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August 07, 2007

5/佐藤正午

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佐藤正午、7年ぶりの長編「」を読んだ。
タイトルは“ファイブ”ではなく“ご”と読ませる。

結婚して8年、倦怠期を迎えている中志郎と真智子夫婦。
夜の生活も途絶えていたが、
海外旅行先のバリである事が起きる。
志郎が、偶然居合わせたエレベーターの中で、
超能力を持った女性から、特殊な能力を受け渡される。
そして結婚当初の、妻を愛していた記憶や感覚が蘇った。
再び愛されるようになった真智子は
付き合っていた作家津田伸一との関係を清算しようとするが、
ひょんなことから志郎が津田と出会うことになる・・・

超能力、オカルト系は小説も映画も苦手なのだが、
この作品は別、最後まで興味深く読めた。
つぎつぎに登場するエピソードがどれも面白く、
しかも予想外の展開を見せるので、読者を飽きさせない。

ただ主人公の作家、津田が、
ワタシにとっては、あまりに嫌な、許せないやつ。
出会い系で知り合った名前も知らない女性や、自分のファンの女性と、
片っ端から関係を結ぶ。
それを何とも思わないのが、これまた頭にくる。
中志郎と真智子も煮え切らないというか、
何を考えているのか理解に苦しむ。
というように、登場するのは、
すべてと言っていいほど、嫌いな人物ばかり。
なのに、最後まで一気に読ませてしまう魅力を持ち合わせている。
ちょっと評価がしづらい作品である。

この作品のテーマとも言えるのが、
「かならず冷めるもののことを、スープと呼び、愛と呼ぶ」
という言葉で、何度も登場する。
確かに真ではあるが、
そんなふうには信じたくないのが心情。
ここまで言い切ってしまう潔さも、この作品の魅力かも。

というわけで、5段階の評価は★★★★

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Comments

こんばんは。読みましたね、「5」。

私は、けっこう佐藤正午好きな作家のほうなんですが、今回はいま一つだったな~、という読了だったのを覚えています。

最近は、ちょっとくだらないものばかり読んじゃってますが。
ちなみに今は「ハル、ハル、ハル」という作品を呼んでいます。だれのだっけ?

Posted by: kubori | August 09, 2007 10:41 PM

kuboriさん、ごぶさたです。
お盆休み、迎えられそうですか?

「ハル、ハル、ハル」は古川日出男ですね。
この作家、2年ほど前、
巷でとっても評価の高かった「ベルカ、吠えないのか?」が
どうしても肌に合わず、
途中で放ったままになってます。

Posted by: るうかす | August 12, 2007 12:09 AM

>「ハル、ハル、ハル」は古川日出男

そうでした。題名に惹かれて購入したんですけど、確かにイマイチ。
ただ、書評とかでは大きく扱われているんですよね。

Posted by: kubori | August 14, 2007 10:24 PM

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