスティバル

今年もこのイベントのシーズンがやって来た。
世界の名車やクラシックカーが一堂に揃った
モーターフェスティバル「コルモラーニ2008」。

会場は3カ所に分かれ、私が見た会場には、
ごく一部しか展示してなかったが
それでも珍しい車がずらりと並んだ。

一番のお気に入りは、
毎年エントリーされる「ポルシェ・カレラ」。
後ろ姿が何とも優雅というかセクシー。
(写真:一番上)

今仕事をご一緒している某会長が
最近手に入れたアストン・マーチンも
じっくりと見せてもらった。
よく知らないが、国内には数台しかないらしい。
(写真:上から2枚目)

一番おしゃれだったのは、
車名は忘れたけど三輪の車。
さりげなくゼロハリバートンのスーツケースを
後部に縛っていた。
(写真:上から3枚目)

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October 21, 2008

名古屋フィル第351回定期

名古屋フィルハーモニー交響楽団の
第351回定期演奏会に出掛けた。

前半、ベルリオーズは、体調が悪かったせいないのか印象は薄い。
メゾソプラノの加納悦子の心地よい歌声もあって、
睡魔に襲われてしまった。

ハイドンの「告別」。
始まる前から照明が落としてあり、
譜面台には灯りが付いていた。
演奏者が順に退場することで有名な4楽章では
一人二人と灯りを消しながら席を立つ。
最後は指揮者もいなくなり、
薄暗い舞台にヴァイオリンの2人だけが残って静かに終了。
なかなか見事な演出だった。
30人足らずの小編成での演奏は小気味よかった。
最後のホルンのミスがなかったらと惜しまれる。

後半は、アデスという作曲家の「…されどすべてはよしとなり」。
驚くほど大きな編成だったが、
こじんまりとまとまった曲だった。
これまた印象薄し。

メインのバルトーク「管弦楽のための協奏曲」。
さまざまな楽器が活躍する曲で、
目にも楽しめる演奏だった。
途中、破綻しかけた部分があってひやっとした。
終楽章はもっと速いテンポで演奏してほしかったが
名フィルの個々の力ではあれが精一杯か。

●名古屋フィルハーモニー交響楽団第351回定期演奏会
 ツァラストゥラ6−墓の歌
 '08.10.18 愛知県芸術劇場コンサートホール 座席:2階L2列42

指揮:マーティン・ブラビンス
メゾソプラノ:加納悦子

ベルリオーズ:カンタータ「クレオパトラの死」
ハイドン:交響曲第45番嬰へ短調「告別」
(休憩)
アデス:…されどすべてはよしとなり
バルトーク:管弦楽のための協奏曲

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October 19, 2008

第40節 FC岐阜vsモンテディオ山形

結果は1-2。
また負けてしまったんだけど、
それほど力の差を感じさせない、岐阜の戦いぶりだった。
前半から何度もチャンスがあったし、
一矢を報いた伊藤のゴールも見事。
久しぶりに満足感のある試合だった。

前節は水戸を4-1で破っている。
調子は悪くないはずだ。
ホームはあと2試合。
強豪ばかりだが、勝利の瞬間をこの目で見てみたい。

《今シーズンの観戦歴》
●2月24日 vs名古屋グランパス 0-1 ※プレシーズンマッチ
●3月16日 vsベガルタ仙台 0-1
●4月19日 vs横浜FC 2-3
●5月03日 vs愛媛FC 0-3
●5月06日 vsサガン鳥栖 0-1
△6月11日 vsロアッソ熊本 0-0
△8月17日 vs徳島ヴォルティス 1-1
●8月30日 vs愛媛FC 0-1
●9月15日 vsセレッソ大阪 0-6
△9月27日 vsアビスパ福岡 1-1
●10月19日 vsモンテディオ山形 1-2

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October 18, 2008

おくりびと(滝田洋二郎監督)

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滝田洋二郎監督の「おくりびと」を見てきた。
平日の夜とはいえ、映画館は7割の入り。
中高年の夫婦が多かったのはこの映画の特徴。

チェロ奏者の小林大悟(本木雅弘)は
所属のオーケストラが解散したため失業、
傷心のまま妻の美香(広末涼子)と故郷の山形に戻った。
職探しを始め「高給保証」で飛びついたのが納棺業。
早速、社長(山崎努)の見習いとして働くことになった・・・

