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December 31, 2007

川の光/松浦寿輝

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松浦寿輝の「川の光」を読んだ。

川辺の土手に穴を掘って生活するクマネズミ親子の
勇気あふれる物語。
町のなかを貫いて流れる川が暗渠化される工事が始まり、
親子は、上流を目指して移動することになった。
ところが地上ではイタチやネコ、そして大きなドブネズミ、
空からはカラスやノスリなどが親子を狙う。
窮地に立ったときに助けてくれたのは、
ゴールデンリトリバーの心優しい飼犬や古い洋館に老婆と住む猫、
スズメの親子など。
波瀾万丈のうちに物語は進む。

まるで児童書のような内容で最初は戸惑ったが、
次第に物語の中に引き込まれていった。
単なる冒険活劇ではなく、
家族、友情、環境などについて再認識させてくれる。

「別の誰かの命を救うことで、借りを返す。
そうやって貸しと借りが順ぐりに回って、この世は動いてゆく。」

「生きるという事は、たとえば走る事だ。
真夜中だった。
ところどころに、灯る水銀灯に照らされた闇の中を、三匹は走っていた。
走るというのは、ただ脚を動かすというだけのことではない。
体に、顔に、風を浴びることだ。
足の裏で地面を踏みしめ、地面を蹴って、前へ前へと進んでいくことだ。
木のにおい、草のにおいを嗅ぎ、それがどんどん別の匂いに移ろっていくのを
全身で感じとることだ。」

人生訓もうまく取り込まれていて、
いろいろと考えさせられる作品だった。

著者は詩人でありフランス文学者(東大教授)、
さらには「花腐し」で芥川賞受賞という作家の顔も持つ。
今度は児童文学、なんと多芸な人だろう。

評価:★★★★☆

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December 30, 2007

ドレスデン国立歌劇場「ばらの騎士」

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11月にNHKホールで見てきた
ドレスデン国立歌劇場「ばらの騎士」のレビュー。

今年2回目の「ばら」で、前回は新国立劇場、
このときも期待以上の出来だったが、
ドレスデンの「ばら」は別格だった。

まずはファビオ・ルイジ指揮のオーケストラ。
巧みに緩急をつけた演奏にわくわくした。
じっくり聴かせるところは弦や管が美しく響き、
場面を大きく盛り上げていた。

歌手はオックス男爵のクルト・リドルが圧倒的。
いやらしいオヤジだが、どこか憎めないという難しい役柄を
見事に演じ切っていた。
いやあ、笑わせてもらった。

マルシャリンはアンゲラ・デノケが急きょ来日できなくなり、
A・シュヴァンネヴィルムスに交代。
声量不足が気になったが演技力は相当なもので、
下着姿やきわどい演出にも、十分こたえていたように思う。
オクタヴィアンのアンケ・ヴォンドゥンクも同じような印象。
問題はゾフィーの森麻季。
声が細く、2階席からでは聴き取りづらい。
現地ドレスデンでも歌っているはずなのだが、
この伝統ある歌劇場では、やや荷が重かったか。
演技からも緊張感が伝わってきた。

舞台装置は写実的。
後で知ったのだが、
第1幕はドレスデン初演時の舞台スケッチを
基にしたものだそうだ。
第2幕のファーニナルの家は高層マンションの1室だろうか、
窓からはネオンに輝くウィーンの街並みが見える。
ここでやっと、時代設定は20世紀であることが分かる。
第3幕は、地下にある怪しい飲食店。
SM女王風の男やボクサーなどが乱入してきての
ドタバタ劇が繰り広げられる。
そして後半の三重唱と二重唱、
この陶酔感がたまならい魅力。

