袋小路の男/絲山秋子
絲山秋子の「袋小路の男」を読んだ。
「袋小路の男」「小田切孝の言い分」の2部作に、
なぜか全然別の作品「アーリオ オーリオ」が収められた短編集。
前2作は、主人公とその恋人(?)小田切の
2人の距離感が何ともじれったい。
くっついたり、離れたり、
この関係はワタシには理解できない。
帯には「純愛小説」とあるが、本当にそうだろうか。
たしかに2人は肉体的な関係はない。
しかし、主人公は小田切との関係を
高校時代から12年間続けながら、
他の男性と付き合い、関係も持ってしまう。
それでも小田切を好きだというのが
純愛になるのだろうか。
「アーリオ オーリオ」は不思議な魅力を持った作品。
30歳代で独身の叔父と高校生の姪っ子の
書簡のやりとりを描いたもので、
そこには恋愛もなく、友情もなく、憎悪もない。
何もないけど、何かがある、
言葉ではうまく表現できない・・・
作品は端正な文体で綴られており、
久しぶりに純文学を読んだという
満足感を味わうことができた。
この作家、今までに、芥川賞候補3回、直木賞候補1回というから、
ブレイクは間近か。
これからの作品にも期待したい。
というわけで、5段階評価は★★★★
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Comments
私の好きな作品。肉体関係だけが、人間関係、いや男女関係ではない、話。これは、二人とも子供っぽいが、理想の大人関係だと思う。冷たくされたと、なんでもない女性を刃物で殺害した事件は、大人以前、欠陥人間。
Posted by: | January 03, 2006 11:16 PM