日本人の死生観を見事に描いた感動作。
本木雅弘と山崎努のコンビも絶妙、
二人の納棺の所作は様式美というのにふさわしい。
シリアスな映画であるのにユーモラスな場面が少なくないのも
この映画の魅力である。

ただ、どうしても納得いかないことがある。
「けがらわしい!」とまで言って家を出ていった美香が、
妊娠したため戻ってくる。
生まれてくる子のためにも、転職を考えてほしいと願うのは
若い女性の感覚としておかしくない。
タイミング良く、友人の母である山下ツヤ子(吉行和子)が亡くなり、
納棺をする大悟の姿を見て、美香の考え方が変わってくる。

夫の所作が見事で、崇高な仕事であることが理解できても
だからといってすぐに、仕事を続けていいよ、というのは
どうなんだろう、そんな簡単に気持ちが切り換えられるものだろうか。
「職業に卑賤なし」とはいうものの、
それは建前であって、我々の心の奥底にある本音は?

エンドロールが流れるのを見ながら、
そんなことを考えた。

評価:★★★★☆

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October 16, 2008

サイトウキネンフェス「利口な女狐の物語」

もう1カ月前にもなる、松本に出掛けてきた。
恒例のサイトウキネン・フェスティバル。
ヤナーチェクのオペラ「利口な女狐の物語」。
昨年はチャイコフスキーの「スペードの女王」を上演。
サイトウキネンには珍しくどっしりとしたオーソドックスな演出だったが、
今年の演出家はロラン・ペリー。
きっと華やかな舞台が見られるだろうなと楽しみにしていた。

素直な感想。
楽しくておかしくて、夢見心地の2時間だった。
様式美を感じる舞台装置には感心した。
立体的なアナグマの巣や、
雪をかぶった飲み屋、
次は何が登場するのかと
わくわくしながら見ていた。

キツネやカエル、ハエ、ニワトリといった動物たちは
リアルだけれど、どことなく可愛げがあり楽しい。
動物の歌手は皆、着ぐるみを着たまま歌い演技をした。
大変なんだろうな、きっと。

細かい動きまで手抜きのない演出、
幕間の虫たちのダンスは狂言回しのように使われ効果的。
見ていても全然、飽きない。
よく練られたプロダクションは、
舞台転換までもが美しいと感じた。

ラストに近い場面で、
カエルが森番に「それはボクのおじいちゃんだよ」というくだり、
すべての生きとし生けるものは輪廻転生するという思想が
実に鮮やかに描かれていて、
予習で聴いたCDからは得られなかった深い感動を覚えた。

ところで肝心のオーケストラはどうしたことだろう。
弦に色艶がない、ぎこちがない、金管も大きなキズが散見された。
緊張感がなかったのか、単に練習不足なのか。
サイトウキネン・フェスは
当初の高邁な精神、気概が次第に薄まって、
祝祭的なイベントに変わりつつあるのかもしれない。
でも、小澤が監督をしているうちはずっと見続けたいと思っている。

●サイトウ・キネン・フェスティバル
 ヤナーチェク:オペラ「利口な女狐の物語」
 (フィレンツェ歌劇場との共同制作・新演出)
 ’08.9.2 まつもと市民芸術館 座席:2階29-30

指揮 : 小澤征爾
演奏 : サイトウ・キネン・オーケストラ
演出 : ロラン・ペリー
合唱:東京オペラシンガーズ
児童合唱:SKF松本児童合唱団
装置:バーバラ・デリンバーグ
衣裳:ロラン・ペリー
照明:ペーター・ヴァン・プラント
振付:リオネル・オッシュ
女狐ビストロウシカ:イザベル・ベイラクダリアン
森番:クィン・ケルシー
森番の妻・ふくろう:ジュディス・クリスティン
校長・蚊:デニス・ピーターソン
神父・あなぐま:ケヴィン・ランガン
行商人ハラシタ:デール・トラヴィス
雄狐:ローレン・カーナウ
宿屋の主人:松原友
宿屋の女房:増田弥生
犬ラパーク:マリー・レノーマン
雄鶏・かけす:黒木真弓
きつつき: 牧野真由美

