風に舞いあがるビニールシート/森絵都
森絵都の「風に舞いあがるビニールシート」を読んだ。
すばらしい本に出会ったときの興奮は、
すぐにだれかに伝えられずにはいられない。
いわずと知れた第135回直木賞受賞作。
前作「いつかパラソルの下で」が期待はずれだったので
読むのがこんなに遅れてしまった、不覚だった。
6作品を収録した短編集。
「器を探して」は人気パティシエヒロミの秘書を務める弥生が主人公。
大好きなケーキの仕事と恋人の間に挟まれ、
どちらを選ぶべきか苦悩する。
「犬の散歩」は、捨て犬の里親探しボランティアをする恵利子が、
その資金源のためにスナックでアルバイトまでする。
「守護神」は、大学の夜間部に通う学生たちの物語。
フリーター裕介と、レポートの代筆をするニシナミユキの
二人の関係を描く。
「鐘の音」は、仏像修理を生業とする人たちの間に隠された、
〝過去の秘密〟の物語。
「ジェネレーションX」は、顧客のクレームへの謝罪に向かう車中での
20代の石津と、40を目前にした健一の物語。
最後にドラマが待ち受けている。
そして表題作の「風に舞いあがるビニールシート」。
国連難民高等弁務官事務所で働くエドと里佳夫婦。
難民救済の現場で使命感に駆られるエド、
一方、家族のぬくもりを求めようとする里佳。
起こるべくして起きた悲劇とその後の展開・・・
6作とも読みごたえ十分。
後の作品になるにつれ感動は増し表題作で頂点に達した。
「ジェネレーションX」と「風に舞いあがるビニールシート」は
何度も読み返したくなる傑作。
5段階評価は★★★★★
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