
愛・地球博の記念で、名古屋公演が行われたフェニーチェ歌劇場。
演目はヴェルディの「椿姫」。
刺激的で官能的な舞台に参った。
まずは演出のロバート・カーセンにブラボー、
次にヴィオレッタを歌ったパトリツィア・チョーフィにブラヴァー!
カーセン演出のオペラは今回で3本目。
どれも高感度の素晴らしい舞台であった。
初めて彼の演出に触れたのは、
サイトウキネンフェスでのヤナーチェク「イエヌーファ」。
ラストで大雨を降らせたのには驚いた。
もちろんホールでの公演である。
2本目は小澤音楽塾でのプッチーニ「ラ・ボエーム」。
シンプルながらもアイデア豊かで、
時に官能的な舞台にほれぼれとした。
そして今回の「椿姫」。
時代背景を現代に設定し
ヴィオレッタは娼婦、アルフレードは若手カメラマン、
舞踏会の場面も怪しげなパーティとなっている。
前奏曲が始まるとすぐに幕が上がり、
ヴィオレッタがなまめかしい黒の下着姿でベッドに横たわっている。
そして男性が次々に登場し、彼女に札束を渡すところから物語は始まる。
第1幕はヴィオレッタの部屋でのパーティ場面。
部屋には森林の絵が飾ってある。
これが後で、伏線となってくる。
登場人物はジーンズやTシャツなどカジュアルな服装が多い。
第2幕第1場は郊外に住むヴィオレッタの部屋の設定であるはずが
森林の中のようだ。
でもじっくり見ると、第1幕の森林の絵と同じ。
さらには落ち葉のように見えるのは、何とお札。
第2場は、またパーティの場面。
Tバックのダンサーが出てきたり、
ミラーボールが回っていたりして、いかにも怪しげな雰囲気。
第3幕は、第1幕と同じヴィオレッタの部屋だが、
雰囲気は全然違っている。
ベッドがなくなり、窓には分厚いカーテンが。
鉄パイプの足場やペンキ、刷毛などが置いてある。
謝肉祭の歌が聞こえてくると、数人が部屋に侵入してきて、
カーテンをはぎ取ると見えるのは、色がはげた森林の絵。
最後、ヴィオレッタの臨終の場面、
悲しみにひたる間もなく、
数人の作業員が舞台に登場し、部屋の片づけを始める。
ここで幕。
以上がおおまかなカーセンの演出。
ポイントは「お札」「森林」か。
さて、ヴィオレッタ役のチョーフィ、
たしかな技術で3幕を歌い切った。
ビジュアルも悪くない。
黒のガーターベルト姿が艶めかしかった。
歌手は、アルフレード役のサッカ、
パパ・ジェルモン役のシュレーダーなど、
だれもが標準以上の出来で、安心して聴けた。
今回の舞台は1853年、フェニーチェ初演版ということで、
聴き慣れないフレーズが出てきたり、
しつこいくらいリピートがあったりと、ちょっと違和感を持った。
今後、まず見ることはないだろうから、その点では貴重な体験であった。
●フェニーチェ歌劇場・名古屋公演2005
'05.5.19 愛知県芸術劇場大ホール
ヴェルディ:歌劇「椿姫」(1853年フェニーチェ座初演版)
演出:ロバート・カーセン
ヴィオレッタ:パトリツィア・チョーフィ(ソプラノ)
アルフレード:ロベルト・サッカ(テノール)
ジェルモン:アンドリュー・シュレーダー(バリトン) ほか
マウリツィオ・ベニーニ指揮フェニーチェ歌劇場管弦楽団・合唱団
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