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October 15, 2008

さよなら渓谷/吉田修一

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吉田修一の「さよなら渓谷」を読んだ。

渓谷で幼児の遺体が見つかった。
近くの市営住宅に住む母親の立花里美が疑われ、
マスコミが住宅周辺を取り囲む。
容疑者に迫るレポーターの様子は、
数年前秋田県で起きたあの畠山鈴香容疑者の
児童殺人事件を思い出させる。

ところがこの小説の主役は立花里美ではなかった。
隣に住む契約社員の尾崎俊介が、
15年前に起きたある事件の犯人であり、
妻かなこは事件の被害者であることが分かってくる・・・

この小説、リアリティがないのが一番の弱点か。
暴行を受けた女性が、
年月が経過したにせよ、犯人の男性と一緒に住むという設定は
理解に苦しむ。

しかしながら、立花親子から尾崎とかなこ、
さらにはライターの渡辺がからんでの話の展開は実に見事。
スリリングですらある。

尾崎とかなこの背負っている重荷が、
読み手にもずっしりとのしかかってくる。
テーマは「歪んだ愛と憎悪」であろうか。
ワタシには重すぎた。

評価:★★★

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October 14, 2008

柔らかな頬/桐野夏生

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桐野夏生の直木賞受賞作「柔らかな頬」を読んだ。

森脇カスミは夫道弘の仕事相手石山と不倫関係にあった。
ある日、石山が購入した北海道の別荘に
互いの家族を連れて行くことになった。
納戸でこっそりと逢引をする二人。
ところがその直後、カスミの長女有香が行方不明となる。

4年の歳月が流れた。
カスミは一人きりになってもまだ、有香を捜し続けている。
そこに、ガンで余命いくばくもない元刑事の内海が現れる。
内海は死ぬまでにこの事件の真相究明をしたいとカスミに訴え、
深い絶望を抱えた二人は有香を捜す旅に出る。

上下巻の文庫本を一気読みをしたが、
これだけ落ち込む小説は珍しい。
深い穴にはまってしまったような読後感は、
今までに経験したことがない。
北海道を点々とし精神的にも追い込まれていく二人の様子は
あまりにも悲しく、痛々しい。

内海の壮絶な生き様を見せつけられた後の結末、
有香はどうなったのか、どこかで生きているのか、
あるいは誰かに殺されてしまったのか、
真相が曖昧なまま終わってしまう。
戸惑いながらも、
そうか、こういう終わり方もあるのかと、
感心したりもした。

評価:★★★★

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October 13, 2008

滞っているブログネタ

滞っているブログネタがたくさんある。

○サイトウキネンオペラ「利口な女狐の物語」
○小説「さよなら渓谷」(吉田修一)
○小説「柔らかな頬」(桐野夏生)
○仙台クラシック
○新国立劇場オペラ「トゥーランドット」
○映画「おくりびと」

今週はがんばって書き込んでいこうと思う。

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October 05, 2008

落語娘(中原俊監督)

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中原俊監督の「落語娘」を見てきた。

小さい頃からの夢であった落語を続けるため
三々亭平佐(津川雅彦)に弟子入りした香須美(ミムラ)。
ところがここは大変な男社会でセクハラは日常茶飯事、
女性がいくら頑張っても認めようとしない風潮がある。
さらには三々亭平佐師匠。
その奇行は半端ではなく、
香須美は振り回されてばかりの毎日。
とうとう寄席への出入りが禁止になってしまった。

事態打開のため禁断の落語「緋扇長屋」に挑戦しようとする師匠。
しかしこれは「演じた者は必ず命を落とす」
いわくつきの落語であった。

ミムラと津川雅彦の名師弟コンビが素晴らしい。
特に津川の話芸は絶妙、
気が早いが、日本アカデミー賞の
主演男優ノミネートではないだろうか。
ミムラも落語に情熱を傾ける女性を熱演。
和服も似合っていた。

「緋扇長屋」の劇中劇はうまい演出で、
見る側を飽きさせなかった。
マイナスは、セクハラの場面かな、
ちょっとひどすぎる。
見ていて不愉快になった。

中原監督はその昔「櫻の園」で話題をさらったが、
以降はこれと言った作品が見当たらない。
「櫻の園」を18年ぶりにリメイクするという。
あの傑作を超えられるのだろうか。

