ノリントン指揮シュトゥットガルト放送響/田園ほか
こんな演奏、聴いたことない、田園ってこんな曲だったんだ・・
今まで耳にしたこともない響きが会場に流れる。
実に刺激的な一夜だった。
この夜の演奏を好きかと聞かれたら、回答に迷うが、
面白かったかと聞かれたのなら、間髪入れず、とっても面白かったと答えるだろう。
ぜひ、ほかのベートーヴェンの交響曲も聴いてみたい、
そんなことを思った演奏会。
●ノリントン指揮シュトゥットガルト放送交響楽団
04年11月25日 愛知県芸術劇場コンサートホール
・ベートーヴェン:「コリオラン」序曲
・ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1番(ピアノ:児玉桃)
(アンコール)
・ムソルグスキー:「展覧会の絵」より卵の殻をつけたひなどりの踊り
(休憩)
・ベートーヴェン交響曲第6番「田園」
(アンコール)
・メンデルスゾーン:「真夏の夜の夢」よりスケルツォ
チラシでは前プロは「エグモント」序曲となっていたが、
いつの間にか変更されていた。
エグモントの方が好きなのでこれは残念。
コンチェルトのピアノ、児玉桃は全然いいと思わなかった。
アンサンブルがかみ合わない部分があったり、
なぜか全体にタッチが重い印象を受けた。
ただ、第一楽章の長大なカデンツァは見事。
メインは田園。
2楽章で眠くなってしまうことも多いのだが、この日は違った。
逆に、一番の聴かせどころであった。
カッコウの鳴き声は、この世のものとは思えないほどの美しさ。
木管ソリストの楽しそうな表情も印象的だった。
4楽章の嵐の表現も見事というほかない。
口径の小さいティンパニーは古楽器か。
強烈な打ち込みは、恐怖感を覚えるくらいだった。
表題の「嵐」を鮮やかに描き出していた。
この交響曲には「嵐」以外にもすべての楽章に表題が付いている。
それをそのまま表現したのが、この日のノリントンの演奏だったように思う。
しかしひとつ苦言が。
この人、間違いなく変人。
会場から楽章間の拍手が出ると、もっと、もっとと
それを煽るような手振りを見せたり、
演奏の途中で観客席を振り返り「どう、面白いだろう」と言わんばかりに
笑みをもらしたりするのだ。
楽章間の拍手に対しては寛容な人もいるようだが、私は断固として反対したい。
間も音楽の一部だと思っている。
どれくらい間を取るのか、あるいはアタッカで続けるのか、
それもまた見せどころ、聴かせどころといってよい。
この夜でいえば、田園の2楽章が終わった後に、拍手はいらないのである。
あのカッコウの鳴き声に酔いしれた後に、拍手は断じて必要ない。
先日、このホールでヤンソンス指揮ロイヤルコンセルトヘボウの悲愴を聴いた。
地方公演ではよくあることだが、3楽章の後にパラパラと拍手が。
自然に出てくるんだからいいんじゃないという意見も聞いたが、
私はここでも拍手は許さない。
ピアニシモで4楽章が始まるまでの余韻、静寂を楽しみたい。
そんなわけで、この夜はノリントンをどう評価していいのか分からず、
複雑な心境のまま帰宅した。
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