
新国立劇場で「ばらの騎士」を見てきた。
トーマス・ノヴォラツキー芸術監督の
最後の新演出となったが、
今までの集大成ともいうべき、
大変上質な舞台となった。
まずは演出のジョナサン・ミラー。
簡素だが格調ある舞台装置、衣裳が素晴らしい。
そして細部まですべて計算ずくの演出は、
見事というほかない。
粒ぞろいの歌手の中で最も賞賛すべきは、
元帥夫人のカミッラ・ニールント。
気品にあふれた容姿は、この役柄にぴったり。
一幕最後の独白の場面、
中年女性の心の揺れをコントロールされた歌唱で表現した。
次に、オクタヴィアンのエレーナ・ツィトコワ。
新国立劇場では4年前、フィガロの結婚で
愛らしいケルビーノ役を演じ切っていた。
このオペラでは、伯爵で元帥夫人の愛人、
さらには女装の手伝いさんも演じるという難役。
舞台を所狭しと走り回って八面六臂の活躍、
安定した歌唱力も披露し、
3幕の三重唱、二重唱では
絶妙なハーモニーを聴かせてくれた。
ほかにも、オックス男爵のペーター・ローゼは、
抜群の安定感でコミカルな役柄を演じ切った。
ゾフィーのオフェリア・サラだけは、
大柄な身体でちょっとイメージが違ったかな。
メインは外国人で固められたプロダクションだったが、
日本人キャストも負けてはいない。
特に警部の妻屋秀和とテノール歌手の水口聡は
存在感たっぷり。
カーテンコールでも大きな拍手が送られていた。
ペーター・シュナイダー指揮の東京フィルハーモニーも大健闘。
シュトラウス・サウンドを堪能させてもらった。
●R.シュトラウス 楽劇「ばらの騎士」
'07.6.17 新国立劇場オペラ劇場
指揮:ペーター・シュナイダー
演出:ジョナサン・ミラー
美術・衣裳:イザベラ・バイウォーター
照明:磯野 睦
舞台監督:大澤 裕
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:新国立劇場合唱団
元帥夫人:カミッラ・ニールント
オックス男爵:ペーター・ローゼ
オクタヴィアン:エレナ・ツィトコーワ
ファーニナル:ゲオルグ・ティッヒ
ゾフィー:オフェリア・サラ
マリアンネ:田中三佐代
ヴァルツァッキ:高橋 淳
アンニーナ:背戸裕子
警部:妻屋秀和
元帥夫人の執事:秋谷直之
ファーニナル家の執事:経種廉彦
公証人:晴 雅彦
料理屋の主人:加茂下稔
テノール歌手:水口 聡
帽子屋:木下周子
動物商:青地英幸
レオポルド:三戸大久
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