ナラタージュ/島本理生
評判の島本理生「ナラタージュ」、
大学生が書いた恋愛小説を年甲斐もなく一気読みした。
ナラタージュとは、映画などで、
主人公が回想の形で、過去の出来事を物語ること。
この小説ではプロローグで、
主人公が彼と新しい生活を始めることが描れる。
彼は、彼女の前の恋愛のことを知った上で、ともに生きることを選ぶ。
そして始まる回想譚。
読者は回想の中の主人公の恋愛が
成就しないことをまず知ることになる。
主人公は大学生の工藤泉。
彼女の高校時代の演劇部顧問が葉山先生、
さらに、工藤に恋する大学生の小野君、
この3人の三角関係の物語である。
真面目で不器用な3人、思い通りに物事が進まない。
若い恋はもどかしくて切ない。
葉山先生は、皆より年上のくせに、とてもずるい。
そして優柔不断。
でもワタシには彼を否定できない。
というか、彼の気持ちがよくわかる。
同じような経験があるから。
若い小野君の気持ちもわかるんだなあ、これが。
好きな女性が、前の彼のことを忘れられずにいる、
写真や手紙をいまだに持っている、
深夜に突然電話が掛かってくる・・・
つい体中に熱いものがこみ上げ、力づくの行為に走る。
その胸の痛みをワタシも感じたことがある。
この手の恋愛小説では、
だれもが自分の過去の経験と比べてしまうのではないだろうか。
もちろんワタシもそう。
そして、読み終えたときは、
ごっそりと心を持っていかれた。
というわけで、5段階評価は★★★★★
だれにもすすめたい恋愛小説の傑作。
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