« 松任谷由実コンサートツアー | Main | 何とかならないのか「亀田の日」 »

May 06, 2006

東京二期会「皇帝ティトの慈悲」

Tito0416_01


奇才コンビチュニーが演出するというので話題を集めた
東京二期会「皇帝ティトの慈悲」公演。
ワタシにとってコンビチュニーの体験は、
バイエルン州立歌劇場の「トリスタンとイゾルデ」以来、2回目となる。

とんでもない舞台を見たというのが、今回の第一印象。
コンビチュニーは、音楽までもいじっていて、
賛否両論あるだろうが、
斬新で刺激的な舞台にワタシは酔いしれた。

開幕前、スクリーンに、
ドイツ語で「この有り様では古代ローマと変わらない」
と書かれている。
これから演じられるオペラは現代にも通じるという先入観を
観客に植え付けるわけだ。
率直にいえば、現代の米国批判であろう。
ただ、そんな深読みをしなくても十分楽しめる内容だった。

とにかく演出が斬新。
いくつか挙げてみよう。

序曲が始まるとすぐに舞台の照明が点滅し、
演奏が止まってしまう。
するとステージマネージャーの
「照明、何やってるんだ!」という声が飛び、
また演奏が再開される。

インターバルに主人公のティト役がホワイエに出て
観客と会話したり記念撮影したりしている。
そのまま1階1列目の正面に座りアリアを歌う。

第2幕の幕開け、
大火災後の焼け野原という場面設定で、
指揮者スダーンが焼けこげた燕尾服を着て、
顔を真っ黒に汚して登場。

「心変わり」のアリアの途中で、
ティトは死んでしまう(?)
「お医者様はいらっしゃいませんか?」
と日本語で問いかけるステージマネージャーが現れ、
「医者」が舞台に上り、心臓移植の手術を。
人工心臓が取り付けられたティトは生き返る。

幕が下りてカーテンコールが始まると、
オケは序曲を演奏し、観客は手拍子で盛り上げるという
まるでミュージカルのような仕掛け。

こうやって書くとどたばた劇に思えるが
実際に見てみると、モーツァルトの音楽を徹底的に理解した上での
コンビチュニーの演出であることがよくわかる。

肝心の音楽だが、指揮のスダーン東京交響楽団は、
演出優先の舞台にもかかわらず大健闘。
細かい演技を要求された歌手も、高い水準の歌唱を聴かせてくれた。

●東京二期会・ハンブルク州立歌劇場共同制作
モーツァルト「皇帝ティトの慈悲」
'06.4.23 新国立劇場オペラ劇場

指揮:ユベール・スダーン
演出:ペーター・コンヴィチュニー
公演監督:多田羅 迪夫
舞台美術:ヘルムート・ブラーデ
照明:マンフレート・フォス
演出助手:ヴォルフガング・ビュッカー/高岸 未朝
舞台監督:幸泉 浩司

管弦楽:東京交響楽団
合唱:二期会合唱団

ティト:高橋 淳
ヴィテッリア:吉田 恭子
セルヴィーリア:菊地 美奈
セスト:谷口 睦美
アンニオ:穴澤 ゆう子
プブリオ:大塚 博章

|

« 松任谷由実コンサートツアー | Main | 何とかならないのか「亀田の日」 »

Comments

The comments to this entry are closed.

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 東京二期会「皇帝ティトの慈悲」:

« 松任谷由実コンサートツアー | Main | 何とかならないのか「亀田の日」 »