八日目の蝉/角田光代
角田光代の「八日目の蝉」を読んだ。
'07年度「中央公論文芸賞」受賞作。
OLの野々宮希和子は、
ある朝、不倫相手の家に忍び込み、
6カ月の赤ちゃんを連れて逃亡する。
友人宅などを渡り歩いた後、
新興宗教まがいの「エンジェルホーム」にたどり着く。
ここで他の女性たちと共同生活を続けたが
マスコミに騒がれ始めると逃げ出し、
瀬戸内の小豆島で新しい生活を始める・・・
1章では、希和子が薫と名付けた赤ちゃんを連れて逃げ、
小豆島で暮らすまでを、希和子の視点で描く。
2章では、その17年後、
大人になった薫(恵理菜)の視点で、
事件の経過を順にたどっていく。
誘拐という許されない罪を犯した希和子なのだが、
薫への無償の愛は何とも切なく、
共感さえも覚えてくる。
しかし2章で、犯罪の詳細が明らかになり、
一番の被害者である恵理菜の苦悩する姿を見るにつけ、
やはり重罪であったことを再認識させられる。
クライマックスは終盤に訪れる。
希和子が港で叫んだ言葉、
「その子は朝ごはんを食べていないの」
このあたりから涙腺がゆるんできて、
鮮やかなラストでは、文字がかすんで見えなくなった。
心を揺さぶられる傑作。
評価:★★★★★
本の評価で5つ星を付けるのは
年に片手程度、つまり5作品と、基準を決めている。
しかし今年に入ってから5つ星が続き、
この作品で4冊目となってしまった。
ちょっと甘いなとは思うけど、
いい本との出会いに感謝しよう。
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