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December 12, 2004

山猫

巨匠ヴィスコンティが約40年前、
シチリアの貴族の斜陽を壮大なスケールで描いた映画「山猫」。
その完全復元版が上映されるというので初日に観てきた。

重厚で、そして切ない映画だ。
没落する貴族、サリーナ公爵を演じた名優バート・ランカスターの存在感が圧倒的だが、
侯爵の甥で野心を持った若者、タンクレディを演じたアラン・ドロンもいい。
こんな演技力のある役者だったのかと、今さらながら再認識した。
そしてタンクレディの婚約者アンジェリカを演じたのがクラウディア・カルディナーレ。
けっして美人ではない、少なくとも私は好みでないが、
映画の中では重要で難しい役柄を演じている。

3時間6分という長編映画の3分の1を占めるのが大舞踏会、
ここが一番の見せ場だろう。
絢爛豪華な、舞踏会場、調度品、衣装、料理・・・
美しい映像の中で、若いタンクレディと老いたサリーナ侯爵が対比される。
「老い」−「若さ」、「美」−「醜」、「静」−「動」
二人はすべてにおいて対照的で、
侯爵のことを思うと胸が締めつけられる。

もし10代、20代にこの映画を見ていたら、
長い、退屈、難しいと三重苦を感じていただろう。
私も今は40半ばを過ぎ、
そろそろ老いや死についても考える年齢になってきた。
(実際、私の父、祖父ともに50代でこの世を去っている)
この歳だからこそ、この映画「山猫」を受け入れることが出来るのだ。
華やかな舞踏会で老いと死を意識し絶望したサリーナ侯爵が、
石畳の道を一歩一歩静かに歩いていくラストシーン、
あまりに重く、あまりに残酷であった。

たしかに難解な映画である。
しかし・・・

「ヴィスコンティが難解なのではない、人生が難解なのだ」

5段階評価で☆☆☆☆☆

書き忘れていた。
ヴェルディの甘いメロディが、随所で効果的に使われている。
ファンにはたまらない。

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