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November 12, 2006

ケッヘル(上・下)/中山可穂

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中山可穂の「ケッヘル」(上・下)を読んだ。
最初に書いてしまおう、5つ星★★★★★の満点評価。
今年一番の収穫となった。

一般の評価は必ずしも高くはないと思う。
ミステリーとしては荒さが目立つし、
真犯人もどうしてそうなるの、と首を傾げざるを得ない。
でもワタシは、読んでいる間ずっと至福の時を味わった。

モーツァルトなしでは生きていけない遠松鍵人と、
同性との愛から逃れて放浪していた木村伽椰が、
ドーバー海峡に面した港町のカフェテラスで出会う。
(始まりからして絶品)
この二人をめぐって、過去と現在が相互に語られつつ
物語は進んでいく。
しだいに明らかになる、壮絶で破壊的な愛。
殺人事件が起きてからはミステリータッチとなり
最後に意外な人物が犯人とわかる。

女性同士の性愛の描写が妖艶でかつ露骨、
この作家ならではの表現方法といえる。
誤解を承知で書くとすれば、
この描写に酔いしれてしまった。

そして何よりもこの作品には、
モーツァルトの名曲が散りばめられている。
曲名が出るたびに、CDを取り出して聴きたくなってしまった。

ちなみにケッヘルとは、
モーツァルトの作品を時系列的に配列した番号のことで、
K.000というように表記される。
K.1からK.626まであり、
K.626はモーツァルトの死によって未完に終わったレクイエムである。

この本、偶然、図書館で見つけて借りた本、
すぐに購入して再読するとともに、
手元に置いておきたいと思う。

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