大好きな「ばらの騎士」、
次回見られるのは2月のびわ湖ホール、
ホモキの演出が吉と出るか凶と出るか。

●ドレスデン国立歌劇場 R・シュトラウス「ばらの騎士」
 '07.11.22NHKホール 座席 2階R12列9番

指揮:ファビオ・ルイジ
管弦楽:ドレスデン国立歌劇場管弦楽団
合唱:ドレスデン国立歌劇場合唱団
演出:ウヴェ=エリック・ラウフェンベルク
 
元帥夫人:アンネ・シュヴァンネヴィルムス
オックス男爵:クルト・リドル
オクタヴィアン:アンケ・ヴォンドゥング
ファーニナル:ハンス=ヨアヒム・ケテルセン
ゾフィー:森麻季
マリアンネ:ザビーネ・ブロム
ヴァルツァッキ:オリヴァー・リンゲルハーン
アンニーナ:エリーザベト・ヴィルケ
元帥夫人の執事:ヘルムート・ヘンシェル
イタリア人歌手:ロベルト・ザッカ、ほか

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December 29, 2007

休み中の予定は

いよいよ年末年始のお休みに突入。

いきなり待ち受けるのは、年賀状づくりと
スタッドレスタイヤへの交換作業。
明日以降、雪が降るという予報もあって、
タイヤ交換は今日のうちに済ませておきたい。
年賀状づくりは、まあぼちぼちと
年内に投函できればいいかな。

休み中に読みたい本が机に積んである。

「川の光」松浦寿輝、
「ゴールデンスランバー」「 フィッシュストーリー」 伊坂 幸太郎、
「 ダイイング・アイ」東野圭吾、
「楽園」宮部みゆき、
「サクリファイス」近藤史恵

全冊完読が目標。

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December 26, 2007

桑田佳祐LIVE TOUR 2007

桑田佳祐のライブを日本ガイシホールで見てきた。

当然のことながらサザンの曲は無し。
それでも、ソロとしてのシングルヒット曲が
ずらりと並ぶ選曲は見事。
サザンよりも明らかにロック色とメッセージ色が強いと感じる。

最初のヤマは、アカペラの賛美歌で始まる「白い恋人達」。
これには思わず涙が。
1曲おいて「遠い街角」では、
バート・バカラックの名曲、カーペンターズでも有名な
“Close to you”を冒頭に挿入する憎い演出、
この曲のバックで使われたイラストのいアートワークは見応えも十分。

次のヤマは、最新シングル「ダーリン」からラストのROCK AND ROLL HEROまで。
特に盛り上がったのは「波乗りジョニー」。
桑田のソロとしてはワタシもこの曲が一番好き。
当然のごとくカラオケのレパートリーに。

さらには、社会風刺フォークとでも言うのか「漫画ドリーム2007」から
「ONE DAY」〜「可愛いミーナ」〜「祭りのあと」と続くアンコールも完ぺき。
恐れ入りました、桑田さま。

今回はアリーナの正面11列目という良席。
ところが、上には上がいるもので、
2列目に近所の夫婦が座っていた。
アンコールも含めると2時間半を超えるライブ、
さすがにずっと立ってはいられなかった。
6曲ぐらい座ってたと思う、年のせい?

来年はサザンの結成30周年。
いろいろ噂があるようだが、
全国ツアーと夏の野外ライブを期待したい。

●桑田佳祐 LIVE TOUR 2007 呼び捨てでも構いません!!
 「よっ、桑田佳祐」SHOW
 '07.12.19 日本ガイシホール(名古屋市)
 座席 アリーナ11列52番

1.哀しみのプリズナー      
2.BAN BAN BAN          
3.いつか何処かで         
4.男達の挽歌(エレジー)     
5.恋するワンダ   
6.My Little Hometown  
7.Merry Christmas in Summer
8.スキップビート       
9.BLUE こんな夜には踊れない  
10.白い恋人たち         
11.こんな僕で良かったら       
12.遠い街角           
13.地下室のメロディ       
14.東京ジプシー・ローズ    
15.東京             
16.月              
17.風の詩を聴かせて
18.明日晴れるかな          
19.ダーリン           
20.悲しい気持ち         
21.波乗りジョニー        
22.真夜中のダンディー      
23.ROCK AND ROLL HERO     
(アンコール)
1.漫画ドリーム2007        
2.ONE DAY         
3.可愛いミーナ       
4.祭りのあと