評価:★★★★

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October 01, 2008

オーバード・ホールOPERA2008「ラ・ボエーム」

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プッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」を見るため富山へ出掛けた。
指揮はマエストロ、チョン・ミョンフン、
舞台装置、衣装、道具などの一式ステージセットはボローニャ歌劇場から、
演出はイタリアからロレンツォ・マリアーニを招いての
本格的なオペラ上演。
聞くところによると富山では4年に1回、
このような事業を行っているのだとか。
前回の「カルメン」もチョン・ミョンフンの指揮。
このときのプロダクションは、
私が上野で見たものと同じようだ。

今夏、東海北陸自動車道が全線開通して、
わが家から富山市までは車で2時間半、
十分に日帰り圏内となった。
途中、合掌造りの白川郷や飛騨高山があり、
寄り道するのも楽しい。
しかも9月中旬から、9時~17時の利用は料金が半額。
100キロ以内、1日2回までという条件はあるものの、
17時~19時までの通勤割引も利用し、
途中でICを何度か下りながら走行すると、
ほぼ半額、5000円足らずで往復できる。
というわけで、今回は車で出掛けた。

富山ICを出たのがちょうど12時。
昼食は入善町の友人に教えてもらった「松之寿司」へ。
市街地から離れているので迷ったが何とか到着。
大きな店なのにお客がいない。
不安を感じつつも上にぎりを頼んだ。
小ぶりで好ましい大きさ。
おいしい!
突き出しのもずくとあさり汁も手抜きなし。
これで1500円也。

さて。本題の「ラ・ボエーム」。
プッチーニの中で、いや全オペラの中でも一番好きなこの作品を
チョン・ミョンフン指揮で見られるという幸せ。
オケの出来はまずまず。
寄せ集め、かつ、若いので心配していたが、
さすがマエストロ、見事にまとめてくれた。
ときどきアンサンブルは乱れるものの
非力さは全く感じなかった。
ただ、第2幕だけは冷や冷やした。
児童合唱が走り過ぎたかな。

ミミ役のレミージョが今回の目玉。
透き通る声は観客を魅了した。
特に中音域から上が魅力的だった。
ロドルフォは長身でスリム、この世界では珍しい体型。
声に伸びが無いのが難点だが、演技力は抜群。
第4幕のラストシーンでは、
二人の名演に思わず涙してしまった。

楽しみにしていた中嶋彰子のムゼッタ。
彼女は何を歌ってもハズレが無い。
お色気たっぷりにコミカルなムゼッタを演じてくれた。

舞台装置は、シンプルながらもよく考えられている。
鉄骨の骨組みのような建物が
幕ごとに角度を変えることで
別の場面を表現していた。

富山発のオーバードホール・オペラ、
次回はいつ、何が上演されるのだろうか。
地方公共団体の財政事情を考えると
継続は相当厳しいだろう。
でもぜひ続けていってほしい、
また往復500キロ走って駆け付けますから。

そうそう、帰りに「パティスリー・ジラフ」でチョコ系のケーキを、
「源」で「ますのすし」をお土産に購入。
ジラフは濃厚でかつ上品なケーキ、
こんな田舎でよくぞここまで・・・
看板類がほとんど無い店構えも好感が持てる。
富山へ行くときは必ず立ち寄ろうと思う。

●オーバード・ホールOPERA2008「ラ・ボエーム」
 '08.9.23 富山市オーバード・ホール 座席:1階E13

音楽監督・指揮:チョン・ミョンフン
演出:ロレンツォ・マリアーニ
美術・衣装:ウイリアム・オルランディ
照明:クリスティアド・ピアウド
舞台装置・衣裳:ボローニャ歌劇場 

ミミ:カルメラ・レミージョ
ロドルフォ:マッシモ・ジョルダーノ
マルチェッロ:カルロ・カン
ムゼッタ:中島彰子
コッリーネ:久保田真澄
ショナール:森口賢二
ベノア、アルチンドロ:晴雅彦

管弦楽:桐朋学園大学、桐朋オーケストラ・アカデミー、
    アジア・フィルハーモニー・オーケストラ・アカデミー
合唱:藤原歌劇団合唱部、「ラ・ボエーム」声楽アンサンブル、ほか

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