泳いで帰れ/奥田英朗
書名が秀逸。
このままでは何のことか全くわからないが、最後まで読めばなるほどと思う。
直木賞作家、奥田英朗による、2004年夏のアテネ五輪の観戦記。
高尚な気がするが、実はおやじギャグが出てくるような、軽いノリのエッセイ。
読んでいて、爽快な気分になる。
思い返すと、私もテレビでいろいろな競技を見ながら、
著者とほぼ同じことを考えていたと思う。
奥田氏は私と同じ岐阜出身で同世代、
育った環境が近いから、考え方も似ているのかも。
話の中心は、野球の長嶋ジャパン。
準決勝でオーストラリアに負け、銅メダルに終わるのだが、
この試合と、カナダとの3位決定戦で、
主要打者が送りバントを繰り返す戦法に、著者は怒る。
「こんなのドリームチームじゃない。負けることに怯える小心者の集団だ」
「銅メダルで拍手ができるのか。それも石橋を叩いても渡らないようなせこい勝ち方で」・・・。
結局カナダに勝った長嶋ジャパンは銅メダルを獲得した。
観客席では「感動をありがとう」という、選手を誉めたたえるボードが掲げられた。
ここで著者の怒りは頂点に達する。
「もしここに白い横断幕と筆があったら、わたしはこう殴り書きする」と、
ここで登場するのが、本のタイトルになった「泳いで帰れ」。
そのとおり、よくぞ言ってくれた!
本当におもしろい本で、一気に読める。
ただこの装幀で1,470円は高すぎるよ、光文社さん。
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