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December 23, 2007

めぐらし屋/堀江敏幸

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堀江敏幸の「めぐらし屋」を読んだ。

主人公は40歳前後の独身OL蕗子さん。
ある日、離婚していた父が亡くなった。
遺品の大学ノートを広げると、
そこには幼いころの懐かしい絵と、
見慣れない「めぐらし屋」の文字が。
忘れかけていた父の記憶が次第に蘇るとともに
徐々に生前の「めぐらし屋」としての父の姿が
浮かび上がってくる。

ほんわかとした蕗子さんの性格と、淡々とした時間の流れ、
そして、著者のデティールの巧みさにより
読者を「堀江ワールド」に導いてくれる。

物語は何も解決しないうちに終わる。
そう、父は教えてくれた、
〝わからないことは、
わからないままにしていておくのがいちばんいい〟

評価:★★★★☆

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December 22, 2007

善き人のためのソナタ(フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督)

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第79回アカデミー最優秀外国語映画賞を受賞した
善き人のためのソナタ」を見てきた。

社会主義国家である旧東ドイツでの物語。
国家保安省のヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミューエ)は、
職務命令で、劇作家ドライマン(セバスチャン・コッホ)と
その恋人で女優のクリスタ(マルティナ・ゲデック)を
盗聴により24時間監視することになる。
実直で職務に忠実なヴィースラーであったが、
2人の自由な思想や愛の言葉、そして美しいピアノの旋律を耳にして
今までに知ることのなかった新しい人生に目覚めていく・・・

普通ではない状況下で、
勇気や挫折、絶望と希望が複雑に交差し揺れ動く。
登場人物たちの深層心理の描き方が実に巧み。
そして鮮やかなラストシーン。
詳しくは述べないが、
映画史に残る名場面といえよう。
今年一番の傑作。

評価:★★★★★

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December 21, 2007

来年の手帳

来年の手帳をやっと購入した。
いつものMOLESKINE(モレスキン)の「ポケットダイアリー」
サイズは小さいが厚みはあって、
1ページ1日というレイアウトが好き。
スケジュール管理だけでなく
その名のとおり日記帳にもなるのが便利。
もちろん日記なんて大げさなものでなく
日々のメモ帳代わりに重宝している。

ただ問題はこの手帳、イタリア製とあって、
日本の祝祭日、いわゆる「国民の祝日」が明記されていない。
それに1色刷なので、土日曜日が分かりづらい。
そこで毎年手帳を開けて最初にする作業は、
土日曜日と祝祭日に赤丸を付けること。
面倒ではあるけど、なかなか楽しい。
今日それも終えて、いよいよ来年の予定を書き込み始めた。
例年暇だったはずの1、2月の週末が、
結構埋まっているのが気になる。
土日曜に仕事をする日を数えてみたら
3月初旬までに10日間。
年明け早々からエンジン全開かな。

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昨年のと新品を比較

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こんなふうに赤鉛筆で○

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December 20, 2007

夜明けの街で/東野圭吾

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東野圭吾の「夜明けの街で」を読んだ。

家族がある渡部だったが、
ふとしたきっかけで派遣社員の仲西秋葉と一線を越えてしまった。
付き合い始めて分かったのは、秋葉が複雑な家庭の事情を抱えていたこと。
15年前に両親は離婚し、母親は自殺、
さらに父親の愛人が自宅で殺害される事件が起きていた。
その現場に倒れていた秋葉は、
真犯人の容疑をかけられていたが、事件は解決しておらず、
まもなく時効を迎えようとしている。
愛する女性がもしかすると犯罪者かもしれない、
渡部の心は揺れ動く・・・

つまらなかった。
ミステリーとしても魅力なし。
不倫恋愛小説としてなら、多少は評価する人がいるかも。
帯の「最高傑作」は笑わせる、
というか東野ファンにしてみれば冒とくに近いな、これ。

評価:★★

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December 16, 2007

最近の○と×

年末の桑田佳祐ライブのチケットを譲ってもらった。
アリーナの前から11列目、しかも正面近く。
今年は、1月のMisiaも7列目、すぐ目の前だったし、
ドレスデン国立歌劇場の「ばらの騎士」もNHKホールにしては良席。
チケットに関しては大当たりの年だった。
ということで○

