魔王/伊坂幸太郎
緻密な構成と展開、軽妙な文体が伊坂幸太郎の持ち味だが、
「魔王」はずいぶん雰囲気が異なる。
超能力を備えた主人公は、
伊坂作品にはたびたび登場するのでそれほど違和感はない。
しかし「憲法第9条」や「ファシズム」のような
小説にしては少々重いテーマを、
著者が取り上げるとは意外だった。
不思議な力を持っている兄弟の話。
「魔王」と「呼吸」の中編2作品から構成され、
前者は兄・安藤の視点から、後者はその5年後、
弟・潤也の妻・詩織の視点から描かれている。
両作品とも底流にあるのは、大衆のあやうさ、恐ろしさ。
読後感は良くないが、では面白くないかというとそうではない。
ミステリーともハードボイルドとも違う、
一種独特の香りのする作品に仕上がっている。
タイトルは、シューベルトの歌曲「魔王」から。
この曲にかかわるエピソードの部分がワタシは好き。
というわけで5段階評価は★★★★★
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