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August 21, 2005

私が語りはじめた彼は/三浦しをん

shion


三浦しをんの「私が語りはじめた彼は」は連作短編集の体裁をとっているが、
長編小説といってもおかしくない。
妻子がありながらも複数の女性と関係を持つ大学教授の村川融を中心に、
物語は展開する。
「結晶」「残骸」「予言」「水葬」「冷血」「家路」の6編には、
村川の別れた妻、実の娘と息子、現在の妻、その連れ子らが、
それぞれの物語の主役として登場する。
狂言まわしのような役割が、恋人を寝取られた村川の弟子であろう。

小説の中心人物である村川が直接、登場することはない。
村川をとりまく女性たちとかかわりを持った男性が語り手となる。
この構成が効果的で、推理小説のようでもある。
どこまでが事実なのか、何を、誰を信じていいのいか
分からなくなってくる。

元妻が村川の弟子につぶやく言葉、
「事実は一つですが、真実はきっとひとの数だけある」が、
この物語の核心をついているのかもしれない。

寵姫を寝取られた中国の皇帝と、寝取った臣下とのエピソードを
冒頭に掲げた構成も見事。

5段階評価で★★★★★

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