先週金曜の朝方からひどい嘔吐と下痢が続き、
病院で点滴を打ってもらい、仕事はお休みし、
2晩寝て過ごした。
久しぶりに死にそうな苦しみを味わった。
ということで×

今年もあと2週間、いいことありますように・・・

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December 13, 2007

永遠の出口/森 絵都

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森絵都の「永遠の出口」を読んだ。

紀子という女の子の
小学4年生から高校卒業までを綴った連作短編集。

小学生のころの誕生会や給食、
高校に入ってからのアルバイト、恋愛、そして卒業。
第三者からはどれも平凡なエピソードに見えるが、
本人にとっては初体験のことばかり。
いろんな事件に遭遇しながら、
少しずつ成長していく姿が何ともいじらしい。
どの短編も時代を生き生きと描き出しているが
家族4人での旅行を題材にした「時の雨」は特にいい。

評価:★★★★☆

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December 09, 2007

ALWAYS 続・三丁目の夕日(山崎貴監督)

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話題の「ALWAYS 続・三丁目の夕日」を見てきた。
言うまでもなく、数多くの映画賞を獲得した前作の続編。

まずは冒頭の場面。
これには驚いた。
ネタばれになるので詳しくは書かないが、
よくぞここまでやってくれた。
無くても映画は十分成り立つのに
あえてこの場面を挿入しようとした
制作者と監督に拍手を送りたい。

2時間半を超える上映時間を批判する声がある。
確かに、はとこの女の子や、薬師丸ひろ子の昔の恋人の登場は、
必要ないかなとも思う。
芥川賞にしても、
受賞前に地元でこんなに盛り上がるとは
到底思えない。
さらには候補作、
ちょっと勘弁してほしいというくらいベタな内容。
高校生でもこんな小説書かないと思うんだけど。

と言いながらも、作品の評価が落ちることはない。
特撮による昭和30年代の東京は実に見事。
役者の熱演と相まって、感動的な作品に仕上がった。

ストーリーからして、これが完結編であろうが、
ぜひもう一度、三丁目の住人に会いたい。
さらに続編は出来ないものだろうか。
ただし、これ以上淳之介や一平が
大きくならないうちにという条件付きで。

評価:★★★★☆

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December 06, 2007

橋本知事の手記

高知県の橋本大二郎知事が退任するというので、
手記が朝日新聞夕刊に掲載された。

あまり踏み込んだ話はしていないが、
大物政治家への陳情や、
知事会議での梶原拓・前岐阜県知事の手だれの技など
興味深い話も含まれている。

橋本知事の手記

橋本知事といえば、
長女が送ったメールに対して
直接返事を書いてくれたことがあった。
ブログにも書いてあるので読んでほしい。

私のブログ

まだ60歳、引退するには惜しい。
今後もこれまでの経験を生かし、
政治にかかわっていてほしいと願う。

ブログには橋本氏だけでなく、
「増田@岩手県、浅野@宮城県、片山@鳥取県の各知事には
頑張ってもらいたい」と書いた。
3年の間に、4人とも知事の職を退いている。
もう少し頑張ってほしかった。

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December 02, 2007

ボーナスでの買い物

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毎年この時期、ボーナスが入ると、
つい、セット物のCDやDVDを買い込んでしまう。
今年、候補に上がっているのは

○朝比奈隆指揮NHK交響楽団 DVD-BOX(29,610円)
○"グレン・グールド "The Complete Original Jacket Collection"(33,990円)
○「ラトル・エディション」マーラー:交響曲全集(限定盤)(7,690円)
○カラス〜コンプリート・スタジオ・レコーディングス;1949〜1969年(17,990円)

驚いたのは、これ。
○ベートーヴェン:交響曲第9番/カラヤン指揮ベルリン・フィル(62年録音)
価格は目を疑った、何と税込み200,000円也。
これって、廉価盤なら1,000円くらいで売ってるんじゃないかと思う。
何が違うかというと「高品位ハード・ガラスCD」の限定生産盤。
高音質再現性、高安定性、高耐久性を実現した、
究極の「夢」のCDらしい。
もちろん買わない、というか買えない・・・

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