邂逅の森/熊谷 達也
これはおもしろい。
私は冒険時代活劇として読んだ。
秋田に暮らすマタギの富治の半生を描いている。
マタギとは、狩猟を生業にする男たちのこと。
この本、手にしたのは随分前だが、
厚いのと題名が堅いことで、長い間、机に置いたままになっていた。
ページを開いたのは先週、
あっという間に読み終えた。
マタギの世界はもちろんのこと、
東北地方での夜這いや田舎の遊郭、炭坑での生活、男色など、
知られざる世界をかいま見ることができ、興味深かった。
初恋の女性、文枝、妻イク、弟分の小太郎、など登場人物の描写が巧みで
読み手を飽きさせることはない。
最終章の、山の主であるコブクマとの闘いは壮絶。
自然の厳しさがこの数ページに書き表されている。
富治は倒され、右足を喰われる。
生々しい描写には戦慄を覚えたが、
その割に、心地よい読後感は何だろう。
久しぶりに楽しませてもらった。
04年の第131回直木賞受賞、第17回山本周五郎賞受賞。
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