オペラ「スペードの女王」/サイトウ・キネン・フェスティバル松本
サイトウ・キネン・フェスで、本格的なオペラを上演するのは、
2004年の「ヴォツェック」以来となる。
このときは、現在も公演で使用している会場
「まつもと市民芸術館」のこけら落としで、
ペーター・ムスバッハの演出に、
安藤忠雄のペットボトルを使った装置デザインという、衝撃的な公演で
観客の度肝を抜いた問題作であった。
それに比べると今年は、
ニューヨークのメトロポリタン歌劇場が所有する舞台装置を使用した、
オーソドックスなプロダクション。
結論から言うと、大変レヴェルの高い、
サイトウ・キネン・フェスの中でも
上位にランクされる公演であったように思う。
何よりも、歌手が粒ぞろいであったこと。
特に、ゲルマン役のウラディーミル・ガルージン、
声といい演技といい、はまり役。
プログラムによると、ゲルマンは彼の最も得意とする役柄らしい。
さらに、ヒロインのリーザ役、オルガ・グリャーコワの華麗なこと。
恋に生きる情熱的な女性として申し分なし。
難しい役柄の伯爵夫人を演じ切ったラリサ・ディアートコワと、
出番は少ないが重要な役であるエレツキー公爵のスコット・ヘンドリックスも
主役2人に劣らない充実ぶりであった。
演出はいたってオーソドックスと書いたが、
奥行きがあり、照明も巧みで、
とても品のある舞台に仕上がっていた。
演奏のサイトウ・キネン・オケ、
特に金管が大活躍。
会場内は空調が切ってあったせいもあって、
オケのメンバーもタオルで汗を拭きながらの熱演であった。
「スペードの女王」は児童合唱団やバレエ団も必要、
上演時間も正味3時間を超えるため、
滅多に見ることのできないグランドオペラ。
それを高いレヴェルで、しかもこの入場料金で見せてもらえたことに
心から感謝したい。
ただ一点、終演後のフラッシュの嵐は何とかならないものだろうか。
かたく禁じられているはずであり、
そこそこのクラシックファンばかりのはずなのに
この状況は目を覆うばかり。
本当に恥ずかしい。
主催者側で何とか対策を講じてほしい。
●オペラ「スペードの女王」/サイトウ・キネン・フェスティバル松本
'07.8.28 まつもと市民芸術館 主ホール
ゲルマン:ウラディーミル・ガルージン
リーザ:オルガ・グリャーコワ
伯爵夫人:ラリサ・ディアートコワ
エレツキー公爵:スコット・ヘンドリックス
トムスキー伯爵/プルータス:マーク・デラヴァン
チェカリンスキー:ジョン・ダスザック
ポリーナ/ダフニス:スザナ・ポレツキー
家庭教師:イリーナ・チスチャコーワ
スーリン:小野和彦
マーシャ:黒木真弓
チャプリツキー/儀典長:大槻孝志
クロエ:安藤赴美子
ナルーモフ:成田眞
合唱:東京オペラシンガーズ
演奏:サイトウ・キネン・オーケストラ
指揮:小澤征爾
演出:デイヴィッド・ニース
装置・衣裳:マーク・トンプソン
照明:高沢立生
振付:マーカス・バグラー
(メトロポリタン歌劇場所有プロダクションを使用)
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