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August 26, 2008

切羽へ/井上荒野

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井上荒野の第139回直木賞受賞作「切羽へ」を読んだ。

かつて炭鉱で栄えた小さな島の小学校で
養護教員をしている主人公のセイ。
画家の夫・陽介と二人で、
平穏な日々を送っていた。

ある日、島の小学校に、
若い音楽教師の石和が赴任してくる。
夫を深く愛しているセイだが、
得体の知れない彼に、しだいにひかれていく・・・

島の女性たちが魅力的。
物静かで、胸騒ぎをけっして表に出すことのないセイ、
対照的に、自由奔放な同僚の月江。
あっけらかんとして、すべてを見透かしてしまうような老婆のしづかも、
その言動にはとても生命力を感じる。

まるで印象派の絵画や音楽のような
小さな島の穏やかな日々。
しかしそこで繰り広げられる、
月江の「本土」さんとの不倫、石和を含めた三角関係、
しづかの病床での性的な妄想などの現実は、
激しい描写はほとんど無いのに官能的。
想像力をかき立てられる作品だ。

評価:★★★★

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