約束の地で/馳星周
馳星周の「約束の地で」を読んだ。
第138回直木賞の候補作。
会社を共同経営していた友人にだまされ、
一文無しになった誠は、
自殺しようと生まれ故郷に戻ってきた。
ところが飲み屋で古い知人から、
一人暮らしの父親に多額の貯金があることを聞き、
その金を当てにしようと考える。
母と妹が事故死してからは、父親と没交渉の状態。
今さら金を無心することができなかったため、
留守を狙って山小屋に足を踏み入れる・・・
(第一話「ちりちりと」)
北海道の寒い時期を舞台にした5つの短編集。
どれも救いようのない男と女の物語で、
幸せなエンディングを迎えることはない。
しかしそれほど不快感が残らないのは、
著者の筆力なのだろうか。
この著者は初めてだったが、
ぜひ他の作品を読んでみたいと思った。
それぞれ独立した物語なのだが、
脇役のひとりが次の作品の主人公として登場し、
最後の作品に最初の主人公が脇役として登場する。
5つの作品が環のようにつながり、
短編集全体で一つの世界を作り上げている。
この構成も気に入った。
評価が4なのは、
第三話「世界の終わり」で、
少年がナイフで警官二人を刺し殺すシーンが
どうしても理解できないから。
殺してなかったら5つ星。
評価:★★★★
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