ベルンの奇蹟(ゼーンケ・ヴォルトマン監督)
折しも、日本がドイツW杯出場を決めたばかり。
今日、試写会で見てきた映画は「ベルンの奇蹟」。
サッカーを通じて親子の絆を描いている。
ドイツが強豪になる前、1954年スイス大会で、
当時無敵で世界最強といわれたハンガリーに、決勝で逆転勝ちしたことを
「ベルンの奇蹟」と呼んでいるののだそうだ。
物語は、このスイスW杯と同時進行で展開する。
第二次大戦後の混沌とした西ドイツ。
終戦11年目に、やっとソ連の収容所から戻ってきた父と、
それまで辛い生活を送ってきた家族との葛藤。
映画の前半は、暗く静かに進行する。
心の傷を抱え込み、家族とのすれ違いが続く父が、
原っぱで偶然拾ったボロボロのサッカーボール。
何十年ぶりかのリフティング、そしてシュート。
父はこれで吹っ切れたのだろう、
表情に明るさが戻ってきた。
後半、W杯決勝の場面からは、観ている私もだんだん高揚していくのが分かる。
決勝の会場は、ベルンのヴァンクドルフ・サッカー・スタジアム。
ボンでこの会場を再現し撮影された映像の臨場感は素晴らしい。
(余談だが、ドイツ国家はいつ聴いてもいい
=ハイドンの弦楽四重奏曲「皇帝」の第二楽章)
映画には、さまざまなエピソードがちりばめられている。
私は、新婚の新聞記者夫婦のエピソードが一番好き。
夫が急きょ、W杯の取材に出掛けることになって、
新婚旅行は中止に。
代わりに、夫の取材についていくことになった。
サッカーなどまったく興味がなかった新妻が、
次第に熱狂していく様子がほほえましかった。
また「ドイツ男は泣くな」と息子を叱った父が、
家出した長男の置き手紙を読み、
顔をくしゃくしゃにして泣く場面には、ほろりとさせられた。
大傑作とは言わないが、なかなかの佳作だ。
5段階評価で★★★★
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