永遠の0/百田尚樹
太平洋戦争末期、
零戦搭乗員(パイロット)の宮部久蔵は特攻で死んでいった。
その祖父のことを知ろうと、
佐伯慶子と健太郎は、戦友を訪ね歩いた。
最初の証言は「宮部は臆病者」だった。
妻子の写真を常に携帯し「生きて帰る」ことばかり考えている男。
危険な戦闘を避けて、必ず無傷で帰還する卑怯者。
しかし、何人かの話を聞いているうちに
祖父は天才的な飛行機乗りであるとともに、
命がけで仲間を守ろうとしていたことが明らかになる。
さらには、特攻志願を拒否するだけでなく、
部下にまで「絶対に死ぬな」と語っていたという。
なのに、なぜ祖父は特攻を志願したのか。
その死に隠された真実とは・・・
国や大切な家族を守るために戦った零戦搭乗員たちを通じて
「命」の重みを表現するとともに、
彼らの苦悩や心の中の思いを見事に描き切っている。
戦況悪化の根源である指揮官の判断ミス、
非人間的な戦闘機や兵器、
プライドやメンツに縛られ疲弊しきった軍組織、
語られるのは絶望ばかり。
しかしそんな中でも最前線で死力を尽くす兵士たち。
小説の後半部分は、涙なしでは読めなかった。
ミステリータッチではあるが、
まるでドキュメンタリー映画を見たような読後感。
戦争を知らない世代に対する著者のメッセージだと感じた。
最後の頁に記された30冊余りの参考文献、
著者の情熱と労苦に敬意を表したい。
5段階評価は、文句なしの★★★★★
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Comments
表紙もなかなかステキな本ですね。
私も読んでみようかな。
Posted by: kubori | January 15, 2007 11:51 PM
kuboriさん、ごぶさたです。
メンテナンス中でコメントできなくて
ごめんなさい。
この本はおすすめですよ。
特にkuboriさんのような仕事をしている人には
膨大な量の文献から1冊の作品としてまとめ上げた
著者の構成能力は、参考になると思います。
さすが放送作家です。
Posted by: るうかす | January 17, 2007 09:54 PM