アフターダーク/村上春樹
村上春樹の作品は、とても口当たりがいい。
どんどん読めてしまう。
でも、理解するのはけっして容易ではない。
「アフターダーク」もそんな作品の典型である。
物語は、ある日の深夜12時前に始まる。
そして早朝7時までの一晩の、
都市にうごめく名もなき人々を描く。
深夜のファミレスで本を読み続けるマリ、
ベッドで眠り続けるマリの美しい姉エリ、
ラブホテルで売春の最中、殴られ、すべてを奪われた中国人の女の子、
そのラブホを仕切っている元女子プロレスラーのカオル、
訳あって、ラブホで働くコオロギとコムギ、
中国人の女の子を買い、殴ってきた、会社員の白川、
そしてこれらの人物や、物語をつなげているのが大学生の高橋、
どこにでもいそうな登場人物たちばかり。
彼らの会話はおもしろく、リズムがいい。
この作品の魅力のひとつだ。
それぞれの視点から描かれ、物語は進んでいくが、
ひとつだけ登場人物には関係のない、客観的な視点がある。
この哲学的ともいえる視点が、この小説の理解を難しくしている。
さてエンディング。
これもいつものことながら、何も解決しない。
序盤からいろいろ伏線が張られている。
最後にどのようなまとめかたをするのだろう、
そう期待して読み続けると、失望が待っている。
「えっ、だからなんなの?」「どうして終わっちゃうの」って。
そして読み返してみたくなる。
かく言う私も、現在再読の途中である。
もしかすると続編が、あるいはシリーズ化が、
なんて予想したりもする。
というわけで5つ星評価は☆☆☆☆
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