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October 20, 2007

玻璃の天/北村 薫

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北村薫の「玻璃の天」を読んだ。

第二次大戦の足音が響き始めた昭和初期の東京で、
主人公は女学校に通うお嬢さま、花村英子。
事件に巻き込まれ、自分だけでは解決できず
相談相手である花村家のお抱え運転手、ベッキーさんこと別宮が
丁寧に謎を解いてゆく。
「幻の橋」「想夫恋」「破璃の天」の3編が収められている。

犬猿の仲である兄弟の孫同士が惹かれ合うという
昭和初期版「ロミオとジュリエット」ともいえる「幻の橋」、
暗号を残して失踪した友人を探す「想夫恋」、
ステンドグラスの天窓から墜落死した思想家が、
実は殺されたのではないかという、
3編の中では一番ミステリー色が強い「玻璃の天」。

巻末の参考文献を見て分かるとおり、
著者は綿密な調査をもとに各作品を執筆している。
どれも当時の世相を如実に描き出しており、
歴史を振り返る意味でもおもしろい。
「街の灯」に続く第二弾で、まだ続編は出てきそう。
次第に主人公が英子からベッキーさんに移りつつある。
兄の雅吉も随所に登場し、これからどう展開していくのか
興味が尽きない。

評価:★★★★

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